2022年12月、夫とカップル解消する話
こんにちは。池田アユリです。
いつもnoteにはインタビューライターとして取材のあれこれを書いていますが、今日はダンサーとしての活動で大きな決断をしたので、そのことについて書こうと思います。
競技ダンスをあまりご存じない方は、タイトルを見て「え、離婚するってこと?」と思われるかもしれませんが、違います。
カップルというのは、「ダンスカップル」のこと。パートナーというのは「ダンスパートナー」のことを指し、日本の社交ダンス界では「男性をリーダー、女性をパートナー」と呼びます。わたしたちは夫婦でありながら、プロの競技ダンサーとして一緒に活動していました。
2021年10月、家族会議で「夫婦として一緒に過ごしながら、ダンスは別々の道を歩もうか……」という話をしました。そして2022年12月、ダンス連盟にカップル解消届を提出しました。
2013年からプロの競技選手としてパートナージップを組んだわたしたち。A級を目指して、ときにケンカをし、ときに負け試合に肩を寄せ合って泣き、海外留学も積極的に行きました。青春の9年間でした。
19歳で社交ダンスに出会い、「楽しい、ずっと続けたい!」と思える瞬間がありました。それは「昨日よりうまくなったかも」と、自分の変化を体感したとき。
その変化をひとりではなく、ふたりで感じられることがすばらしいのです。相手のアクションに反応し、想像以上のパワーで踊れる心地よさ。「今の、最高だったよね!」「ここがやりくいけどなんでだろう?」と、話し合いながら改善していくことにも良さがあります。
ただ、競技会となると、わたしたちの場合そうはいきませんでした。
どう見せるべきか。
どうすれば次の予選に上がれるか。
それを目標にしているため、踊りやすさよりも見た目重視になりました。
「踊りやすさ=見た目がいい」だろうと思っていたけれど、現役のときはそれを結び付けられるほどの力を発揮することがはできなかった。
わたしたちには信頼するダンスコーチャーがおり、「先生に確認するまで小さな変更もNG」というのがふたりの決まりになっていました。すると次第に、踊りながら「こうしたいな」「こうするといいのに」という思いがかき消されてしまうのです。
もちろん、そのおかげであまり迷わずに練習をしてこれたと思っています。問題は、メンタルでした。コーチャーにすがることで「正解」を求めようとしすぎてしまい、自分で考えることに臆病になっていました。
その思いを発散するかのように、試合中に好きに表現して「練習したのと違う!」と夫に怒られたこともありました。枠にはまったダンスに、楽しさを見い出せなくっていったように思います。
わたしたちのカップル解消が決定的となったのは、2022年10月。西部連盟に移籍し、友人ダンサーを応援しようと大きな競技会を観に行ったときです。
夫はダンスフロアをじっと見ながら「試合に出たい」と言いました。でもわたしは、そこが自分の居場所だと思えなかった。
「勝ちたい」よりも、「表現したいものを、納得して取り組みたい」という気持ちがありました。
ダンスは好き。ずっと続けていきたい。でも、勝つためのダンスをしたいわけじゃない。勝手かもしれないけど、自分が納得する方法で模索したい。レースの中ではなく、作品として心地よく踊れたらどんなにいいだろう……。
観戦を終えたその日の夜、わたしは試合は出なくとも一緒に踊ってくれるパートナーを探し始めました。
数週間後、幸運が舞い込みます。競技を引退され、数々のショーでプロラテンダンサー・振付師として活躍している方と組ませていただくことになったのです。自分の描いた理想をすでに実現しているダンサーが現れ、思わず心の中で「強運すぎる!」と叫びました(笑)
さっそく12月末に開催される2つのイベントのため、ショーダンスの練習が始まりました。体力と感覚を取り戻すのに必死ですが、思いのほかスムーズに進んでいます。
夫とはこれからも人生を共にします。ダンスを一緒にしないからこそ、相手を思いやれる心のゆとりが生まれ、今はとても幸せな気持ちです。いつもありがとね。今後とも末永くよろしくお願いします。
来年に向けて、夫も競技会に出場するダンスパートナーを探しています。いよいよ心が定まったようで、「先生、ダンスがしたいです……」とスラムダンクの名言を引用しております。
わたしは一人の男性として夫が好きですし、ダンサーとして尊敬しています。無限の可能性を持つ彼が、競技会で汗を飛ばしながら踊っているところを、今度は観客として応援しながら見守っていきます。
そして、彼にもわたしのショーダンスを見てもらい、「いい感じだね!」と言ってもらえたらうれしいな。
ダンサー・池田組を応援してくださった皆様、今まで本当にありがとうございました。これからもそれぞれの道を応援していただけると励みになります。
試合やイベントでお会いする日を、楽しみにしています。
池田アユリ