1-16 本性3
「今の話はどう?理解できた?」
塩田は笑みを浮かべながらそう話しかけてきた。
目を別の席に移すと何故だかシンイチもいる。
長老と会衆の成員の個人的な話であるなら同席するのはおかしい。ということは例の一件絡みの話か?
「まあ、巡回監督もそう仰ってるから、あの件についてもね、いろいろあると思うけど、そういうことだから、ね。まずは自分の信仰ね。」
もう、何も言うなということらしい。とはいえ私はあれ以来この一件について誰にも何も話したりしていない。
それに巡回監督がこのような会合に若い人たちを集め、塩田がしたような話をするように指示をしたとは考え難い。
私は、塩田がすべてを自分に都合の良いように、つまりは例の一件を闇に葬るために画策したのではないかと疑い始めていた。
さらに塩田は続ける。
「それからね。個人的に集まるのは自由だけど、そこで有る事無い事語るのはそれはクリスチャンとして問題のある行動だから。気をつけて。」
最初言われている意味が分からなかった。
しかし途中から頭の中にあるパズルのピースが浮かび上がった。
もしかすると私が血を吐いた日のことを指して言っているのか?
あの日、確かに個人的に集まる形で人々が家に来ていた。
そう言えば家に帰った時に集まっていた人の中にいた、あのおしゃべり好きの姉妹を見て覚えた違和感……変な感覚が背中を走った。
見つけたパズルのピースが見事にはまっていく。
「あの人、塩田のスパイだったか……」
私は心の中でそうつぶやいた。
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