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2-8 脱出計画

塩田、細畑とどうしようもないやつが長老として君臨し、その悪影響によって害を及ぼされてきたこと数年。 率直にって、これ以上現在の会衆にとどまったところで、状況の改善は見込めない。 それどころか有害人間シュサイダーの悪い意味での活躍は日増しにそのあり得なさを増し加えていっていた。 これが「この世」であれば、パワハラ、セクハラで訴えることもできるのだろうが、そうもいかない。 シュサイダー出現以来、何度も家族で話し合いを重ねていた。 そして熟慮した結果、一つの結論に到達した。

    • 2-7 有害人間シュサイダー誕生!!2

       紆余曲折を得て、エホバの証人だから、という理由だけでよい人、尊敬すべき人などという考えをすることがなくなった私は、今度来る巡回監督がとんでもないやつでないことを祈っていた。  少なくとも、前回の巡回監督ほどでなくとも、普通の人であることを願っていた。  そして、荷物搬入とお出迎え当日。  長老たちと召集された若者たちは緊張した面持ちで巡回監督の到着を待っていた。 「いらっしゃいましたー」  シンイチが道路わきで見張り番をかって出たのか、奴が皆に合図をした。  

      • 2-6 有害人間シュサイダー誕生!!

         巡回監督は半年に一度、エリア内の会衆を訪問する。  ”旅行する監督”という別名のとおり、その会衆にとどまり、どこかの家に泊めてもらって、1週間を過ごし、次の会衆へと旅立っていく。  このため、巡回監督の移動の際には荷物をまとめたり、運んだりする手伝いが必要なことが多く生じる。  今期より巡回監督が交代となり、新たな巡回監督が赴任してくる。  今回の訪問先は私が所属する会衆だ。  このため、長老たちは巡回監督のご機嫌をとるために、会衆の若者たちを巡回監督のお出迎えに

        • 2-5 休暇のおわり4

          数週間後の集会での出来事。 奉仕会と呼ばれる集まりでのことであった。 すべてのプログラムが終わり、あとは讃美歌と祈りを残すばかりとなったタイミングで林山が壇上の男性クリスチャンより紹介された。 林山は演台のところへといつもの調子で歩いていく。 マイクの高さの調整が終わると、演壇から会衆の成員を見渡す。そして一呼吸置いた後、口を開いた。 「会衆の皆さんにお知らせがあります。」 そういうと林山は胸ポケットから一枚の文書を取り出し、演台に広げた。そしてこう告げた。 「細

          2-4 休暇のおわり3

           残された可能性としては、他から長老の立場にある人間を招へいすること、あるいは現在会衆内に存在する奉仕の僕を誰かひとり長老に昇格させ、その者を主宰監督の任に就かせること、この二つのパターンがある。  しかし現実的な話として、会衆の中には碌な人材がいない。塩田の独裁政治の賜物と言えばそれまでだが、塩田の顔色ばかりを伺うような連中ばかりが残っていた。  長老の補佐的な役割を行う立場の奉仕の僕はほとんどがそういう奴らだった。  おまけに奉仕の僕から長老に昇格して、その新しい長

          2-4 休暇のおわり3

          2-3 休暇のおわり2

           ものみの塔協会からの手紙はいつもこんな感じだ。 「親愛なる兄弟姉妹 み言葉聖書が示す通り、対処しにくい危機の時代がますます進んでいく中、固く立って動かされることがないよう日々エホバとともに歩んでおられる皆さん、 私たちは統治体(神に選ばれて将来天に行くことが決まっているとされ、エホバの証人の実質上の教祖的存在)の兄弟たちの助言と祈りとともに、この手紙をお送りしております。 初めからの蛇である悪魔サタンの攻撃はより狡猾さを増し加え、日々皆さんを惑わそうと躍起になってい

          2-3 休暇のおわり2

          2-2 休暇のおわり

          「私はね。長老なんだよ。責任者なの!わかる?ね?監督の責任があるからどこにいるか聞いてるんだよ。君じゃ話にならないから、誰かここの偉い人いないの?」  接客業のご経験がある方なら、こういう偉そうなクレーマーの対応をされたことがあるかもしれない。  なれなれしく、横柄で、話し方も汚い。場所が場所なら出禁になるレベルだ。  これは実際に対応した看護師さんから、後になって聞いた話だが、そいつはある日突然ナースステーションにやって来て、そう言ったそうだ。  当然私は関係者以外

          2-2 休暇のおわり

          2-1 つかの間の休息

           入院期間中、いろんな人が見舞いに来てくれた。学校のクラスメート、先生、友達。そして親族。これに加えて、ごく一部のエホバの証人たち。  ちなみに、見舞いに来たエホバの証人がほんの少数であったことには理由があった。  実は、親が気を効かせて会衆に知らせなかったのだ。詳しく話さなかったが、医者にもストレスは避けるように言われていたらしい。  このため、あの時一緒にいた友人の家族と、それ以外に本当に信頼できるクリスチャン家族数名にしか私の入院について知らせなかったそうだ。

