A to Z
この前の記事で、A to Z cafeをご紹介しました。このカフェは、奈良美智さんとgrafによる展覧会「A to Z」の精神を体現するものとして、展覧会と同時期の2006年にオープンしました。
その展覧会「A to Z」について、写真やインタビューで一冊にまとめられているのが、この本です。
「A to Z」は青森県弘前市の煉瓦倉庫を舞台に、AからZまでの小屋や他アーティストとのコラボ作品を含む街並みとして作られた、大規模な展覧会です。
いろいろな小屋の写真を見ていると、やっぱり実際に行って、小屋に入ってみたい、空間を体感したいという気持ちになります。
私が一番好きなのは、Q 星の部屋です。
この部屋にあるペインティング(住人と呼ばれている)は、「The little star dweller」という作品。
祈っているような、眠っているような、穏やかで優しい表情に、言葉にならない美しさを感じます。すごく好きです。
あと、「小屋」というものに、奈良さんと同じく私も心惹かれるものがあります。なぜだかわからないけど。
小学生の頃、いつもの担任の先生ではなく、臨時で、教頭先生が図工の時間を担当されたことがありました。木工で、好きなものを作ろうという課題でした。
私は、家を作りたいと思ったので、画用紙に家の絵を描きました。その頃、ドールハウスやジオラマにもかなり興味があり、小さな家を作ってみることは、私にとっては、とても楽しそうなことだと感じられました。
でも、教頭先生は私の絵を見て、「お前さ、家なんか作って楽しいか?」と言ったのです。大きい声でそんな風に言われて、私は心の中で「あ、このおじさんは、わかりやすく子供らしい作品を求めてるんだな。そしてそう導くことを、正しいとかかっこいいみたいに思ってるのかな。」と分析してしまいました。
なので「はい、楽しいです。」とは言わずに、うさぎが2匹、箱から身を乗り出しているような絵に描き変えました。教頭先生は、「そうだよ、こっちの方が全然いいよ。」と言っていたのを、今も覚えています。
最初の、家の絵の中にだって、うさぎ達はいた。
また、うさぎと同じく、箱にも丁寧に絵の具を塗って、箱の「家」としての名残を、自分の中で表現しました。小さなアーティストなりの、強いプライドでした。
小屋を見て、住人やその中での生活にまで思いを馳せることができない、イメージ出来ない、そして自分が共感しない子供の絵は否定してしまう、という教頭先生のマインドは、今振り返っても、残念としか言いようがないけれど。
でも少なくとも、A to Z展へ行かれた方々や、このnoteを読んでくれている方々は、きっと小屋の中を楽しそうに見て、そこで何かを見つけることができる人達なんじゃないかなと、私は思います。