「環境に優しい」は、選ばれる宿の新条件に!継続的な取り組みを行うために必要な考え方とは〜あめつちメルマガ【vol.19】
前号では、持続可能な宿経営を目指すために、環境負荷についてお客様の視点に立って考えることの重要性について、お伝えしました。
経済産業省・資源エネルギー庁の調査の調査によると、宿泊施設は第三次産業の中でもエネルギー消費量が多い業種であるというデータ結果もあるように、
客室、宴会場、温泉、プールなど、エネルギーを多くの施設や設備を備える宿にとって、環境負荷に配慮した取り組みを行なっていくことは今後、経営に欠かせない必須の、且つ重要な事項になっていくでしょう。
また、年々浸透しつつあるエシカル志向の観点からも、環境に配慮している宿は人々に好印象を与える要素であり多くの共感が集まるため、リピーターやファンの獲得にも繋がっていくはずです。(実際に下記のような調査結果もあります)
「選ばれる宿」には、他にはないその宿ならではの強みや魅力があるものですが、これからはそうした独自の強みに加えて、
という点も、お客様から選ばれるための重要条件の一つになっていきそうです。
では、いざ環境に配慮した宿を目指していこうと思った時、どのような点を意識して取り組んでいけば良いのでしょうか?
これについて私たちは、
1. 一過性ではなく、持続(継続)可能な取り組みであること
2. 宿泊施設、お客様のどちらか一方だけが過度の負担を強いられる取り組みではないこと(お客様にご理解と支持をいただきながら、ともに取り組める内容であること)
3. 取り組みの目的、意義、目標(KPI)が明確にされており、定期的な効果検証と改善が行われること
という、3つの視点がとくに重要であると考えています。
一つ一つ、順番に見ていきましょう。
一過性ではなく、持続(継続)可能な取り組みであること
環境への配慮、サステナビリティな取り組みを目指す上で、持続可能性を考えることの重要性は、多くの人が理解している共通認識だと思います。
とはいえ、持続可能性を実現するためには既存のシステムを見直す必要があるばかりでなく時に大胆なテコ入れが必要になるため、環境配慮は大事であるとわかっていながらも、一歩先に進めないということも現実的にあるのではないでしょうか。
たとえば、前回のアメニティを例に考えてみると、客室に置かれているアメニティは大量生産によって作られているものが基本だと思います。
その恩恵によってこれまでは低価格で仕入れ、全てのお客様にサービスとして過不足なく提供できていた、という側面があったと思います。
しかし仮に、環境負荷の観点から大量生産によるアメニティを一切廃止し、クオリティの高いものをお客様に提供しようと考えたら、どうなるでしょうか?
環境負荷のかからない質の高いアメニティは一般的にはまだ大量生産が難しく、生産数が少ないために割高になることが予想されるため、その分の費用負担が発生するという別の課題が出てきます。
この上乗せされた金額を宿泊施設が自ら負担するとなれば、これまでと同じように利益を出すことが難しくなってしまいます。
そのため、これまでの利益構造を根本的に見直し、新たな方法で収益を生むためにどうすれば良いのか?を考える必要が出てきます。
おそらく最もシンプルなのは「宿泊料を上げる」方法。
多くの宿は必然的にそのような選択を取らざるを得なくなると思いますが、
この時、
・宿泊料が上がることで、大事なお客様が離れてしまうかもしれない
・アメニティをなくすことで、お客様からのクレームはないだろうか
といった葛藤が生まれてくるのではないかと思います。
良い取り組みをしたいという思いは強くあったとしても、環境に配慮したアメニティを採用することに、一歩踏みとどまってしまうのは、こうした理由があるからなのかもしれません。
また、環境負荷を減らす取り組みは、一過性の取り組みではほぼ意味をなさないため、必ず「持続可能であるかどうか」を視野に入れて検討する必要があります。
そうなると自宿の費用負担、宿泊料を上げるという選択は総合的に無理だと考えて、諦めざるを得ないのではないでしょうか。
しかし、そこで思考が行き詰まってしまうのは非常にもったいないこと。
この時、ジレンマの突破口となるのが2つ目の、
宿泊施設、お客様のどちらか一方だけが過度の負担を強いられる取り組みではないこと
であると考えています。
これを考える上で、
お客様に貴宿が本当に大切にしていきたいことをしっかりと伝えて、理解していただくこと
そして、
宿とお客様がともに同じ方向を向いて、協力できる内容であること
が重要であると考えています。
