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【宮部みゆき風】青椒肉絲のつくりかた
あたしがチンジャオロースを作るなんて、ちょっとした意外な展開だけど、まあ、やってみる価値はあると思ったのよ。
あたしの手元には、さっきスーパーで買ったばかりの牛肉、青々としたピーマン、それに水煮の筍がある。
これを切りそろえて、あのちょっとこってりした、でもどこか素朴な味の中華料理に仕上げるんだ。
さて、まず牛肉。これは細切りにしなくちゃならない。何でもそうだけど、細かい作業をさっさと済ませたほうが、後が楽になるからね。
包丁を持つ手を慎重に動かして、均等な細切りになるようにする。あんまり不揃いだと、火の通りが違っちゃって、食べたときに微妙に感じるもんだから。
細切りにしたら、牛肉には下味をつける。醤油小さじ1に、酒小さじ1、片栗粉をひとつまみ加えて、手でそっと揉みこんでやる。
こうすることで、火を通したときに肉の旨味がしっかり閉じ込められて、外がほんのりカリッとした食感になる。これが、ただの炒め肉と一味違うところだとあたしは思ってる。
次はピーマンと筍。これも牛肉と同じように細切りにしておく。特にピーマンは、火が通り過ぎると色が変わって元気がなくなっちゃうから、ちょっと太めくらいで切ると、見た目も味も良くなるってわけさ。
さて、いよいよ炒めの段階だ。中華鍋を強火で温め、サラダ油をひとまわし。ここにまず牛肉を投入して、一気に炒める。
火力をしっかり強めにしておくと、肉の外側だけがぱっと焼けて、旨味がしっかり閉じ込められる。牛肉の色が変わったところで、一度取り出しておく。
鍋にもう少し油を足して、今度はピーマンと筍の出番だ。これも強火でさっと炒めるんだけど、ピーマンの色が鮮やかになるくらいがちょうどいい。
具材がほどよく火が通ったら、さっきの牛肉を戻して、醤油大さじ1、オイスターソース大さじ1、そして砂糖を少々。この組み合わせがなんとも言えない深い味わいを生むのよ。
仕上げに全体をさっと混ぜ合わせたら、すぐに火を止めてお皿に盛る。これで出来上がり。
チンジャオロースがこんがりと湯気を立てて、なんとも言えないおいしそうな香りが部屋に漂う。この香りがあたしにとってのささやかな報酬だって思うのよ。