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フリースクール活動日記 2024/12/20-靖国神社

 ここに、私は宣言する。今回の活動は、決して皆の思う通りには進まなかったと。後から振り返ってみれば計画的な活動のように見えるかもしれないが、それは誤りである。せいぜいが「行き当たりばったり」といった程度であったが、それでも急造の予定通りに活動できたことは、スタッフをはじめメンバーたちの奮戦のおかげだろう。当初の目的を果たすことは出来なかったが、今回の活動は十分満足のいくものであったと思う。
 この日の活動は、靖国神社へと決まっていた。最近では教室でのグループワークで「日露戦争」や「日中戦争」、「ナショナリズム」などについてのディスカッションを行うことが多かったのだが、その際に皆の反応があまり芳しくなかった。ほとんどのメンバーが議題についての自分の意見を述べることができていない。そこで、反対意見が出ることを承知のうえで、「靖国神社内の遊就館へ行く」案を提出したみたところ、思っていたよりも反論が少ないことがわかった。その反対意見も、中立派をあの手この手で懐柔し味方に付けた結果ほぼ封殺に成功し、立ち消えとなった。
 このようにして我々の行動は実を結んだが、しかし我々はそのことに浮かれてしまっていたのだろう。とても重要な、遊就館が今月31日まで休館しているということを知らなかったのだ。
 そのことに気が付いたのは、靖国神社への参拝を終えてからであった。鳥居をくぐり、大手水舎で手と口を清めて、そのうえで参拝を終えたとき、私の目にはこれまで見たことのない看板が立っていた。そこにはもちろん、「遊就館全館休館中」との張り紙がされていたのである。

残念なことに、遊就館内の零式艦上戦闘機もガラス越しにしか見ることできなかった。

 これにより、当初の予定は音を立てて崩れ落ちた。日露戦争に関連する展示を見に行こうとしていたというのに、その展示を見ることができなくなってしまったのだから。代替できるものを探しもしたが、付近にある史跡はそのほとんどが太平洋戦争時のものばかりである。どのようにしてこの事態の収拾を付けるかということが、この日一番の議論になった。その間、張り詰めた空気を緩和するためか、神社の裏手にある「神池庭園」を周遊した。吉村昭の「落日の宴」にも登場するロシア軍艦「ディアナ号」の大砲を眺めては驚嘆し、季節外れだというのにも関わらず、庭園内の紅葉が紅く色づいていることを喜んでいると、しばらくして行き先が決まった。

 今日行く予定であった遊就館の休館を受けて、代替案として「昭和館へ行く」案が登場した。遊就館が軍人の装備を展示しているとすれば、こちらは銃後の国民の生活についての展示をしていることになる。併せて午後に北の丸公園に行くことも決定し、1時までの自由行動をとることも決められた。しばらく今年最後と思われる紅葉を堪能した後、移動する。

 そして、昭和館に入った。最上階である7階から順々に降っていく形式であるが、他のメンバーがすぐに階下へ降りていく中、私や龍角散などはその最後尾を進んでいた。千人針や赤紙の展示などを見ていると、いつの間にか周囲には誰もいなくなっていた。
 国民服や愛国婦人会の赤襷、焼夷弾の弾頭などが展示され、階下へと続く階段にはスピーカーが、そしてそこからは途切れ途切れの声で「玉音放送」が流れてくる。今回はちょうどどこかの小学校の社会科見学の日程と重なっていたためか、小学生によって展示室は埋め尽くされており、私たちはやむなく展示室を脱出した。しかしながら、これらの展示は吉村昭などの小説を読む際にも役立つものであるのだから、いつか一日がかりですべての展示を見てみたいものだ。できるのであれば、学校の社会科見学の日程と重ならない日がよいが。
 その後も階下の展示室を時間をかけて見ていると、いつの間にか時刻は1時をまわっていた。急いで1階ロビーに集合し、今日の第二目標であった北の丸公園に向かう。本日天気は晴朗なれども、少し陰りが見え始めていたからだ。雨天決行するほどの気概を、我々は持ち合わせていないのである。
 皆がまっすぐ公園を目指す傍ら、私や龍角散たちは一足先にとある場所を目指していた。昨日あらかじめ行き先を調べていた際に見つけた場所である。

近衛第一連隊跡の碑

 戦前・戦中に皇宮守護の任に当たっていた「近衛連隊」の碑である。特に近衛歩兵第一・第二連隊は、1945年8月15日の「宮城事件」において反乱軍に与した部隊でもある(積極的に関与したのは第二連隊のみ)。それらの跡地を巡り終えて皆と合流、昼食後はいつものように乱闘をする皆の見物に勤しむ。

 その後は2時30分ごろに荷物をまとめ、付近にあった「旧近衛師団司令部庁舎」を目指して出立した。おそらくはこの地こそ、先に述べた「宮城事件」にて近衛第一師団長が殺害された場所である。より詳しくこのことを知りたいという方がいるのであれば、半藤一利の「日本の一番長い日」を読まれると宜しい。

旧近衛師団司令部の外観
内部(現在は東京国立近代美術館)

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