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プレーンソング/保坂和志
▫️あらすじ
うっかり動作を中断してしまったその瞬間の子猫の頭のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい、世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる…。猫と競馬と、四人の若者のゆっくりと過ぎる奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の、海へ行く日まで。
▫️感想
何か大きな事件が起こるわけではなく、さざなみのように、静かに、淡々と日常が進んでいく。ただ「日常」がテーマとなっている物語はたくさんあるけれども、差別化されている点がある。それが、地の文がこれでもかと感じるほど詳細に状況を説明しているという点だ。一文一文が長いのも特徴的だが、また状況説明しているにも関わらず、所々曖昧な表現もあり、それもまた会話文との境目を感じさせない不思議な効果を発揮している。小説の文章全体で物語の空気感を感じられる点は、作者の技量なのだろう。
▫️心に残った一行
P53 「でもね。あなたの事情は猫には関係ないから。もともと猫は、猫の見えてない人相手に歩き回ってるわけじゃないから。あなたに猫が見え出してはじめて、猫にもあなたが存在するようになっただけだから。やっと、あなたは存在をはじめたばかりなのよ。初心者」
「だから、もっと謙虚になってつきあおうとしなくちゃ。あなた、もう煮干も置いてあげてないでしょ。猫って、一匹だけ選び出すのって、できないんだから。猫はつねに猫全体なのよ」
P161 「〜映画って、だいたいしゃべっている人を中心に撮るでしょ。そうすると、そのあいだって、聞いてる方の人が何してるかわかんないでしょ。〜」
▫️こんな人におすすめ
・日常が描かれている物語を読みたい方
・さざなみのような静かな話を読みたい方
・猫と競馬がテーマの物語を読みたい方