親知らず抜歯レポ 1本目

1本目と書いてはいるが全然2度と抜きたくない。

ちなみに私の歯には1箇所、乳歯の下に永久歯が生えていないという恐怖のインプラント予備軍が存在しているのだが、親知らずはきっちり4本生えている。つまりもうスリーチャンス巡ってくる可能性がある。
あまりにも人体構造の敗北である。

抜歯経験は歯列矯正のために2回あり、虫歯が絶えない最悪体質なので(歯磨きに欠落があるとは考えていない)虫歯治療もしょっちゅう。麻酔もそこそこの数を経験している。
とはいえ、怖いものは怖いのだ。

かかりつけの歯医者でも抜歯は可能と言われたが、自費治療対応のため2-3万かかるそうで、市内の大きい病院か電車で数駅先の大学病院かに紹介状を書くことを提案される。
電話したところ、市内の病院は3月まで予約が埋まっているとのことで、とりあえず就職までに事を終わらせたかった私は、少し遠いが大学病院で抜くことを決断した。

日程を決めに年明け早々病院を受診。
初めての大学病院、とにかくデカくて人が多い。
受付やレントゲン諸々を済ませて待合室で待っていると、自分の番号が呼ばれる。
フロアの中は特に仕切りなどもなく、一般的な歯科と同じような施術椅子が6台ほどワンフロアに並べられていて、ひたすら機械のギーーーーンみたいなドリル音が鳴り響いている。
もっと個室スペースのようなものを想像していたので、思いのほかカオスな環境に驚く。
私は、その隅の一角に座らされて簡単なレントゲン説明と注意事項確認、誓約書の記入を行った。

私の手術担当をしてくれるという先生は、マスク越しだと今をときめく大谷翔平似の好青年だった。歳も20代後半に見える。
だが若人に対して技術力の不安を抱く最低人間の私は、「本当にこの人で大丈夫なんだろうか……私自身がガキだから病院側に舐められてるんじゃないだろうか……」と失礼極まりない被害妄想を胸に帰路についた。

そこから2ヶ月程。
いよいよ抜歯当日である。

前日は緊張、いや武者震いでちっとも眠れず、目の下にデカいクマを携えて病院へ向かった。

出血が止まらないなど不測の事態のために、一応母親も同伴してくれた。「何かあっても輸血してあげるからね!」と謎の励ましを受ける。

待合室で15分ほど待機していると、自分の番号がパネルに表示され、その先にある中待合へと呼ばれる。そこでまた5分ほど待機。
すると、看護師さんに名前を呼ばれ、いよいよ術台へと案内を受けた。ガクガクしながら椅子に座り、いよいよか……と覚悟を決めると「すみません!順番を間違えました!」と言われ、再び中待合へと戻される。

おい!


そこからさらに待機すること20分程。
再び名前を呼ばれ、さっきはごめんなさいと謝られながらもう一度術台へと座った。
本当の本当に本番である。

「あの……すごい怖くて緊張してるんですけど」と情けない申告をする22歳。固くなっちゃうと逆効果だから力抜いて鼻から深呼吸ねー、とごもっともな返答が返ってくる。

最初は麻酔。
麻酔はまあまあ慣れっこだと思っていたが、まずこれが思ったより痛かった。
歯医者の麻酔は徐々に徐々に長期戦で攻めてくることが多い印象で、痛み自体はそこまでないが注射している時間が長く、ゆったりじっくりしているイメージ。
反対に今回の麻酔は、あらゆる箇所に素早くグサグサと打っていく。おそらく液を押し出してる時間は3-4秒くらいなんじゃないだろうか。
加えて、今まで自分が通ってきた歯医者はタオルなどで目隠しをされることが多く、何をされているのかをあまり知りたくない・ゴツゴツとした器具を目にしたくない私としてはその方が有難かったのだが、この口腔外科では一切目隠し無しだったため、ガッツリ目の前に銀光りしたデカい注射器がある。これが精神的には結構キツかった。

麻酔が終わると数分ほど椅子で待機。
その間、看護師さん(歯科助手さん?)と担当の医師の人が軽く雑談をして緊張を和らげようとしてくれる。完全にATフィールドを展開している私の緊張は全く和らがなかったが、その心遣い自体はとても有難かった。

