フリースクール活動日記 2024/01/17-ドクロ仮面の日常
今回、彼はやってきた。しばらく雌伏の時を経て、再び表舞台に姿を現したのである。あちらこちらから驚嘆の声が上がる。誰何する声も聞こえる。「あれは、だれだッ、だれだッ、だれだッ。あれは、ドクロッ、ドクロマーン!ドクロマーン」なにやら歌うものまでいる。そう、皆の要望にこたえてドクロ仮面が再び教室に現れたのだ。
と、思ったのもつかの間。ふとみんな気が付いた。彼には、あごがない。そんな彼、ドクロ仮面によると紆余曲折のうちにあごが外れてしまったということだ。
なんと。驚きも短く皆はすぐに動いた。よし、直そう。あっという間に教室内から強力瞬間接着剤を探し出し、取れた部分と本体とを接合してしまったのは我ながらいい手際だったとほれぼれしてしまう。もっとも、その際に手を滑らせて補修に参加した僕と龍角散とがそれぞれ手に接着剤をかけてしまうという事故も発生した。もちろん、僕がこうして書けている時点で大事にはなっていないわけだが。
ともあれそんな彼は仮面をつけると性格が一変したかのよう。教室内を走り回り、写真を撮っているもののもとへと現れて飛びかかってくるようにもなった。
恐ろしい。あな恐ろしや、ドクロ仮面。できれば隣を歩きたくはない。とくにそれが外とあらば。なんと道路でも彼は着け続ける。皆の注目を一身に集めながらもまるで動じない姿は誰かに似ている。龍角散?χαοσ?カッパくん?みな、その道に名だたる人々。仮面をつけることで一気に雰囲気までもが変わっていく。
彼は公園でも、これを着けたまま走り回る。「わはははは~。ドクロ仮面、参上!」などと言っていたようにも思えるが、それはより悲惨な結果を誘致しただけだった。公園にいた子供たち―本人申告によると5歳前後とのことだが—が一斉に「がいこつ!がいこつだぁ!」と駆け寄ってきたのだ。よそ様である以上、いつものように投げ飛ばすわけにはいかない。振り払うわけにもいかない。たちまち窮地に立たされた彼は、つと仮面をこちらへ寄こした。
なんと。責任をこちらに丸投げするのか。非道なり。皆がそうして憤る中、ただ一人龍角散だけはその遺志に応える。彼は身代わりとなって、ドクロ仮面として彼らを誘導していった。仮面をつけているだけで、なんらかの事態に巻き込まれることになろうとは。ああ恐ろしや、ドクロ仮面。
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