もし仮に、どちらかが負担を強いられるような仕組みであったとしたら、Win-Winの関係にはなれず、(どんなに良い取り組みであっても長続きしないため)持続可能性という意味でも実現は難しいと思うからです。
ただ、昨今は幸いにも多くの人たちの意識の中に、サステナブルな取り組みへの関心が生まれ、高まりつつあるという、良い流れがきています。
さらに、今はかつてと比べて、旅行ニーズにも変化が生まれており、
「多少、価格が高くても環境に配慮した宿に宿泊したい」
「同じ価格帯であれば、環境への配慮がある宿を選んで何かしら貢献したい」
と考える旅行者も、徐々に増えている傾向があります。
つまり、サステナブルへの意識が高いお客様にとっては、価格は宿を選ぶ際の一つの指標にはなったとしても、十分条件ではないということです。
むしろ、その宿が大切にしている理念や取組姿勢を見て判断されるケースが多いため、宿の想いに共感できれば、「ぜひ協力したい!」喜んで協力くださるのではないでしょうか。
そのためにも、宿が環境負荷に対してどんな考えを持っているのか?、またそれに対してどんな取り組みをしていきたいのか?といった理念や取組姿勢をわかりやすい言葉で発信していくことが大事だと考えています。
またそれと合わせて、
・一つ一つのアクションが楽しく
・自らも参加できているようなリアルな感覚が持てて
・自分の行動が何かしらの形で可視化されている仕組み
があれば、自ずとお客様のモチベーションも上がっていくでしょう。
そして、このようにお客様のモチベーションを良い意味で喚起するとともに、本当の意味で持続可能な取り組みにしていくためには、3つ目の
取り組みの目的、意義、目標(KPI)が明確にされており、定期的な効果検証と改善が行われること
も大事な点であると考えています。
なぜなら、人は行動を起こすにあたってその意義を求め、さらにその行動の目標が設定されていなければ行動を起こせない、といった特性を持っているからです。
たとえばこのことを、タオル/シーツ交換に当てはめてみるとイメージしやすくなるかもしれません。
お客様が連泊される際、タオルやシーツの交換の要不要をドアノブにかけて知らせる仕組みがありますが、お客様からすると
「確かに環境のために多少は役に立っているだろうけれど、今ひとつ実感が持てない…」
という方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
しかし、これが仮に、
3泊連泊して、タオルとシーツを交換せずに使用した場合、CO2を〇%削減できて、それが宿泊施設全体の年間の削減目標値の1%だということが、数値化/可視化されたとしたら。
自分の行動が環境のために良いアクションであることが認識できるとともに宿泊施設の役に立っていることが具体的に理解できるため、より高いモチベーションアップにつながるはずです。
(この辺りの可視化は、外資系ホテルはとても得意だと感じます)
CO2の削減に全体の何%貢献できたという指標の他にも、
より具体的に 一つの良いアクションがたとえば森の木を植えることにどれくらい貢献できたのか?、あるいは、クリーニングの時に出る排出物がなくなる代わりに海の環境保全活動にどれくらい貢献できたか? といったことがわかりやすい形で数値化、可視化が進んでいけば、
まるでゲーム感覚のように、楽しみながら取り組んでいただけるようになるでしょう。
今、全国の宿泊施設における環境配慮への取り組みは着実に広がっており、これ自体は非常に良い流れであると希望を持っています。
この良い取り組みをさらに推し進めていくためにも、現実的な効果がわかるような、一歩踏み込んだ仕掛けや工夫が必要なのではないでしょうか。
世界のホテルを見渡してみると、可視化・数値化によるスコアリングが進んでおり、評価制度はあらゆる分野でより顕著になってきています。
環境配慮に対する取り組みにおいても同様で、良い取り組みを数値化、可視化して皆で共有することは、もはや当たり前なのです。
そして、このような流れは今後、日本においてもさらに加速していくことが予想されます。(そしてやがては、環境への配慮はスタンダードになっていくでしょう)
だからこそ今からできること一歩ずつ進めていくことは「選ばれる宿」になるために大事なことで、未来の重要な布石となっていくはずです。
次号では、楽しみながらお客様が参加できる仕組みを作るためのヒントを【ゲーミフィケーション理論】※を踏まえながら、お伝えしたいと思います。
どうぞお楽しみに!
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