ほんとうの味から紡がれること。
20240909.
会いたい人に会える喜び。そしてそのときに心で感じたことは、何にも変え難い特別なものだと思う。
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去年の11月だった。ある人にメールを送った。その方が兵庫県丹波市でお料理をされているイチとニのまこさんだ。
普段はお野菜を使った料理をメインで作られているのだが、時折シナモンロールやクッキーを焼く機会があり、オンラインで販売をされている。そのシナモンロールを注文した私は、美味しさ以上の何か大切な想いを受け取った気がしてその感謝の思いを伝えたくてメールをした。そのメールにはとても丁寧に返信をしてくださった。そのやり取りは私の大切な出来事となった。
それからのこと、まこさんの料理に対する考え方やお野菜に向き合う姿は、一種の憧れのような、目指す姿のような。私のありたい姿となっていった。まこさんはいつも、お野菜の声を聞き、自分の心の声を聞く。そうして料理は出来上がる。お野菜のための、自分のための、大切な人のための料理だ。
いつか会いたいと思った。会って、どんな気持ちで。どんな思いで。どんな心で料理をされているのか。その場の空気や温度感を肌で感じたかった。
初めてまこさんを知ってから10ヶ月たった今。まこさんに会える機会があると知った。
ああ。これだ。と思った。今、会うべきだ。と思った。確かなものなどないけれど、タイミングが来たことがなんとなくだけれど確かにわかった。お会いする場所である兵庫県まで自分の家からどのくらい時間や費用がかかるかも調べる前に、気づいたら連絡をしていた。
そして先日、お会いした。
お会いした瞬間、まこさんが纏う柔らかいクリーム色のようなやさしい空気が緊張していた私の心をほどいた。
まこさんがつくる料理は、内側の内側まで、本物だった。出来上がりの表面的なきれいさでも、形式的な数字で括られた味ではない。お野菜と心の対話で出来上がった、本物の料理だった。どこまでも、嘘のない、ほんとうの味がした。ほんとうの味は、出来上がった料理たちが静かな様子で自信に満ち溢れ、それを食べた私は安心するように心が鎮まる。そして、まっすぐに。生きる力をくれる。
人と対話をするように、優しく、丁寧に、ひとりひとりのお野菜の表情を見る。まこさんによって調理されたお野菜たちは魔法がかかったように輝き、個性が生きる。心は、伝わる。と。出来上がった料理たちがそれを教えてくれた。
これまでの自分の概念が変わるくらい、何をどのような心で作り、何をみんなと分かち合いたいか。大きな気づきと考え方の変化があった。自分の見える景色がとても広がったように思う。これからの私にとって、すごく必要な時間だったことは確かだった。
こうしてまこさんと共に過ごす中で感じたのは、料理は自分と向き合うための手段なのかもしれない。ということだった。
それは、自分とも、お野菜とも、そこにいるみんなとも対話をしながら料理をする姿を見ることができたからかもしれない。
食べないと生きていけないから料理をし、食べ物を体に取り入れる。のは前提としてあるけれど、食べることが最終目的なのではなく、自分が自分と向き合うための時間として料理があると思えたとき。私は私のために料理ができるようになった。自分のために料理ができないことが苦しかったからこそ、その気づきは、私の心を軽くした。
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初めて食べたまこさんのシナモンロールから感じた美味しさ以上の大切な想いが何だったか。まだまだ一部かもしれないけれど、根本の部分を私は心で感じることができた気がする。
まこさんが贈ってくださったその想いを、次は私がその想いを誰かに伝えられるように、心を繋いでいきたい。やさしさが少しずつ、巡るように。あたたかな心が、紡がれるように。
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まこさんには、まこさんの生きている世界があって、暮らしがある。けれどそこに、そっと扉を開けて拒むことなく私を受け止めて、受け入れてくださったことが、何よりも、嬉しかった。
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