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フリースクール活動日記 2023/06/08-羽村取水堰

 今週の行き先だが、僕の知らないところでいつの間にか羽村取水堰へとなっていた。僕が龍角散に将棋での対戦を挑まれ、彼の思いがけない戦法に四苦八苦していた頃だった。イマンモは僕達に声を掛けたと言っているが、僕達にはその記憶が無い。熱中していて記憶がとんでしまったのか、それともそんな事実はなかったのか。
 そんなこんなで決まってしまった行き先だが、雨が降ると聞いていたため、また僕の行きたいところはとくに無かったため、丁度良かった。そう思って今日を迎えたが、朝起きてカーテンを引き開けると、燦々と太陽が降り注ぐ。頭上に広がるのは、雲一つ無い青空……
 今日は雨が降るという天気予報は、なんだったのだ……ただ陽が出ているだけならまだしも、この日の気温は68℉を軽く超えている。こんなことなら、僕がいつか行った「フィールドアスレチック 横浜つくしのコース」を希望しておけば良かった……あそこならば、こんなに気温が高くとも、太陽が燦々と降り注ごうとも、楽しく遊べたであろうに……
 と、集合場所で思ったのも束の間。30分遅れていた最後のふたりが集合場所に来たので、180メートル先の羽村観光案内所を経由して、羽村取水堰へと行くことになった。
 10分ほど歩いて到着した羽村取水堰。過去に一度小学校の社会科見学で来たことがあるが、その時とはだいぶん受ける印象が異なって感じられた。どうどうと流れ落ちる水の音。玉川兄弟の銅像の周辺で羽村取水堰をのぞき込む。Χαοσらが塀の上に立ち、飛び込もうとするような姿勢をとったため、慌てて彼らを安全に下へと運べるような場所を捜したが、そうしていた僕の視界の隅で、塀の一カ所のくぼんだ場所を捉えた。


 そこを確認してみると、狭く小さいコンクリート製の階段が下へと続いている。長い間風雨にさらされた結果なのか、あちこちがすり減ってしまっている。Χαοσらの飛び降りを阻止するため、大声で階段を発見したことを知らせると、不意に影が差した。狭い狭い階段の上から差した影は、だんだんと僕に向かって近づいてきて、そのうち龍角散の叫び声が聞こえるようになった。
 後ろを見れば、龍角散・カッパくんら3人ばかし続いたり。慌てて階段を駆け下りると、かなり広い場所へと出た。テトラポッドがあちこちに立ち並び、その向こうでは取水堰を通過した水がごうごうと音を立てて流れている。
 その水量は、僕の過去の記憶と比べても圧倒的に多い。昨日井の頭公園三角広場へと行ったときも、神田川の水量が10cm以上も増加しており、飛び石が水没してしまっていて難儀したのを覚えている。その水量の増加は東京都全域でも同じだったのだろうか。
 呆気にとられていると、いつのまにか龍角散らに続いて皆降りてきている。Χαοσ、シャコ、ヨッシー。彼らは降りてくるなり水の側に近寄ったり、突堤の先端に立って水を触ろうとしたりしていた。
 そんな彼らを尻目に、僕やカッパくんは木材を拾って土木工事に専念していた。そんなとき、羽村の取水堰から警備員(?)が2,3人出てきて、立ち退くよう伝えられた。曰く、水量の爆発的な増加によってこの場所の危険度が増したため、一時的にここを立ち入り禁止にするという。至極真っ当な理由であったため、皆からも特に反発は起こらなかった。この場所に変わって別の、もう少し安全な場所を紹介してくれたため、そこに行ってしばらく川の水で遊ぶ。

河原で遊ぶ皆と、注意喚起に来た警備員(?)
真ん中の辺りに見える橋は、後述する橋と同じ


 暫く経って少し先にある橋へと向かった。そこから下の川を見下ろそうと考えたのだが、思った以上に風が強い。強風に難儀しているうちに皆が来てしまい、余り景色を楽しむことなく、橋を渡って次の目的地「羽村市郷土博物館」へと向かうこととなった。
 ここ「羽村市郷土博物館」には羽村に生息する動物の剥製、羽村の目玉である羽村取水堰についての展示、そして羽村市出身の小説家である中里介山の展示がある。入ってすぐの所に僕の好きなハシボソガラスの剥製があったため、おもわず写真を一枚。羽村の旧水門、現水門の展示を見てから、中里介山の展示コーナーへと向かう。小説「大菩薩峠」などの展示がされていたのだが、僕はこれまでその存在すら知らなかった。今後図書館で見かけたら、借りて読んでみることにしよう。

「2」とあるのは最近参加した男子メンバー。
後から見てみると、一人だけ手の向きを間違えてしまっている……

 ロビーに全員が集合するのを待って、赤門の横を通り過ぎて旧下田家住宅へと入った。土間には多くの農具が立てかけてあり、畳に上がれば囲炉裏があり、既に来ていたΧαοσらが火に当たっている。天井には竹がぎっしりと詰まっていて、その上には茅で葺かれた屋根がある。もはや茅は貴重品で、手に入らないそうだ。国の文化財指定を受けているというのもうなずける。縁側の壁には、昭和時代の「火事・泥棒除」の御嶽神社の御札が貼ってあった。
 僕としては帰るまでずっと此処に居ても良かったのだが、イマンモ達の考えは僕とは異なっていたようで、ここに30分ほど滞在した後、昼食を摂るために河原へ行くことになった。
 今日、ここへ来た当初は気温が高く、しかも陽が燦々と降り注いでいたため、あまりの暑さに体が溶け出していくような錯覚に襲われ。昼頃になって漸く陽は翳ったものの、まだまだ暑いまま。囲炉裏の火に嬉々としてあたりに行くΧαοσらは一体何を考えていたのか見当もつかなかった。こんなにも、暑いのに。
 そんな囲炉裏端やまだ日の照っていた羽村駅に対して、河原は風が強く非常に涼しい。そこで弁当を食った後、皆が思い思いに自分の時間を過ごす。川に植物や倒木を流したり、泥濘に人を突き落とそうと画策したり。
 次回は何処へ行くのだろう。ここしばらくは梅雨だから、やはりどこかの博物館へ行くのだろうか。それとも雨が降る中、高尾山へ頑張って登るのだろうか。次回行くときも、楽しむことが出来たならいい。

‘今日持って行った本’
ルソー「社会契約論」
吉村昭「遠い日の戦争」
 〃 「プリズンの満月」

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