フリースクール活動日記 2024/01/11-航空公園
ヨッシーが声をかけたのに、無視された。なんて非道なやつなんだ、と二人して憤っていたのだが、実際のところは彼は気が付いていなかったようだ。
そんな彼、χαοσが声を間近でかけられたのにも気が付かなかったこと。当然それにも理由があるのだ。そのとき、彼は激怒していた。こんな仕打ち、あんまりだろうにと自分を慰め、またその怒りを彼方にいる者に向けていた。
この日、レイセンが欠席するという情報が前もってメンバーに周知されていた。そのために年長メンバーであるカッパくんとチーくんが教室の最寄り駅へと皆を集め、レイセンに代わって目的地たる航空公園駅まで皆を連れていくことになっていた。
未だ小学生のχαοσは、そんな連絡を夜に受けてその日のうちにカッパくんに自分も連れて行ってもらうように伝え、カッパくんからも了承という返答が返ってきた……そのあとが問題だった。彼は翌日ルンルンと集合場所へと向かい、若干余裕をもって到着した。
……誰もいない。カッパくんやチーくんのみならず、彼らと同行していたことりんごやシャコシャコまでもがいない。これはどうしたことか。χαοσは急いでイマンモに急を知らせた。
そうして判明した事実は、至極単純なことだった。もともといつもはシャコシャコとことりんご「のみ」を引率していたレイセン。それを同行しながら間近で見ていたカッパくんは、今回引率役を任されたときに「ことりんごとシャコシャコ、ことりんごとシャコシャコ。忘れるな。忘れるな」などと呪文のように胸中にて唱え続けていたことであろう。この2人は、もし置き去りにしてしまえばほぼ確実に路頭に迷う(かなり遠出した場合のことではあるが)であろう。
そうしてひたすら先ほどの文言を唱え続けていた彼は、χαοσのことをすっかり忘れていたのだろう。少し早めにことりんごとシャコシャコがそろったことに狂喜乱舞し、そのまま電車に乗ってしまった……χαοσが彼らがいた場所に到着する、わずか4分前の出来事である。
嗚呼、なんと憐れなのだろうか。皆から憐憫と同情の視線を一身に受け、χαοσは航空公園駅に着くなり真っ先に改札口をくぐってカッパくんに飛びかかっていった。
まあ、無理もなかろう。置いていかれて、加えてなんの悪びれもなく出迎えられれば誰だって怒るだろう。カッパくんにも十分同情はできるのだが。
遅くやってきた龍角散を迎えて、さっそく航空公園に向かって進発する。ここへ来たのはちょうど一年ぶり。未だことりんご、ヒナッピー、龍角散などは居らずemmanmo、イマンモ達幾人かが体調不良で休んでいた記憶がある。今回参加したメンバー・スタッフ合わせて13人のうち、前回参加したことがあるのは8人。3分の1強はほとんどが初めて来たことになる。YS-11に夢中になるメンバー、そんなもの無視してとっとと進んでいくメンバー、そんなメンバーたちに丸めた手袋を投げつけてくるメンバー。3者3用に独特な行動をとるため、先頭と最後尾との間がどんどん広がっていく。最終的にはソースが置いていかれかけるということに繋がる。まあ、ほぼいつものことではあるが。
昨年度は航空公園は快晴、午後になると皆上着を脱ぎ棄てて公園を駆け回っていた。そんなこと、私にはとてもとても……確かに去年の今頃はここで同じことをしたのだが、それにしても今日は寒い。カイロでも持ってくればよかったと悩みながらも足を緩めることはない。歩き続けることで少しでも温まろうという魂胆だ。そのため公園で走ってきたいというメンバーに未だ若いなと羨みの目線を向けつつ、僕たちはすぐに館内へ。いそいで逃げ込む。
最初に出迎えてくれる「会式一号機」も横目で見るだけ。暖かい館内目指してひたすら歩み続ける。龍角散やemmanmoなど昨年来ることのなかったメンバーはあちこちじっくりと回り、見たいところのみをさっそく見に行く僕たちとは一風違った進路をとる。そして、その中には謎のドクロ仮面も……?
