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1Q84 BOOK2 前編/村上春樹
▫️あらすじ
心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しないーー君たち二人の運命が、ただの成り行きによってここで邂逅したわけではない。君たちは入るべくしてこの世界に足を踏み入れたのだ。この1Q84年に。……雷鳴とどろく夜、青豆はさきがけのリーダーから「秘密」を明かされる。天吾と父親の宿命的な再会、そして猫の町…二人が迷いこんだ世界の謎はまだ消えない…
▫️感想
物語が進むにつれて不穏な空気がどんよりと覆ってくる感覚がある。まだまだ青豆と天吾の周りに潜む謎が登場しているが、同時にはじめて3作目で天吾パートで青豆の名前が出てくる。青豆と天吾が想い合っている描写が登場し、「この本はもしかして壮大な恋愛小説なのではないか…」と感じた。大切な人の喪失を経験した青豆と天吾が進む「1Q84」の世界で今後どのような出来事が待っているのか想像がつかない。
▫️心に残った一行
P150 「新聞は「起こった」ことについては積極的に取り上げるが、「続いている」ことについては比較的消極的な態度で臨むメディアである。だからそれは「今のところたいしたことは何も起こっていない」という無言のメッセージであるはずだった。」
P163 「それでも不思議に、相手の声には怒りも恨みがましさもこもっていなかった。そこに含まれているのは何か違う種類のものだった。個人的な感情というよりは、客観的な情景のようなものだ。たとえば見捨てられて荒れ果てた庭とか、大きな洪水のあとの河川敷とか、そんな情景だ。」
P233 「空白が生まれれば、何かがやってきて埋めなくてはならない。みんなそうしておるわけだから」
P292 「痛みは多くの場合、別の痛みによって軽減され相殺される。感覚というのはあくまで相対的なものだ」
P303 「神は与え、神は奪う。あなたが与えられたことを知らずとも、神は与えたことをしっかり覚えている。彼らは何も忘れない。与えられた才能をできるだけ大事に使うことだ。」
▫️こんな人におすすめ
・変わった恋愛小説を読みたい方
・あらすじだけではどのような小説か想像できない物語を読みたい方
・性と死が題材の小説が読みたい方