突然の変化にどう備える!?地元で人気の観光施設が突然閉鎖!環境変化に負けない宿経営とは②〜理念に立ち返り、宿の内外を観察することで進む道を見つける
前号では、冬のシーズンに多くの観光客を呼び込んでいた地域である日突然スキー場閉鎖の可能性が出てきた例を挙げ、
・宿泊施設が立地に依存しすぎること
・地域の特定の観光資源に集客を依存しすぎること
のリスクついて、課題提起をさせていただきました。
(前号は下記よりご覧いただけます)
また、前回はたまたま近隣スキー場の閉鎖の例を挙げましたが、宿泊施設はいずれも特定の地域にしっかりと根を下ろして地域密着の経営されているところが多いため、このような「ある日突然」の外部環境の変化による影響は不可避であろう、ということもお伝えしました。
つまりこれは、いずれの地域、いずれの宿泊施設にとっても無縁ではいられない、きわめて普遍的なテーマであるということです。
では、このような突然の外部環境の変化や不測の事態にどのように対応していったらよいのでしょう?
そこでまず、「宿が今、どのような立ち位置にあるか?」いう現在地をできるだけ正確に把握するために、自館の内部と外部の状況を客観的かつ俯瞰的に見直してみることをおすすめしたいと思います。
ご参考までに前回ご紹介した近隣スキー場の閉鎖を例に、SWOT分析に当てはめ、順を追って情報を整理していきましょう。
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SWOT分析は企業やプロジェクトの現状を把握して経営戦略に落とし込むために、内部環境と外部環境のプラス面・マイナス面を洗い出す現状分析手法です。
「SWOT」それぞれの頭文字を取り、4つの要素を下記の通りさまざまな観点から分析していきます。
【内部環境】
S:強み(Strength)/内部的な強み。競合優位性や、他社にないリソース・能力を指す。
例: 高いブランド力、優れた技術、強力な顧客基盤etc…。
W:弱み(Weakness)/内部的な弱み。組織やプロジェクトが改善すべき点や、競争劣位にある部分。
例: 資金不足、専門知識の欠如、認知度の低さetc…。
【外部環境】
O:機会(Opportunity)/外部的なチャンス。市場の変化やトレンド、外部環境から生じる成長や成功の可能性。
例: 新しい市場の開拓、技術革新、規制緩和etc…。
T:脅威(Threat)/外部的なリスク。競争環境や市場の変化によって生じる潜在的なリスクや障害。
例: 新規競合の出現、景気の後退、消費者の嗜好の変化etc…。
内部環境と外部環境から探る、SWOT分析で見えてくる宿の現在地
ではこのSWOT分析を、前回の近隣スキー場の閉鎖の例に当てはめてみたとしたら、どうなるでしょう?
立地条件、今業界全体に横たわっている課題、観光客の旅行に対する嗜好の変化や昨今の旅行トレンド、さらには現地情報のヒアリング内容をもとに、4つの要素をそれぞれ抽出してみました。
あくまでも一つの事例として、ご参考にしていただければ幸いです。
【内部環境】
S:強み(Strength)
・おもてなしに定評のある経営者の心温まる接客
(名物オーナーや、名物女将がいて、その人に会いたいと遠路はるばる訪問する方が多い)
・何かしらの強いテーマ性を持っている
(支配人が自ら集めたアンティークの調度品が、宿の至るところに配されていて、独自の趣ある世界観を成している等)
・地域の特産品を使ったオリジナルのスイーツやジャムなどを販売している
W:弱み(Weakness)
・慢性的な人手不足
・スタッフの高齢化、またそれに付随して起こる体調不良
【外部環境】
O:機会(Opportunity)
・インバウンド市場の拡大
・インバウンド富裕層の、地方への訪問意欲の高まり
(ゴールデンルートではなく、その地域、土地ならではの魅力を発掘して体験してみたいというニーズ)
・エコツーリズムに対する興味関心、自然回帰
(グランピング、ソロキャン、アウトドアサウナ)
・団体旅行離れと、スモール&ラグジュアリーの台頭
・エシカル、環境負荷軽減への取り組みに対する関心の高まり
T:脅威(Threat)
・若年層の旅行離れ
・採用の難しさ
・昨今の物価高騰
いかがでしょうか。
このようにSWOT分析のフレームワークに沿って4つの要素を丁寧に紐解いていくことで、今、宿が置かれている状況、宿の現在地が詳らかになってきます。
自館の今の「強み」(Strength)と市場の「機会」(Opportunity)の掛け合わせで、宿の魅力を再定義
自宿を内部環境と外部環境から客観的に見つめ、今現在、宿が置かれている状況が見えてきたところで、続いては、具体的な戦略の再策定のステップに入ります。