見たい展示のみを見終えれば、さっそくフライトシミュレーターなどの展示に各人が向かっていく。昨年度から待ちに待っていたのだから、過去に見た展示は後回し。九二式戦闘機などを途中目に入れたため一時期止まって眺めたが、それだけ。
押しあいへしあいしながらフライトシミュレーターへと向かう。東京タワーやヴェネチア、香港にサンフランシスコなどの景色を見ながら飛べるということで、龍角散たちが挑戦する。
が、すぐに機位を失い海面へと転落していった。なんだか昨年よりも難しくなっている気がする。展示もかなり変更された。昔あった桜花はいつの間にかなくなっている。そのスペースが開いているのだが、残念なことに新しい機体は納入されていない。もっと別の機体も見てみたい。調布飛行場に行けば100式司偵のプロペラなどもあったように思うのだが。
けれども悪いことばかりではない。昨年できなかった「スペースウォーカー」なるものがあり、月面などでの重力を体験できる装置のようだ。もちろん1人あたりに制限時間はあるが、その中でなら自由に飛び跳ねることができる。若干高所恐怖症気味の僕は、χαοσや龍角散に勧められてやってみたのだが、時間切れの瞬間に飛び上がってしまったため、ものすごい勢いで落下。脚・肘・腕を激しい衝撃とともにたたきつけられて思わず放心してしまった。楽しい。だが危険だ。シートベルトがかなり緩かったためにきつく締めることができるようになっているとよいのだが……
そんなものがあっても、やぱり一番人気はフライトシミュレーターだ。皆が挑戦するのを、ほほえましく見守っている。相変わらず人数が多い。一つの機械に4,5人が並んで順番を待っているのだ。皆記念館を楽しんでいるようで、なによりだ。
その後、館内に飽いた連中が外へと出ていく。外は晴れ上がり、幸いにも多少気温が上がってきている。藤棚を確保し、そこのベンチに弁当を広げる。龍角散が弁当を買い忘れただの恵んでくれだのと言っているが知ったこっちゃない。それにカッパくん!君も追従するんじゃない!
結局ハムを1枚分けることで手打ちとなった。その後ことりんごに菓子を大量に分けてもらったことで胃袋をつかまれた彼らは「この御恩、絶対に忘れませぬ!一生、附いていきます!」などといい、行進していく。
けれども、それで二人に仲間意識が芽生え、結束がより深まるかというとそういったことは一切なく。むしろ数少ない菓子を分け合うことに問題でも発生したのだろうか、ついには取っ組み合いの大乱闘が始まってしまった。もちろん、それに皆は嬉々として飛び込んでいくのだがそうでないメンバーもいる。おもに、女子メンバーにだが。
男子はそこのところ血の気が多い。脚をつかんで引きずり回す。人を背負い投げる。傍観しているパイセンに挑みかかってあっさりと引き倒される。
遊具では、カッパくんに顔をけられ、龍角散が引きずりおろされ、χαοσは突き落とされる。
結局のところ、今年も昨年と似た一年になりそうだ。だが、4月にはメンバー4名ほどがいなくなる可能性がある。中3メンバーがいなくなれば、一気に寂しくなるだろう。ほかにも小6メンバーが幾名かいることを考えれば、今年はかつてないほどに(過去には結構あったかも)活動規模を収縮しなくてはならないかもしれない。中学生全体で考えてみると、いまのところ中3に三人男子がいるがあとは中2中1に一人ずつ。もしかすると男女比半々ぐらいになってしまうかもしれない。(そうなった場合、僕はこれまでのように池に突き落とされたり引きずりおろされたりという脅威にはさらされなくなるため考えようによってはとてもいいのだが)そうなってしまうと一気に寂しくなる。だから皆!学校の休み時間でもいいから、少しは顔を出しに来てくれ!カッパくんやワサンボンのように。
ところで、貴方はドクロ仮面を何人見つけることができたのだろうか。正解は、3人。「スペースウォーカー」に乗っているのも彼である。最近彼は外出時はほとんどの時間を仮面をつけて過ごしているため、もしかするとまた出てくるかもしれない。
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