          2-1 つかの間の休息

          1-17 この世1

           前にも少し触れたが、証人たちは一般社会のことを「世」と呼ぶ。  キリストがこの世のものではないとか、サタンがこの世を支配しているという聖書の記述からそう呼んでいる。これにはサタンの所有物なので何となく侮蔑的な意味合いを含んで使う人が多い印象がある。  ところで、この世にある中学校に通う中学生であった私は次の進路をどうするか、そろそろ決めなければならない時期に来ていた。  私は、将来は宣教者になりたいと思っていたので、高校は通信制にして、余った時間を語学の勉強と宣教活動

          1-17 この世1

          1-16 本性3

          「今の話はどう?理解できた?」 塩田は笑みを浮かべながらそう話しかけてきた。  目を別の席に移すと何故だかシンイチもいる。  長老と会衆の成員の個人的な話であるなら同席するのはおかしい。ということは例の一件絡みの話か? 「まあ、巡回監督もそう仰ってるから、あの件についてもね、いろいろあると思うけど、そういうことだから、ね。まずは自分の信仰ね。」  もう、何も言うなということらしい。とはいえ私はあれ以来この一件について誰にも何も話したりしていない。    それに巡回監

          1-16 本性3

          1-15 本性2

           皆が席について待っていると塩田と林山が入ってきた。  当たり前のようにシンイチもそれに続けて現れて、一番後ろの特別席に座り、いつものようにふんぞり返った。 「皆さん、お集まりいただき感謝します。皆さんの日頃の働きはエホバもきっとお喜びでしょう。」  林山のこういう社交辞令的な挨拶から始まり、次に塩田が口を開く。つまりここからが本題だ。 「はい、みなさん。ではね、今日は巡回監督からも言われてることなんだけどね。まずは個人研究(個人的に聖書の理解を深める作業のこと)でき

          1-15 本性2

          1-14 本性1

           ある日の集会の終わり、演壇からこのような指示があった。 「献身している中学生の若者たちは、第二会場に集合して下さい。」  献身とは簡単に言うと聖書的なある程度の知識を得た後、それに基づき神様に使える決意をする事で、これを経てバプテスマ(いわゆる洗礼)を受けるような流れになる。  私は当時、バプテスマこそ受けていなかったが、聖書的な知識も適度にあり、もちろん神様に使える一生を過ごすつもりでいた。つまり献身していた。ということでこの指示に従う必要あった。  ただ不可解な

          1-14 本性1

          1-13 謝罪2

           王国会館を後にして、一人の帰り道、突然体に激痛が走った。胃の辺りが痛い。  道の脇に行き思わずうずくまってしまった。  口の中に鉄っぽいテイストが広がる。吐き出した。血だった。  後からわかるが、胃潰瘍を患ってしまっていた。もちろんストレスからだ。  何せこの時はまだ中学生で思春期の多感な時期だった。いろんなことに対して鋭敏に感じる年齢でもあった。  自称神様の組織で実際に目にしたこと体験したこと、信者を標榜する者たちから受けたあり得ない言動は、心身に良くない影響

          1-13 謝罪2

          1-12 謝罪1

           巡回訪問が終わったあと、またいつも通りの集会の日がやってきた。  王国会館に行くと、塩田とその取り巻きはホッと一息ついたかのようにリラックスしていた。  なぜわかったのかと言うと、巡回訪問の時は行儀良くしてたのに、またいつものとおり、やれどこのスーパーが安かっただの、通販の番組が面白いだの馬鹿話に興じていたからだ。  ちなみに、王国会館は崇拝を行う場所なので、そこで世俗的な話をすべきではないという通達が本部から再三来ている中でのこの所業だった。    いつも通りの光

          1-12 謝罪1

          1-11 巡回訪問3

           巡回訪問の週は、通常の週と異なり、火曜日の集会から始まる。  私は火曜日の集会が終わると、巡回監督と話をするため近づいた。    巡回監督に挨拶をして、もし、自分が間違いだったら改めたい旨伝えて、今回の件を話した。  最初は忙しそうに書類や原稿をめくっていた巡回監督の手が止まった。 「もう一回聞かせてくれますか?」  私は巡回監督の隣に座り話を始めた。その様子を見た塩田はいつもなら遠巻きにしていた巡回監督のところにやってきて話を遮ろうとした。  だが遅かった。

          1-11 巡回訪問3

          1-10 巡回訪問2

           現在はあるかどうか知らないが、当時は、ものみの塔日本支部により、半年に一度程度巡回監督と呼ばれる人間が派遣されていた。  会衆の運営に問題がないか見て回る役目が彼らにはあった。このため、訪問される会衆の側に問題がある場合、そこの長老たちは当然、巡回監督を煙たがった。  そして私が所属していたところも、地域柄やさまざまな要因から巡回監督を恐れる傾向があった。  このため、歴代の巡回監督の食事や宿舎の提供など、ほとんどがうちの家で行われていた。  そしてそんな中巡回訪問の

          1-10 巡回訪問2