見出し画像

『余命10年』を読んで

どうも、あめりぃです。
今回は久々に感動した小説を紹介します。

タイトルは『余命10年』。
よくこういった登場人物に余命がある話って出てきますけどこの話は少し格別です。ではこの作品について述べていきましょう。

まず何故10年なのかを考えてみてください。もし物語を創る上で余命の設定を入れるならここまで寿命を伸ばすでしょうか?
どう考えてもこの10年という設定は「感動」を重点に考えるならあまりにも長すぎると思います。そこまでやると話がダレてしまって、伝えたいことが伝わらないと思うんですよ。

でも作者は敢えてこの設定にした。それは何故なのか。

実はこの作品の作者の方はこの小説が発売する直前に病魔に侵されお亡くなりになっています。ここからは僕が実際に読んでみての推測なのですが、作者は主人公の茉莉(まつり)に自分を投影していたのではないかなと思うんです。
それを裏付けるようにこの小説には以下の特徴があります。

・ずっと主人公である茉莉の視点で話を進める

・話の中では茉莉の行動や態度を描写し、章終わりに必ず心情を描写

・入院等の具体的なシーンの描写をリアルに


この三つの描写方法によって終始茉莉の生き様がリアルに描かれています。友達との関係や病気による孤独感、自暴自棄になって人に刺々しくなる茉莉など次々と心情があらわになっていきます。そこには何も美化がなくて辛い場面ではただただ辛くなります。

でも辛い場面ばっかりでもなくて、幸せを掴む為に努力する主人公の姿もこの作品の魅力の一つです。恋をしたり、趣味に没頭したり。限られた命の中、懸命に生きる茉莉の物語に心が温まります。

多分作者は「なぜ生きるのか」自分に問いながらずっと書いていたんだと思います。章の終わりに茉莉の心情描写を描くと述べましたが、これはどうも作者自身の人生観のように見えるのです。そう考えると物語に出てくる場面も実際に体験したんだろうなと…とても考えさせられます。


なんと作者の小坂さんはこの作品が最初で最後の作品となったらしいです。この作品が世に出て本当に良かった。世に作品のメッセージが伝わっただけで作者の心は救われたと思います。

人に優しくなれるオススメの一冊です。是非本屋で見掛けたら読んでみてください。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?