『倉橋惣三物語 上皇さまの教育係』
初めての記事は、私が大好きな作家さん・倉橋燿子さんの作品について書こうと思います。
『倉橋惣三物語 上皇さまの教育係」(講談社刊)
倉橋燿子さんの最新作です。
とっても感動しました! 面白いし、泣ける。
明治~昭和の時代観もリアルで、読み終えた時には、
惣三さんと一緒に駆け抜け、バトンを受け取った感じがありました。
倉橋惣三って誰?
私も初めはそう思いました。
近代幼児教育の父とか、日本のフレーベルと呼ばれている人のようです。
倉橋さんは、惣三さんのお孫さんと結婚され、今回ひ孫である娘の麻生さんと、この本を書かれたそうです。
私にとって幼児教育は縁遠い業界ですが、物語を読んだら、近いか遠いかなんて関係ない!と思いました。
かつて自分自身も子どもだったわけですから。
自分が子どもの頃、惣三さんのような人が近くにいたら、どんなに良かっただろう。
こんなふうに、自分のことを見てくれる人、可能性を信じてくれる人がいたら、自分のことをこんなに否定したりせず、もっと人を信じられるようになった気がします。
それは、倉橋燿子さんの作品を読むといつも感じる気持ちです。
倉橋さんの作品に登場する主人公達は、試練があっても乗りこえて、自分の人生を見つけたり、家族や友人との絆を結び直したりしながら成長していきます。
主人公と環境や境遇が違っても、自分と重なる部分やヒントになるシーンが必ずあるのが倉橋作品です。
それは、この惣三さんのお話も同じでした。
引っ込み思案でいじめられっ子だった惣三さん。
恋愛にもオクテだし、不器用で運動音痴。
ですが、どこまでも正直で一途な惣三さんなんです。
自分とおんなじなんだって、人間くさくて大好きになりました。
そして、人間関係の難しさや、親子の問題、自分の人生の目的…。
誰もが悩んだり、不安になったりすることに対して、惣三さんも向かい合っていきます。
そして数々の珠玉の言葉を残しています。
自ら育つものを育たせようとする心。
それが育ての心である。
世にこんな楽しい心があろうか。
それは明るい世界である。温かい世界である。
育つものと育てるものとが、
互いの結びつきにおいて相楽しんでいる心である。
(育ての心)
子供を偉大なものにこしらえ上げようというのではない。
この子供が偉大なるものになることを信じて教育するのである。
この子が日蓮になるかもしれない。
この子がベートーベンになるかもしれない。
私は驚き、後ずさりしてその子供を見る。
(人間の偉大さを)
読んだ人一人ひとりの人生に響く物語だと思います。
ぜひ、オススメです!
倉橋惣三協会 作品紹介ページ
倉橋燿子先生 公式サイト