私と『硝子戸の中』の話をする
まずはじめに
夏目漱石の作品を読む時間が好きだ。
時期を変えて『こころ』を繰り返して読んで、同じ文章を読んでも抱く感情が違うということを味わってきた。
『三四郎』を初めて読んだとき、自分に酔って、注釈ばかり追って肝心の話の筋が分からなくなって自己嫌悪に陥ったことも懐かしい。それでも、巻末のページを覗いて知らない物や出来事を知ることの楽しさを知ったのも、漱石の作品のおかげだ。時間を置いて『三四郎』を今度は注釈無しで読み返して、自分の目や思想が三四郎に成り代わったような心地が