【Playlist】RadioAmbient : Sea and Mountain Nakahara Chuya Requiem Mix 21 Sep 2024
RadioAmbient : HelloTaro名義にて、2024年9月21日(土)に神奈川県鎌倉市のNIHO kamakuraにて開催された手作り音楽フェス「海と山」会場でのDJイベントでライブミックスした楽曲をマスタリングなど編集調整の上で公開します。これは、1937年10月(昭和12年)に鎌倉の地で客氏した詩人・中原中也に捧ぐための、鎮魂曲によるラジオ番組をテーマに制作されたものです。
RadioAmbient : Sea and Mountain Nakahara Chuya Requiem Mix 21 Sep 2024
at Kamakura ※リンクからお聴きいただけます
当初、DJイベントを予定していた会場は中原中也の終の棲家となった寿福寺の対面、また中世の墓地「やぐら」遺跡の横穴を望む庭に隣接する立地だったのですが……実際は中原中也の死の直前、1937年10月5日に転倒した鎌倉駅前広場近くのNIHO kamakuraに会場が移動し開催しました。
そのことは、選曲中に寿福寺から鎌倉駅までの道のりを、1937年の中原中也の視線を考えながらブラブラと移動するという、新たなイメージを身体的に獲得する経緯になり。また同時に中原中也生前の日記などの資料や鎌倉で書かれた作品を読み直すことで、詩人が歩いた鎌倉という土地をめぐる、目に見えない地霊や空間の記憶、戦前と現在との時間を、音楽を通じて新たに立体的に書き出すような作業が、いわば予想外に発生したのですが。
そもそも中原中也の詩作品には、近年の異世界アニメ的な観点というか没入ゲーム的というか、別世界と現実、死者と生者、幼児と大人などの境目を折り紙のようにシャカシャカとひっくり返して造形するような性質もあって。
「死んだ中原」が焼かれ小林秀雄が見送った名越の火葬場など、散歩などで日々歩き見慣れているはずの土地の風景の奥に、ぎょっとするような死の意匠と記憶が存在することを、いわば詩的な認識を通じて視覚的に感じられるようになるなどの、不思議な認知が獲得されて。
この認知による鎌倉再発見は、楽しい児戯のようでもあり背筋が凍るホラー映画や恐怖漫画のようでもあり。神の視点と他人がすべて骨に見えてしまう初老の男のモノローグで編まれた作家・深沢七郎による「無妙記」にも近い感覚があるのだが。もしかしたら深沢七郎のこの短編は「恰度(ちやうど)立札ほどの高さに、骨はしらじらととんがつてゐる。」という中原中也の「骨」をベースにしているのではとも考えるが閑話休題。
音響面では、もともと古楽ネタで人前でDJをするという、個人的に30年前以上前に思いついて温めたり試しては失敗したりしているアイデアがあり。当初は西洋の古楽の追悼歌と讃美歌、ドローンや環境音を中心に選曲していました。
ただ、2024年あるいは近未来の人々にとっての「中原中也」の詩が持つ意味合い。ある種の失恋や失意をきっかけに展開する、詩と死、喪失、魂についての関係性は、たとえば近年のゲームやメタバース、人工知能的な世界観や異世界ファンタジー物語群との親和性も高いと思い、新しい世代の読み直しを促す意味もこめて、ここに数年作られたボーカロイド作品なども選曲に加えています。
具体的には、15世紀フランドルの作曲家ヨハネス・オケゲムによるレクイエム(演奏:アンサンブルオルガヌム / マルセル・ペレス)を筆頭とした音響作品としての古楽のDJ素材使用、ジョン・ケージのテープコラージュ、三木鶏郎によるラジオ番組、アンディー・ストットやセオ・パリッシュ、またブレイクコアなどの電子音や現代音楽などの楽曲に、ルー・リードによるギターノイズやブラックレザージーザスなどのハーシュノイズ、生前に詩人と交流のあった音楽評論家・吉田秀和による中原中也に関するインタビュー音声や、中原中也賞受賞の詩人・水沢なおによる晩年の代表作「一つのメルヘン」朗読などを編集する、いわゆる「メメント・モリ」な冥界観光な内容。
慰霊を目的とする非言語的な物語、ラジオ番組様式を意識した約1時間の音響ミックステープです。
昼の時間帯に合わせた軽妙な口当たりや聖歌を通じての救済を意識しながらも、失意や喪失感に由来する精神的な暗黒面を表現する内容となっており。
イベント当日はそれまで問題が無かったテスト済の電子系機材やアプリが本番で原因不明に動かなくなるトラブルもありましたが。
よくわからないけど、憑依されたように音源が完成してしまったので、ごく少数の方々に向けてネットを通じて公開させていただきます。
※当ファイルは告知なく削除する可能性があります。ご了承ください。
※大きな音で聞いてもよいですが、寝る前や読書中など、ボリュームを小さめにしての聴取もおすすめです。
曲の最後、ワールズ・エンド・ガールフレンド(feat.湯川潮音)による「君をのせて / ナウシカ・レクイエム」からの詩人・水沢なおによる「一つのメルヘン」朗読への展開は、宮崎駿監督による「ナウシカ」物語の中での腐海による浄化イメージと、中原中也の心象風景のリンクを意図したものです。