ブカレスト留学 Week5-フランスとトルコが出会う場所
ブカレストにもハロウィンがやってきました🎃ブカレストのハロウィンはどんな感じだったのか、ハロウィン特集の記事も出すのでそちらもぜひご一読ください!今回は、ブカレストで生活する中で見ることができる、ルーマニアへのフランスとトルコの影響を、地理的・歴史的背景や現在の移民にも触れながら話そうと思います。
街中に見るフランスの影響
ブカレストは"Little Paris"、「小さなパリ」と呼ばれることがあります。1880-1900年代に建てられた建築には、フランス建築の影響が顕著に現れています。特にOld Townと呼ばれる地区にはこの時代の建築が多く残されています。下の4つの写真の建築は全てOld Townのもので、どれもこの時代に建てられました。
下の写真はThe Romanian Athenaeumというコンサートホールで、Old TownからCalea Victorieiという通りを北に登った地区にあります。フランスの建築家によって建てられ、長方形の建物の中に円形のホールが設置されています。正面に見えるポーチは、ネオ・ギリシア様式の柱で支えられたPortico(ポルチコ)というデザインです。近隣の街並みも合わせて、この一角はパリ風の雰囲気を漂わせています(Celac.et al., 2019, 65)。
そしてこちらはルーマニアの凱旋門です。元々は、後述する1878年の独立戦争から帰還する部隊を迎えるために建てられ、その後第一次世界大戦や割譲された地域を含めたGreater Romaniaを祝す目的でも使用されました(Celac.et al., 2019, 151)。
フランスの影響は言語にも表れています。宗教は東方正教会を信仰する地域であるにもかかわらず、言語はキリル文字ではなくラテン文字を使用しロマンス諸語に分類されます。フランス語からの借用も多く、「ありがとう」の言い方の1つとしてフランス語の"Merci"から由来する"Mersi"を使うこともできます。
街中に見るトルコの影響
地理的にもトルコと近いルーマニア、街中はトルコの伝統的なスイーツであるバグラヴァのお店やストリートフードのケバブ、トルコ料理のお店を数多く見つけることができます。ブカレストではシーシャ(水たばこ)が非常に人気で、トルコ料理のお店でシーシャを吸うことができたり、シーシャカフェがあったり、さらには驚くことに、たばこ屋さんの感覚でシーシャを買うことができるシーシャ屋さんがあります。ルーマニア語の語彙にはトルコ語に由来する単語も存在します。
現代では、トルコよりも経済状況の良いルーマニアに労働者としてやってくるトルコ系移民も多く、上の写真のトルコ料理フードコートではトルコ系の方々が集まっていました。
なぜフランスとトルコの影響があるのか?
では、なぜルーマニアにはフランスとトルコの影響が多く見られるのでしょうか。これには歴史が関係しています。1877-1878の露土戦争(ルーマニア視点ではルーマニア独立戦争)で独立を獲得するまで、ルーマニアはオスマン帝国の支配下にありました。独立以前、ライバルであるハプスブルク家の力を削ぐために、ハンガリーの抵抗勢力をルーマニアを利用して刺激したいナポレオンIII政権下フランスと、オスマン帝国からの独立を渇望するルーマニアの思惑が一致した形で、非常に近い関係にありました。当時は多くの若者がフランスに移住しており、のちに政治家としてナポレオンIIIの協力のもと近代ルーマニアを作り上げていきます。
独立後の1880-1900の建築は、パリのÉcole des Beaux-Artsの卒業生である建築家によって建てられ、fin de siècle(英語でturn of the century)という19世紀のフランスアートに起こった潮流を汲んでいます(Celac.et al., 2019, 11)。
言語に関しても、18世紀にアルファベットをそれまでのキリル文字からラテン文字に、スラヴ語やトルコ語などの影響をラテン語やフランス語からの借用に改めたようです。
フランスとトルコが出会う場所
Old Town にあるLittle Paris という個人経営の美術館では、19世紀から20世紀の、フランスとトルコの影響を受けたルーマニアの当時のブルジョワ階級の家を再現しています。
オーナーは私たちに語ってくれました、Little Parisはフランスとトルコが出会うところだと。
おわりに
今回はブカレストの街中にみるフランスとトルコの影響を紐解いてみました。長めになってしまいましたが最後までお付き合いいただきありがとうございました!
参考文献
Celac. Mariana and Octavian Carabela and Marius Marcu-Lapadat, 2019, Bucharest Architecture an Annotated Guide, Bucharest City Hall through AMPT Bucharest=translated by Alistair Ian BLYTH
Foundation Napoléon-Publication, Abel Douay, Gérard Hertault: Napoléon III et la Roumanie (Napoleon III and Roumania)
(https://fondationnapoleon.org/en/publication/abel-douay-gerard-hertault-napoleon-iii-et-la-roumanie-napoleon-iii-roumania/ 2024.11.02)
Ministry of Foreign Affairs-Home, 150 Years of Modern Romanian Diplomacy (1862 – 2012)
(https://www.mae.ro/en/node/16926 2024.11.02)