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第161回 キヨユキの手紙 の巻

三善清行(みよし きよゆき)、学者。道真追放の急先鋒のひとりとして知られます。

「官打ち」で孤立した道真に対し、ここぞとばかりに陰湿極まりない手紙を送りました。

道真を心配する体(てい)の嫌がらせなのですが、馬鹿丁寧な文面にゾッとする陰湿さを感じさせる内容で道真に迫ります。

清行は学生時代、国家試験で試験官だった道真から不合格をくらいます。また阿衡事件では、権力側(藤原基経)について宇多・道真と対立し、基経が亡くなって宇多親政が始まるとすぐに左遷をくらいます。宇多朝時代は長く不遇の時を過ごしました。

醍醐・時平政権で学者トップに抜擢、やっと日の目を見ます(時平と同じ学閥出身)。

呪術を得意とし、占いを駆使して「今年は反逆者が現れる」として道真追放を扇動します。

対極の道真はリアリストでオカルト大嫌い。宇多帝も道真にならい、「不吉なことがあっても決して陰陽師に占いをさせるな」と息子の醍醐帝に命じています(醍醐帝、守ってないやん!)。

オカルト嫌いの道真。 国家試験の際に試験官として清行に出題した問題が今も残っているのですが、これがまた清行へのイヤミたっぷりで面白い。


三善清行の手紙がどれだけ陰湿だったかというと…

まず書き出しが「親しくもない間柄なのに突っ込んだことを申し上げる無礼をお許し下さい」 とバカ丁寧な一文で始まるこの手紙は、文字通り親しくもないのに道真に対してズケズケと干渉します。

「あなたは右大臣をお辞めになって野山で詩を書いているのがお似合いです」

道真はそんなことはイヤというほどわかっていました。しかし何度辞表を出しても通らないのです。清行は道真が右大臣を辞められないことを知っていてそんなことを言っているのです。

さらに続きます。

「私の占いによると今年は反逆者が出る年なのですよ、イッヒッヒ…」
※最後の笑いは脚色

いや・・・これ、漢文で読むとけっこうキモいです(汗)。

清行は道真が追放させられることを事前に知っていてわざとこんな手紙を出しているのです。

石ノ森章太郎のマンガ『日本の歴史』では、この手紙を読んだ道真は清行が「自分のことを心配してくれているのかも」と、トンチンカンな解釈をしている場面が描かれています。(どんな読み方~!?)

どんな気持ちで道真がこれを読んだかは想像を絶するのですが、このあとすぐに道真は栄光の「従二位」へと昇進させられたかと思うと、秒で奈落に突き落とされるのです。

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