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みんな、私が思っている以上にゆっくりと、生きていた。

20240615.

みんな、元気かしら。
夜は、どう過ごしているのだろう。
最近は、どんな日々を送っていたのかなあ。

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若松 英輔『美しいとき』

ゆっくりにしか
歩けなくなったら
街には
ゆっくり歩く人が
たくさんいるのに
気がついた

立ち止まりながらでしか
歩けなくなったら
世の中には
立ち止まりながら
生きている人が
たくさんいるのが分かってきた

どこへ行くために
あんなに
急いでいたのだろう
自分の歩き方を
忘れるほど
わき目もふらずに

生きる足取り

みんなに、会いたくなるときがある。
友達とか、家族とか、大切な人たちに。
たぶん、会って、
自分自身がほっとしたいのだと思うけれど。

みんな、無事に1日を終えたのだろうか。
今日、車ですれ違った人たちも、
今日、偶然会った人たちも、
そんな、一回しか会ったことのない
人たちのことも。
なんだか、気になってしまう瞬間がある。
今日という日を、無事に終えられたのかなあって。

私自身、仕事や生活の場所、
暮らす環境が変わってから
色々なことに挑戦しやすくなって、
動きやすい環境になったのを感じていて。

私も、そんな今が楽しかったし
あっという間に1日が、1週間が
終わっていくその日々が、
動けている今が、幸せだった。

けれど、動けてしまえていた分
色々なことを並行して進めすぎていて
身体は追いつかないまま
心や脳だけが興奮状態で
それだけで、進み続けていた。

バランスが取れていないことにも
気づけず進んでいたある日
物理的に動けない状態になった。

そのときにやっと気づいた。
すべきこと、やりたいことの多さを
コントロールできていなくて
自分で舵を切れていなくて、
自分の力では、止まれない状態にいたことを。 

立ち止まらざるを得なくなって
周りを見渡したとき。
自分を遠い場所から見たとき。
今、なぜこの道に辿り着いて
この先どこへ向かうのか
わからなくなってしまった。
し、自分に聞きたくなってしまった。

本当は聞いても意味の無い質問だと
自分でもわかっているはずなのに。

魔法が解けないで欲しいと思っていたのは
きっとこの瞬間を恐れていたからだと確信した。
いつか、そうなる瞬間が訪れる気がしていたから。

気づいてしまったのか、気づかされたのか。
それで、よかったのか。

この詩は、
そんな状況になって、私が感じたことだった。
自分がゆっくりにしか、歩めなくなったとき
周りは思っている以上に
のんびりだったことに気づいて。
立ち止まることしかできなくなったとき、
みんなの時間は、私が思っている以上に
ゆっくり流れていたことに気づいて。
なんであんなに、私は急いでいたのだろうって。
本当はもっと、ゆっくりで、よかったのに。

みんな、私が思っている以上に
ゆっくりと、生きていた。

ただ、
いざ、自分がその立場にならないと
気づかないようにできている。
この世界は。
悔しい、本当に。

そんなこともあって、
何事もなく、1日が終えられて
悩んだり、考え事は絶えずとも
安心した場所で眠りにつけて
また、朝を迎えられる。
もう、それだけで十分だと心から思った。

みんな、今日も無事に
終えられたかなあって。
みんな、どんな夜を過ごしているのかなあって。
なんだか、気になってしまう時間が増えた。

私は、世界を変えるような
大きなことはできないけれど、
今日もこうして
そっと、祈る。

みんなに、すぐに会えなくても
大切な人たちが、そばにいなくても

それぞれの場所で
それぞれの人生を歩んで
それぞれの大切な人を大切にして

そしてまた
またいつか、またどこかで交われたら
それで、いい。
それで、いいと思った。

だからまた、交わるその日まで
心も身体も、どうか元気でいてほしい。
そう思った。


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私のいない場所でも
同じように時間は進んで

私の知らない世界でも
いつものあなたが
その場所にはいて。

ときどき、そんなことを思っては
すごく不思議な気持ちになる。


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