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【孫子】の最強戦略
今から約2500年前という大昔に書かれたものにもかかわらず、現代でも絶大な影響力を誇る古典がある。
それが兵法書の【孫子】だ。
日本の経営者にこれはという教科書はないが、みんな同じような発想をしている。
それでいながら欧米から見ると、全体的にはなるほど深い意味がある事を、欧米とは違った論理で、無意識のうちに行なっている。やはり何か大きな影響を与えたものがあるのではないかと思っていた。そうこう考えて調査しているうちに、たどり着いた書物が【孫子】だった。
そこで、アメリカの出版社と共同で【孫子】の英訳を進めたが、諸般の事情で刊行されなかった。
スポーツに目を向ければルイス•フェリペ•スコラーリ監督がいる。2002年日韓共催のワールドカップサッカーで、ブラジルチームを率いて優勝させ、次の2006年大会では、ポルトガルチームを率いてベスト4入りを達成。
ワールドカップ本戦十一連勝という空前の大記録を打ち立てている。彼にはこんな記事がある。
【ポルトガルの宿舎では毎晩、孫子を読みふけるフェリペ監督の姿がある。
ブラジルを率いた02年日韓大会では全選手に手渡し、宿舎の壁にも印象深い言葉を張り出した。】
ロナウドや、ロベルトカルロスといったスーパースターが、【孫子】を読んだと。
他にも、プロ野球の長嶋茂雄元巨人軍監督が現役の監督だった時にスタッフ一同の前で【孫子】を提唱してみせた、という報道がなされていた。
長嶋氏といえば、野生のカンが有名だが、勝つための戦略思考を身につけつつも、あえてエンターテインメントとしてのプロ野球を極めて行った点に、彼の凄みはあったのかもしれない。
軍事においては、1990年から湾岸戦争において、多国籍軍総司令官だったシュワルツコフ将軍が次のように評している。
【孫子を読んでいたシュワルツコフ将軍は湾岸戦争で新しいことは何もしなかった。軍事理論を学び、名将の戦法に魅せられていた将軍は、21世紀の科学技術を用いて古代の知識を実施した】
このようにジャンルに問わず、現代の勝負師や名経営者を虜にする卓越した戦略を描き切っているのが【孫子】という古典である。
【方向性と原理原則】
【孫子】をはじめとする中国古典を勉強していく上で、
「古典を活用する為には、抽象度を上げて考えることが重要」
という考えに対して、「学校の時から今の会社至るまで、「もっと具体的に」としか言われていないなと。物事を抽象的に考えろ、と初めて言われた。」と。
学校でも会社でも、与えられた課題をこなすなら、具体性が何より武器になるだろう。
例えば営業で成績を上げたければ、古典を読むよりも、「100倍売れるセールス法」とか、「営業で成績を上げるコツ」と言った、具体的なマニュアル本でも読んで実践する方が、成果への早道になる。
しかし現代では、
•先が見えにくい時代
•グローバル競争が広がり、加速する時代」
言葉を変えれば、未来に対する具体的なマニュアルを極めて持ちにくい状態になりつつある。
特に組織の中で出世したり、
自分の方が仕事を作り出し、与える立場になるという意味で、
個人や自営で生き残る必要があるような時、この傾向は強くなる。
これを旅で例えるなら、手元に「子供の手書きのような地図」だけ携えて、険しいジャングルを抜けようとするような状況に近い。
進まなければ死を待つばかりだが、「詳細な地図付き旅程マニュアル」など誰も持っていない。
こんな場合に何より必要になってくるのは、
「あっちの方向へ進めば何とかなるはず」
という方向性の感覚と、
「水がないと人は死んでしまうので、水の確保を最優先とする」
といった、競争状態での原理原則の数々に他ならない。
逆に、
「今まで直線ルートで進めば大過なかったら、今後もそうしよう。」
といったように、過去の成功体験を安易に未来に当てはめるのは最も危険な行為にしかならない。
状況が刻一刻と変化している以上、一つ前の法則が次に当てはまる保証などどこにもないから。
では、どうすれば「方向性」や「競争状態での原理原則」の感覚が養えるのだろうか。
そのうってつけで、
「方向性」であれば「歴史書」
そして、
「競争状態での原理原則」であればまさしく【孫子】になる。
【実践家に必要なのは「応用の才気」】
「孫子」は、日本でいえば縄文時代と弥生時代の移行期に書かれたと言われている。
当たり前だが、現代とは時代も違うし、時代背景も違う。現代のビジネスや人の生き方に応用するにしても、前提条件が全く違う。
つまり、「孫子」を自分にとっての叡智として吸収する為には、
「簡単に言い直せばどうなるのか」
「より一般的に表現するとどうなるのか」
といったように、まずは抽象度を上げて考えなければならない。
かつ、
その上で望ましいのは、
「孫子にはこんな原則があるが、現代では通用しないのではないか」
「自分の今までの経験から言えば、この指摘は逆になるのではないか」
と、
その抽象化した内容にツッコミを入れ、
「その原則が成り立つ前提条件とは何か」
「成り立たない状況での戦略とは何か」
と考える事。
これによって、初めて、
「競争状態での原理原則」の感覚は涵養される。
もちろんこれは難しい。
慣れていないと。
特に今まで「具体的に」としかいわれてこなかったような方であれば尚更。
実はここまで執筆したのと同じ観点から、
維新の西郷隆盛が次のような言葉を残している。
「漢学を成せる者は、いよいよ漢籍に就て道を学ぶべし。道は天地自然の物、東西の別なし、当時万国対峙の形成を知らんと欲せば、春秋左氏伝を熟読し、助くるに孫子を持ってすべし。当時の形成と略ぼ大差なかるべし」
「春秋左氏伝」とは、
中国の春秋時代を描いた歴史書のこと。
明治時代というのは、現代と全く同じく、グローバル化と列強同士の争い。
軍事と経済という違いはあるが、
という2つの大きな激流に直面していた。
そんな先が見えない時代への対処のために、まさしく西郷があげたのは、「方向性」と「競争状態での原理原則」を涵養する為にうってつけだった。
さらに、日露戦争時の日本海戦で、バルチック艦隊を破る原動力となった参謀•秋山真之にもこんな言葉がある。
大意をつけて説明する。
戦略や、戦術の原則、海上も陸上も同一である。
ただ使う手段だけが異なっているに過ぎない。だから、陸軍戦術から海軍戦術を割り出す事も可能となる。この点で、応用の才気のない者は、どんなに戦術を研究したところで、ただ単に口や文章だけの学者にしかならず、実践家になるのは難しい。
われわれが持つべきはこの「応用の才気」に他ならない。
それが評論家ではなく、実践家として成果を上げるみたいなのだ。
このNoteでは、
•孫子の戦術
•孫子は何が言いたいのか
•孫子は現代でも活用可能なのか?
について投稿していこうと思う。
是非これからの時代を戦略的に勝ちぬいていきたいと思う人は記事を読んで行っていもらいたい。