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『雨あがりのかぼちゃ畑』
かぼちゃ畑に雨が降った次の日、
母さんは僕にさよならを言うことに決めた。
なぜなら雨が降った次の日の畑は、何もかもが美しくて
生きる希望に満ち満ちているからだそうだ。
「ヒトリダチ」するのには絶好のチャンスなのだと。
雨上がりの空みたいな笑顔で手を振っている母さん。
僕は何度も振り返りながら、葉っぱから葉っぱへ
まだ、ほんの小さい6本の足を一生懸命動かして歩いた。
最後に後ろを振り向いたとき、そこに母さんはもういなくて
しかたなく足元の葉っぱを少しかじって
母さんと二人で暮らした穏やかな日々を思い返したりした。
新しい葉の上にひょい、と飛び乗ると、
重みで、たまった雨の雫が流れてきた。
雫のカプセルに包まれると
どこまでも続くかぼちゃ畑はキラキラと、まあるく映って見えた。
ぶるっと身体を震わせる。
くだけた雨粒が、まるで花火のよう。
空は青く高い。
今日はどこまで行こうか。
僕は、どこまで行こうか。
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