全国には、大小さまざまなタイプや規模の宿泊施設がありますが、cocodakeを導入いただいている宿をはじめ、弊社とご縁をいただいている宿泊施設は、中小規模の事業者様が多いため、こちらでは中小事業者様のケースを例に考えてみたいと思います。
基本的に中小事業者様の場合は資源が限られているため、内部の弱み(Weakness)を無理に補強、補完はせず、Strength(強み)とOpportunity(機会)の2つを選択し、それらを組み合わせることで再設計していきます。
こちらでも、先ほどのSWOT分析において、それぞれ抜き出した要素を元に、考えてみます。
たとえば、
・おもてなしに定評のある経営者の心温まる接客
・強いテーマ性がある(支配人が自ら集めたアンティークの調度品が、宿の至るところに配されていて、独自の趣ある世界観を成している)
・地域特産品を使った経営者の手作りスイーツやジャムの提供
というStrength(強み)と、
・インバウンド市場の拡大
・インバウンド富裕層の地方訪問意欲
というOpportunity(機会)を掛け合わせると、
『日本の地域の文化、暮らしに興味を持つ海外(準)富裕層に、家族経営ならではの行き届いたホスピタリティと日本らしい温かなおもてなし、アットホームな居心地の良さを提供するアンティーク宿』
といった、新戦略が見えてきます。
(※これはあくまで一例であり、それぞれの環境分析により内容は変わります)
(海外の富裕層というと、アマンリゾーツやリッツカールトンなどのスイートに泊まるイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、そうとは限りません。そこに上の異文化体験があるならば、遠路はるばる目的の地を訪れ、たとえば古民家で囲炉裏を囲んで、焼いた魚や五平餅を味わうなど、そこでしか味わえない特別な体験を求めていきます)
また、この過程においては、これまでにこのメルマガでお話ししてきたテーマである『イノベーション』を起こすため、Strength(強み)とOpportunity(機会)を掛け合わせるだけでなく、今一度、自館の創業時の想い、志を立てた理念、また、「なぜ、ご自身(先代から受け継がれた想いも含めて)が宿を始めるに至ったか」に、深く深く立ち返ることが最も大切なステップになります。
戦略策定の前に、「理念」に立ち返り、客観的な意見をもらうことも大事
これは以前もお伝えした通り、経営者ご自身の過去の経験の棚卸しも大事になってきます。
たとえば、経営者がかつて影響を受けた人物、憧れていた人物、こんな宿を目指したいとベンチマークしていた宿の存在などを思い出し、「ご自身と宿がなぜ、この宿を始めたのか。また、なぜ今まで続けているのか?」といった原点や、宿を始めた動機にまで深く深く立ち返り、宿の存在意義、意味を改めて見つめ直していただきたいと思います。
このように、ご自身が宿を経営し続けている根本にあるものを深く深く掘り下げていくことで、「自分のモチベーションはこれだった!」、「あの宿のような世界観、おもてなしをしたくて、これまで続けてきたんだ!」といったように、一番深いところにある理念が明確に見えてくるでしょう。
理念が改めて明確になったところで、先のSWOT分析の内容を照らし合わせて、
【理念、存在意義】 ×【注力すべき強み(Strength)】 × 【捉えたい機会(Opportunity)】
で、それぞれの要素を掛け合わせて戦略を策定していきます。
ちなみにここで重要なのは、StrengthとOpportunity を、第三者的な目で見てもらう機会を持つということです。なぜなら、主観や思い込みが入るとそれらを正しくアセスメント(評価)することができないこともあるからです。
できれば信頼できる何名かの業界人や、異業種の方、あるいはよく利用してくださるお客様にこのStrengthとOpportunity の真偽、強さ、可能性についてヒアリングしていただくのが良いかと思います。
これら3つの要素が明確化されたら、いよいよ新しい戦略を策定していく段階になります。
戦略を練っていく際には、どんな「理念」をもって、「誰に」、「何を」、「どのように提供する」宿なのか?、明確に再定義していただきたいと思います。
次回のメルマガでは、今回の内容を踏まえて、戦略を策定するにあたり、自館が抱えている課題の抽出と評価(アセスメント)と対応策を考案するためのヒントをお届けしたいと考えています。
どうぞお楽しみに!
今日もも最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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