そしていよいよ始まる抜歯。
あまりの恐怖に、まさにまな板の上の鯉の如くピチピチと細かく痙攣する22歳女性。
情けない痴態をさらすこの生き物にも、看護師さんは「大丈夫だよ〜ちょっとだけ我慢しようね〜」と言いながら肩をずっとさすってくれていた。ランドセル背負ったガキか。

「痛かったら手挙げて教えてね」という、「月に代わってお仕置きよ!」ばりの歯医者お決まり文句とともに施術スタート。毎度思う。痛くなってからじゃ遅いのである。

具体的な過程をはっきりとは覚えていないが、最初は歯茎を切って、そこから見えた親知らずをどうにかこうにか抜く予定だったと思う。
しかし、「押される感じするよ〜」との指示を受け、しばらく抜こうと苦闘した後に、「うーん やっぱり割ります」と宣告された。

割る!?!?

「割る」なんて事態をこれっぽちもイメージトレーニングに加えていなかった私はここで完全にパニックになる。想定していた事態と違う。

ここからが本当に怖かった。

「割る」宣告を受けて半泣き状態になった私に、先生は「それじゃヒビを入れていきま〜す」と話す。
言い忘れていたが、この先生はとにかく今から何をするかを術中事細かに説明してくれるタイプの方で、逆にそれが私の恐怖を助長していた。

ヒビを入れる過程では、ひたすらドリルがギュイーーンギュイーーンと響く。そんなに一気に歯って削ってええんか!?と腰が抜ける勢いで削られる。
あと、この前後に「ちょっと骨削るね〜」というどこの骨を!?な骨削りタイムも存在したのだが、これもかなり怖くて、しかもちょっと痛かった。ここで初めて手を挙げて、麻酔追加。麻酔も痛い。どうすりゃいいのん。

ある程度削ってヒビを入れたあと、人力で割る作業がある。めちゃくちゃ力を加えられている感じがあり、ドリルタイムほどではないがここもここで怖い。
しかし、歯がどんだけ硬いのかちっとも割れず、「ごめんもうちょっと削るね〜」からの「割ってみるね〜」というのをかれこれ4サイクルくらい繰り返す。年単位のアニメか。

その後、ようやく歯が割れたようで、最後に糸で縫合し抜歯終了(実はこの過程もちょっと痛かった)。
総合して大体30-40分程度だったと思う。
始終ガクブル痙攣しながら迷惑をかけっぱなしだったため、平謝りしながら感謝を述べ退室。
大学病院ほど大きい施設になると、お医者さんも看護師さんも結構冷徹なのでは、と勝手に想像していたのでお二方の対応に非常に救われた。本当にありがとうございました。

術後4時間経過した辺りから、ロキソニンを飲んでいるとは言えやはり痛みが出てくる。でも、2日経った現在でもなお、我慢が出来ないような強い痛みは起きず、その日も特に眠れないなどと言うことはなかった。

2日目になると確かに抜歯した右頬は腫れたが、パッと見ではわからない程度。アザのような変色も特にない。
消毒のために向かったかかりつけの歯医者でも、2日目にしてはたいして腫れていないし出血もしていないとのことで、ここで担当してくれたお医者様の腕の良さを実感。若人とか疑って、大変申し訳ございませんでした。次も抜くなら是非、貴方にお願いしたいです。

食事はまだ固形物や熱いものは極力控えているが、2日目になってからはケーキやドーナツやマドレーヌが食べられるようになってきた(おしまいの食生活)。
とはいえ、抜歯当日は何を食べればいいか悩む人もいると思うので、1日目に重宝した食事ラインナップを載せておく。

・ウイダーinゼリー(最初に口に入れたのはこれ)
・プリン(固形のじゃなく飲み物みたいななめらか系プリン)
・豆腐麺
・ぬるめの具無し味噌汁
・温泉卵
・プロテイン

この辺が流動食に近くて口にしやすかったので良かったら参考に。

もうしばらく抜きたくはないけど、普通に左下も腫れがちなのでもう時間の問題である。
でも抜いた方がいいっぽいのは間違いないので、みんなも適度に抜いていこう!
素敵なハッピー親知らずライフを。

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