臭い物にはナベブタを。
先日発覚した未成年による暴行事件について、捜査関係者から新たな情報が明らかになりました。
この事件は、SNSに投稿された映像がきっかけとなり発覚したもので、映像には加害者である少年(17歳)が同級生である少年(17歳)に対して暴行を加える様子が鮮明に映し出されていました。
映像内で加害少年は「全部お前のせいだ」と叫びながら何度も暴行を繰り返しており、その一部始終が数分間にわたって記録されていました。通行人が現場を目撃し、通報したことで警察が現場に急行。少年はその場で現行犯逮捕されました。
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空き巣犯
静かな住宅街の一軒家。深夜の闇に溶け込み俺は黒手袋を着け、玄関の鍵をいつものようにこじ開けた。南京錠やチェーンが必要以上に大袈裟に掛かっていたが、俺には慣れたものだった。
生活感のある家だが、数週間観察し、住人の留守は確認済みだ。こんな時に限って住人が戻ってくることはまずない。
靴を脱がずに上がり込み、念の為足音と息を殺してリビングへ向かう。テレビも消えているし、照明もついていない。物音ひとつしない空間が広がっていた。
「楽勝だな」
心の中でほくそ笑んだ。この手の古びた家は金目の物を見つけるのがとても容易い。俺は手早く物色を始めた。引き出しを下から開け、中身を漁る。封筒があれば、手持ちのライトで透かして中身を確認してバッグに入れる。
そこまではよかったんだ。しかし、そんな俺の日常を壊すかのように、背後で微かな音がした。
振り返ると、そこに女が立っていた。
白いシャツに乱れた髪。俯いているせいで顔はよく見えないが、全身が妙に青白く、まるで光を反射しているように見える。
「なんだ、お前。いつから居た。」
一瞬、心臓が跳ね上がったが、冷静に考えれば住人が急に帰ってきただけかもしれない。ナイフをおもむろに取り出し、威嚇しようとするが、女はピクリとも動かない。
「おい、聞いてんのか?」
俺が一歩近づくと、女がゆっくりと顔を上げた。目が合った瞬間、全身の毛が逆立つ。女の目は妙に虚ろで、口元には薄い笑みが浮かんでいる。
「寒い」
低い声が耳元で響いた気がした。その場から逃げ出したい衝動に駆られたが、足が動かない。
次の瞬間、女の視線が俺の横へ向いた。俺もつられて目を向けると、リビングの奥にある扉が半開きになっていることに気づいた。
「な、なんだよ?!」
恐る恐る扉に近づき、中を覗き込む。
ギョッとした。そこには首を吊った女の遺体があった。
さっきの女と同じ白いシャツ、同じ髪型、同じ青白い顔。
混乱と恐怖が押し寄せる中、背後から冷たい風が吹き抜けた。振り返ると、さっきまで立っていた女の姿はどこにもない。
「嘘だろ…」
俺はその場を飛び出し、玄関をめちゃくちゃに開け放って外へ逃げた。心臓が爆発しそうなほど鼓動が速く打つのがわかった。
それ以来、俺は空き巣を止めようと決めた。だけど、あの白いシャツの女の顔が、夜になるとどうしても頭から離れない。
彼女が「寒い」と言った意味を、俺は考えるのも怖くてできないままだった。
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高校生(17)
昼休み、教室の隅で俺は椅子に座り、登校途中にコンビニで購入したちぎりパンを食べていると友人が話しかけてきた。
「なあ、聞いた? この近くで空き巣があったんだって」
「へぇ、空き巣」
俺は適当に返事をする。
「そう。しかも犯人捕まったんだけど、めっちゃ怯えてたらしいよ」
「怯えてた? 強盗の癖にバカだな」
俺が笑いながら言うと、そいつも笑い返し、こう続けた。
「今朝も警察来てたらしいぜ。母ちゃんが見たって言ってた」
「なんで?」
「知らねえよ。でも、まだなんかあんじゃね?」
くだらない話だと思いつつ、俺はふと窓の外に目をやった。遠くに川沿いの古びた家が見える。小さい頃、あの家の近くで遊んでたら、親に「危ないから行くな」と怒られたことがあったのを思い出す。
「お前さ、あの家、去年引っ越しトラック来てたとか言ってたけど、本当だったの?」
「マジだって。俺、家具運び込んでるの見たもん。でも、いつの間にか誰も住んでないっぽいよな」
「そんで、その家が空き巣に入られたって?」
「まあ、そういう話だろ」
何か腑に落ちない感じがしたけど、結局俺はそれ以上追及する気もなく、話を終わらせた。
「高橋!」
突然、教室の前から先生の怒鳴り声が飛んできた。
「お前、掃除当番だろ! さっさと行け!」
「クソ、バレてんのかよ」
机の上から降りたそいつが肩をすくめ、眉間にしわを寄せながらも少し笑った。
「じゃ、俺行くわ」
「頑張れよ」
そいつが出て行ったあと、俺は自分の席に戻って昼飯の続きを食べ始めた。教室内の空気がいつもと同じように続いているのを感じ、空き巣の話はしだいに記憶から薄れていった。
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俺たちの仕事はいつもと変わらない。ただし、今回は少し面倒なことになりそうだった。
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