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「杞憂を願う掌」

(2024/09/17 修正)


はじめに

 私は小さいときから長い文章を書くのが苦手でした。中学生のころ、学校でよく講演会が行われて、その後、必ず講演会の感想を書かなくてはなりませんでした。先生は「最低三行は書きなさい」と毎回言うのですが、私は三行さえもいつも苦労していました。周りの同級生を見てみると、すでに十数行書いている人がいたりするのです。私はいつも最終的に二行と三文字程度を苦し紛れに書いて提出し、何とか乗り切っていました。
 時は経て、ある程度は長い文章を書くことができるようになり、そんな中、小説を書いてみたいと思うようになりました。しかし、書いてみると、全然書けず、書けても小説がすぐ終わってしまうのです。私はやはり長い文章を書くのがいまでも苦手だったのです。それがとてもコンプレックスでした。しかし、ある日、本屋に行ったとき、大濱普美子「三行怪々」という本がふと目に留まり、手に取ってみました。この本は、たった三行で完結するショートショート集なのですが、とてもおもしろい。小説はこんなに短くてもいいのか、と勇気をもらい、今回のこの本に納めた『掌編小説』を書くきっかけになりました。この『掌編小説』は題名も含めて原稿用紙一枚に収まる文量で書いたものたちです。この制約で書いてみると、意外に自分で納得できるものがいくつか作れるようになっていきました。そこで、今回本にしてみようと思いたったのです。
『掌編小説』と合わせて、『詩的実験』と題したものたちをこの本に収めました。『詩的実験』は、私が詩に憧れ詩を目指して書いた文章たちです。詩を書くなかで、いくつかの詩を読みましたが、とうとう『詩』というものがわかりませんでした。なので、自分の書いた文章を『詩』と名乗るのは恐れ多いので、敬愛する瀧口修造氏の詩集の名を借りて『詩的実験』と名乗ることにしました。
 この本は『掌編小説』十二編、『詩的実験』十二編を収めたものになります。先程も述べたように、どちらも私のコンプレックスから生まれたものです。しかし、読んでくださった方に後悔させない本に作り上げたつもりです。どうか、手に取ってくださったあなたにとって、大切な一冊になることを願って、はじめにを締めよう思います。

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