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妊娠カレンダー/小川洋子

▫️あらすじ
出産を控えた姉に毒薬の染まったジャムを食べさせる妹……妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを描く芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」。謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ドミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三篇の小説。

▫️感想
表題作「妊娠カレンダー」の、情景描写の精巧さと登場人物の無機質さのアンバランスさが新鮮だった。妹や姉の夫の姉に対する対応は果たして優しさなのか。自分には乾いた優しさにしか感じられなかったが。「優しさ」と「悪意」について考えさせられる一冊。

▫️心に残った一行
P31 「つわりでげっそりしているわたしのそばで、フランス料理のフルコースを残さず平らげるような自分は好きになりたいと、ふと考える。」

P67 「この頃、いろいろな種類の痛みについて考えるわ。今までで一番痛い思いをしたのは、いつどんな時だったろうとか、末期ガンと両足切断と、陣痛はどっちの痛みに似てるんだろうとか、そういうこと。痛みを想像するって、とても気色悪いことよ。」

▫️こんな人におすすめ
・芥川賞受賞作品に挑戦したい方
・ファンタジー要素を含む短編を読みたい方
・「優しさ」について考えたい方

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