第14回「インタビューの心得」 【後編】
前編はこちらです
インタビューのコツ
私はこれまでの編集者時代とライター時代とを合わせると、おそらくは千人を超える人たちへのインタビューをしてきました。
その経験から、私自身が掴んだコツを紹介する回、後編です。
お喋りなインタビュー
前篇では、寡黙な人の言葉を「待つこと」についてお話ししました。
さて、では反対にお喋りな人に対してはどのようにすればいいのでしょう。
一つの質問に対して、すぐさまたくさんの言葉を返してくれる人がいます。インタビューする側とすればとてもありがたい人でしょう。
しかし、そんなお喋りな人にも落とし穴があります。お喋りが好きな人というのは、得てして話題がどんどん変わることがあります。
「幸せ」というのがテーマなのですが、喋っているうちにどんどん違う話になっていく。もういろんなことを話したくて仕方がないのでしょう。
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そういう人に対しては、相手が話すままに時間を過ごすのではなく、話がずれそうになったときには、的確に修正をしていくことです。さり気なくテーマに戻したり、あえて次の質問にいったりしながら、常にテーマに沿った話に戻すことです。
「書けない」話は不満の元に
なぜなら、テーマとまったく関係のないことをいくら話してもらっても、その話は原稿には書けないからです。そうなれば相手にしてみると「あれだけたくさん話したのに、私が話したことをあまり書いてくれていない」という不満につながったりするのです。
お互いのためにも、余計な話にならないようコントロールすることが大事なのです。
インタビューの失敗談
楽しいインタビューにあった落とし穴
ここで私の経験のなかで、失敗したインタビューを紹介します。
それは、あるお笑い芸人さんへのインタビューでした。その芸人さんはとても有名な人で、私自身も小さいころからよく知っている人でした。その芸人さんに会えることがとても楽しみでした。
いよいよインタビューの当日、その芸人さんは溢れんばかりの笑顔で迎えてくれました。もうその一瞬で私の心は掴まれたのです。緊張感も溶けて、楽しいインタビューの時間を過ごすことができました。さすが芸人さんですから、話がとても面白くて、インタビュー時間のなかで何度お腹を抱えて笑ったか分かりません。
そうして楽しいインタビューの時間を終えて、会社に戻ってテープを聞き返しました。もうこの時点では冷静に話を聞くことができます。このインタビューをどのような記事にするかを考えながら聞いています。
そこで気が付きました。その芸人さんが言っていることは、あまりにも常識的で、記事としての面白味がまったくないということです。 いくら話が面白くても、それが活字になっても面白いとは限りません。話を聞くことと、活字を読むことでは、受けとりかたはまったく変わってくるのです。
心は動かしても奪われない
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さすがに相手は話しのプロです。プロの噺家というのは、どんなにつまらない話でも面白くすることができるものです。どんなに当たり前のことでも、話術によっていかようにも脚色できるものです。ともかく私は、すっかり芸人さんの話術に飲み込まれていたのです。
話の上手な人に対しては、心を奪われてはいけない。相手の話が面白くて楽しいときほど、心のなかは冷静でいなくてはいけない。お笑い芸人さんから教えられたことです。
後編でのコツ
・よく話す相手の場合、テーマに沿った話からずれないようにする
・話の上手な相手に心を奪われず、冷静なインタビューをする
実際の私の経験上から、このような内容をお伝えしました。
ぜひ前編も振りかえって見てください。
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