季節の匂い
外を歩く
人の気配が無い道に出たら
マスクを外し呼吸をする
今朝の雨で湿った木々を
秋風がさらって
優しい緑の匂いがした
ああ。世界には空気には
匂いがあったんだったな。
夏の匂いが流れてくれば
あの日の帰り道や
夏祭りの花火が脳裏に浮かぶ
冬の透き通った匂いが通れば
二人並んで歩いたことや
夢中で読んだ
あの漫画のワンシーンが浮かぶ
今マスクが日常着となったこども達は
大人になったそのときに
こんな風に記憶の引き出しを
開くことはあるのだろうか
一瞬寂しさを感じたけれど
きっと違う
いつか必ずマスクを外した時
世界には空気には
こんなに匂いがあったのだと、
彼らは驚くことだろう
そんな日を願うのである