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製作日記 鶏頭骨キャンドル③
蝋が漏れ出しては完成までこぎ着けることは難しい。本当は再度二つに割って補強するのが一番良いのだろうが、もう中身がない以上それは悪手。若干の歪みが出る可能性もあったが、他のものと比べて一番被害が少ないであろうと判断したため、そのまま型を崩さないようにしながら粘土でさらに外側を補強することにした。
ひたすら粘土をちぎっては貼り付け、ちぎっては貼りつけること2、30分。ついに隙間はなくなったと判断し、再び蝋を溶かし始める。そしてゆっくりと、溶かした蝋を型に注ぎ始める。
だが、あちこち補強を突貫していたため注ぎ口が全体的に狭くなってしまっていた。いざ傾けて注ぐタイミングで手元が狂い、蝋の幾分かを手首にかけてしまった。
熱い、と瞬間的に思って手を離してしまいそうになったが、蓋を開けてみれば思ったほどには熱くない。そういえば、なにかで読んだことがある。溶けた蝋の熱さは、せいぜい40℃から60℃の熱湯と同じようなものだと。
事実、かかったときは確かに熱く感じたもののすぐに冷えて固まってしまった。これは、体温35度前後の人の熱に吸い取られたりしたことが原因なのか。
それはともあれ、動じず手を滑らせなかったため蝋はどんどん型に流し込まれていく。型から漏れ出していく筋は……未だ、見えない。思ったよりも容量が大きく、二度三度と新しく注がなければ全て埋まらなかったのだが、3度目にて注ぎ口から蝋が溢れるのを確認、ようやく流し込み終えた。あとは、数時間冷やすだけ。
その間はじっくりと本でも読んでいよう。久しぶりにトールキンの「指輪物語」を読んで、さっそく製作日記の草案を書き始める。
そうこうしているうちに、2時間が経過。未だ固まっているかはわからないが、もう我慢の限界。固まっている可能性に賭けて、思い切って取り出すことにした。
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ゆっくりと型を二つに割っていく。蝋が流れ出さないか。中身ごと二つに割れてしまわないか。不安は数多くあったが、そういったことに意識を向けてしまうと失敗するというのは基礎中の基礎。
冷静になれ、冷静になれと言い聞かせながら型を割っていく。しかしながらそういったときにでてくるのは僕の笑いのツボ。なにがなんでも笑わせて手を滑らせようとしているとしか思えない。けれども手を滑らせては何日もかけてようやく完成させた「鶏頭骨キャンドル」が水の泡に。
いろいろと考えながらも、意外にも心は落ち着いていて綺麗な断面をみせてくる。これは、あれか。思い当たる節がある。フリースクールでさんざん龍角散、Χαοσらに翻弄された結果、生半可なことでは動揺すらしないようになってしまったのか。
ありがとう、龍角散。キャンドル造りを手伝うと言って知恵も金も労働力も貸さなかった君だけれど、それでも君たちのおかげで蝋燭はきっと完成する。ありがとう。ただしこれ以後はきちんと手伝って欲しいし、できれば僕を翻弄するのも止めて欲しい。
さて。ようやく蝋燭が姿を現した。そこには意外にも綺麗なかたちを保ったままの蝋の塊があった。
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完成形(削り出し終了)
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