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フリースクール活動日記 2024/02/08-目黒

 さて。集合場所の目黒駅に着いてはみたものの、皆が見当たらない。それもそのはず。目黒駅、言っては悪いがそこまで大きな駅ではない。そのくせ人の数は多い。皆の姿に気が付かないのは当然である。また、駅前の食器屋が今日で店じまいをするようで、そこに多くの人混み(主に主婦層が見受けられた)が在ったのもそれに拍車をかけた。そこに入り込んだemmanmoや、なぜか入り口に近いところにいたイマンモなどたとえ目と鼻の先にいたとしても目に留まることはない。実際にそうだった。
 ほとんどのメンバーが揃い、予定時間を少し超過した時にも人波に幾人かが連れ去られていく。そのことによって皆かなりなストレスを受けていたのだろうが、JR中央線の遅れでやってこないソースに対してもみな寛容だった。なんてったってパイセンを残していってあげるというのだから。

 なんで待ってあげないのかと?うるさい。遅れるほうが悪い!そういって、みんな僕を置いていったではないか!その前例があるのだから、僕は絶対に待つことはしないぞ!
 目黒駅前の地図にて付近の様子を調べ(いくつもの大使館が存在することに度肝を抜かれ)(なのになんでホーム二つしかないんだろう)、目的地へと進発していく。
 今回の目的地は科博の附属自然教育園。前日に理科について学習していたメンバーたちが「植物と動物の違いって何だろう」という素朴な疑問に対して答えることができなかったため、そのことに業を煮やしたヨッシー(小中学生の中では、彼のみ唯一応えることができていた)の手によって教育園行きが半ば強制されるかのように決定したのだった。
 さっそく教育園に入ってみると、そこには種々のはく製が。特に、ここにあった「ハシブトガラス」の一品は他を圧倒する。羽の構造色に色つや。少し前に見た陸奥模型と並んで家に欲しいと思ってしまった。当然、無理だ。幸い、家には木彫りのカラスが2羽いるので陸奥の時ほど視線がくぎ付けになってしまうといったことはなかった。
 そうしてさっそくフリースクール内で一番の有名人「龍角散」がやらかした。これは、前日前々日と雪玉をあちらこちらに投げつけた罰が当たったものと思いたい。彼は入ってすぐのところに落ちている植物の実を拾って、口に入れた。
 僕が勧めたからだと彼は後に抗弁したが、それは嘘だ。僕は見つけただけで勧めてなどいない。むしろ止められるものならば止めたかった。彼の判断が早くそうすることはできなかったが。
 しばらく歩いた時、彼は急に「口のなかが痛い」と言った。やはり。だからやめておけばよかったんだ。皆から憐憫と同情の籠った視線を向けられる中、彼は近くにあった水道の水を口に含んで痛みを和らげようと行動する。けれどもそれは悪手と言わざるを得ない。彼の食べたそれがどれほど辛いのか僕が知る由もないが、すくなくとも青唐辛子のようなものであったのなら水を飲むのは効果が薄い。これは僕が身をもって経験したことだから信頼してくれてもよいと思うのだが。まあともかく、しばらくすると口内の痛みもおさまったと彼は言っていたので大丈夫だろう。そのかわりに仕返しとばかり雪玉を投げつけられたのには納得がいかないが……
 ちなみに、このとき龍角散が食べた赤い房のブドウのような見た目の植物は、有志が調べたところテンナンショウという植物の一種で、有毒だという。そのことで龍角散はあとあとまで文句を言ってくるであろうが、はてさてなんのことやら。そもそも僕が勧めたわけでもないのになんで僕が悪いことになるのだろうか。納得がいかない。

 そんな彼らとは一時別れ、カワセミやカラスの観察にいそしむ。願わくば、シャコシャコや龍角散・χαοσが音を立てて驚かさないように。そんな願いは珍しく聞き届けられたのか、むしろ僕たちの方がうるさいと言われるような状況。早めに散策を切り上げて、水生植物園の近くにある東屋で早めの昼食をとることにした。
 この東屋、ベンチの他に土足厳禁のまるで舞台のような場所まである。さっそく靴を脱いでそこに上がり込み、寝転がって本を読んだりと好き勝手に過ごす。園内各地へ散った皆が集合するまで。
 そしてやってきた順に昼食を食べ終わったころ、つと下を覗き込んだチーくんの一言によってふたたび場の空気は一変し、水鳥が近くに多数いることを気にして静かにしてきたこれまでの努力は無に帰ってしまった。
 それは、床下から100円硬貨・10円硬貨などが発見されたことが原因で、その報を受けた皆は勇み立って床下に潜り込もうとする。それだけならばまだいいのだが、その床下とは僕たちのいる真下であるため、とても居心地が悪くなってしまう。
 結局そこに居続けることに耐えきれず、はやばやと荷物をまとめて次の公園へと行く準備を整えた。すぐに出発したのだが、そんななかで龍角散がさきほどの毒草の件についてしつこく話をするため、いい加減に面倒くさくなってイマンモと「龍角散は銀河英雄伝説に出てくるどのキャラクターに似ているのだろうか」という話を始めることにした。その結果「ポプラン」ということになったのだが……
 その後はいつものように遊び、いい塩梅にみなが疲れ始めたころ遊んでいた「白金台どんぐり児童遊園」を発ち最後の目的地である目黒川へと向かう。途中の古本屋で吉村昭を見つけて狂喜している間に置いていかれたりもしたが、それ以外には特に何も起こらず無事目黒川・大鳥神社へとたどり着くことができた。

 なお、この「何もなく」は僕個人にとってのものであり、χαοσの悪質ないたずらにひっかかった龍角散が怒りのあまり700メートルほど全力疾走で追いかけまわすという事件があったことも追記しておく。おそらく龍角散の怒りは静かに蓄積されたまま。次の奥多摩合宿でひどい目に合わないことを祈るしかない。

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