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「自募」第一章
「誰か一緒に死にませんか #自募 」
その言葉が画面に並んでいる。
スマホを握りしめた手が汗ばむのを感じながら、俺はじっとそれらの投稿を眺める。どれも同じだ。誰かが死にたいと言い、誰かが同意する。それだけ。
「自募」と検索欄に打ち込むのは、もう何度目だろう。
俺が最初にこれを検索したのは、高校に入ってすぐのことだった。
それ以来、何度も何度も「死にたい」と書かれた投稿を探し、それに返事をしてきた。返事をした相手と実際に会ったこともある。けれど、結局、俺はまだ死ねていない。
なぜだろう?
いつもその答えが見つからない。
昼間、学校では普通を装っている。
特別に仲の良い友達がいるわけでもないが、適当に話を合わせて笑っていれば、孤立はしない。家では親に「元気?」と聞かれれば「まぁまぁだよ」と答える。彼らはそれ以上の詮索をしない。俺の顔を見て、何も感じないのだろう。
でも本当は、誰とも繋がっていないように感じていた。
スマホの画面を指でスクロールする。
「死ぬ方法を考えています。一緒に実行できる方、DMください。」
そう書かれた投稿を見つけると、俺は迷うことなくそのアカウントにメッセージを送る。
「はじめまして。俺も死にたいと思っています。」
送信ボタンを押した瞬間、心臓が少しだけ早くなる。毎回そうだ。この瞬間だけ、少しだけ生きている実感が湧く。それが心地いいのかもしれない。
その夜、返信が来た。
「宮崎からです。こちらに来ることはできますか?」
投稿主は、俺と同年代の女性らしい。短い文面からは、何を考えているのか分からない。でもそれでいい。俺も、自分の考えが整理できているわけではないのだから。
「分かりました。行きます。」
そう返事をしてから、ベッドに横になる。明日の学校のことも、親の顔も何も考えたくない。ただ、この約束が、俺の中にぽっかり空いた穴を埋めてくれるような気がした。