ぐらしあすの「金魚すくい」
ぐらしあすが子供のころ、近所に「金魚すくいを生業にしている」店があった。
平たくて広いブリキのような水槽に、色とりどりの金魚が泳いでいる。
1回20円。針金で輪っかを作って、そこに薄い半紙のような紙が糊付けされている。
すくい始めのころは、紙を破らないように細心の注意を払って、水面ギリギリ斜めからすくう。
4~5匹もすくったら、紙がふやけ始め、とうとう破れてしまう。
ここで お・し・ま・い
3回くらいトライして、あきらめて帰るときに、店のおばちゃんが、ビニール袋に2匹ほどいれてくれ持たせてくれる。
楽しい遊び…懐かしき風景。
縁日は(ぐらしあす地方では)夜店と呼んでいた。
それはそれは楽しみで、夜店が出る日を指折り数えていた。
うなぎ釣りやひよこ釣りなどもあったがやらなかった。
こども心に「うなぎを釣って家に持って帰ったら、このうなぎはどうなるのだろうか?」「母も困って怒るんじゃないか」というのが当時の判断能力だった。
友達の話によると、嘘か本当かわからないが、ひよこを釣って持って帰り、育てていたら成長し、とうとうそれが「にわとりに」になってしまい、朝からうるさくてたまらなかったと。
カメすくいも同じく。友達が小さなミドリガメをつって持って帰って育てていたら、やたらとでかくなり水槽が狭くなったというのは何度か見た。
動物を釣るというのは幼心にして、どこか哀愁を感じさせ、ぐらしあすはやらなかった。
時代の変化でスーパーボールすくいなども流行ったが、そこには情緒がなかった。
夏になると、時折子供のころのそういった、夜店の「あたたかい灯り」「甘酸っぱい匂い」「行き交う人の下駄の音」…がよみがえる。
ぐらしあすにとって、持っていく300円の使い道に迷う子供のころの、こころがおどる音が懐かしい。
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