山でねむる
4月10日(金)
きのうの夕方4時から眠っていた子どもの今朝は当然早起きで、朝5時に「ぼくもう起きたい」と宣言してリビングの電気も自分でつけた。
間もなく朝焼けの色が窓の外にひろがってみるみる普通に朝になった。日の出って4月でもうこんなに早いんだ。
この朝の明るさはいかにも今日はすばらしい春の陽気となりますよーと誘っているように見え(予報をみるとそうでもなかった)、抜けないねむさに半分閉じたまぶたの裏で行楽日和の4文字が輝いていた。せっかく早起きしたんだ、どこか山にでも行っておいしい空気を吸いたいわねとわたしは思った。
都内から日帰りで、3さいの子どもと行っても楽しめる山。わたしには高尾山しか思いつかなかった。そうだ、高尾山にいこう。
水筒いっぱいにカルピス(濃いめ)をつくり、靴箱で眠っていた登山靴をひっぱりだしてきた。靴ひもの最適な結びかたがわからず何度も試しているところに子どもがやってきて「わあーかっこいいことになっているね!」と激賞してくれた。よし。楽しい1日になりそうだ。
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高尾山についた。
平日にもかかわらず人の多いのにおどろいた。電車でのみちみち調べたところによると高尾山にはおもに6つの登山道があり、わたしたちは最も登りやすく舗装された1号路を選択した。
1号路は利用する人がいちばん多いルートであると情報にあったが、ここまでとは。普通にわたしたちの街よりも人出が多くにぎわっている。どんぐりや色のついた実やせりだした木の根にいちいち律儀に引っかかる子どもは、大学生とおぼしき集団に追いこされるたび「ちっちゃい子だ!」「かわいいー」と好意的な声を浴びている。それを聞くわたしはたのしい。
どんぐりがいっぱい
子どもは要所要所で歩いたが基本だっこで、一度だっこと決めると断固降りなかった。かれにははじめての登山だから覚悟はしていたが、そっちのパターンかあ。
15キロを抱えてひいこらいいつつ山の中腹までいくとお団子屋や食堂があるところに出た。この時点で眺望がかなりいい。ケーブルカーで登ってくる人も多く、ここで一気に子ども連れが増えた。ベビーカーも何台か見かけた。
カレーとおだんごを食べて休憩した。
子どもに言われるまま買って期待していなかったこのおだんごがおいしくて、山上でこれか、さすがは天下の高尾山とひれ伏した。
腹ごしらえもしたところで登山道に戻る。とはいえアスファルトの感触にはもう飽きた、わしは土が踏みたいんじゃあということで4号路にそれた。選択肢があるのいいなあ。
4号路は1号路に較べればずいぶん空いている。土や木の根による起伏が大好物の子どももここではだっこを脱して積極的に歩いていた。
先を行きすぎて不安なくらいだった
(画面中央)
つり橋もある
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いい具合に進んでいるなあ、このまま山頂まで歩いてくれるかなと思っていた矢先、やっぱりっていうか、子どものスイッチが突然切れた。4号路の途中、勾配のきつい木造りの階段にさしかかる手前でのことであった。「いまおうちかえりたい」と泣くのを抱きあげるとほどなく寝た。そうか…
もう山頂まであと15分くらいのところまで来ていたから引き返すのもなんだなということで体感20キロくらいになった子どもをかついで登頂した。耳もとに寝息。登りきってもひとり。ふふ。
山頂の売店ではビールを売っていた。が、眠る子を抱いて下山することを考えると酔うのはまずそうだ。泣く泣く断念。
山頂、いいものですね
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ケーブルカーで山を下りるにしても、ケーブルカー駅のある山腹までは歩いて下りていくしかない。そこまでの1時間弱の道のりは舗装された1号路で戻ることにして、ああ、今はアスファルトが心底ありがたい。
下山とはいえ登り坂もたびたび出現する。ところどころで路のわきによけて休んだ。息が上がり脚も尻も肩も腕もはじけるように痛い、が、これが今日まさにわたしが望んだ疲労なのだった。来てよかったなあと自分勝手におもう。ねむる子どもは小動物なみにあたたかい。この子もちょっとは楽しめたろうか。
と考えていたところ、薬王院でかれは目を覚ました。にぎっていたはずのどんぐりが2つまで減っていることにさっそく不満を述べていた。薬王院はケーブルカーの駅から少し上ったところにある寺院で、付近にはだんご屋もあった。1時間ほどの睡眠で元気を取り戻した子は参道のおだんごとソフトクリームを要求して全部食べきるのは無理だとおもわれたのに見事にたいらげてしまった。からだを動かしてねむって健全におなかがすいたのだなあ。
こちらのおだんご最高においしかった
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薬王院からもうひとがんばり歩いてついにケーブルカーの駅のあるところまで下りてきた。まだケーブルカーの運転があることにほっとした。もう16時だった。ずいぶん長いこと山で過ごした。気温が下がり、雨がぱらついていた。
ケーブルカーのきっぷ
改札鋏で切れ込みを入れてもらい
めずらしそうにしていた
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無事下山。
ほとんどわたしの「山への欲望」に付き合わせたかたちだったが、最後は子どもも楽しそうでよかった。おいしい山グルメにも救われた。高尾山はさすがだった。初夏にビアガーデンが開いたらさらに最高なのでは。
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山の記録
スミレ
ミヤマシキミ
ヤブケマン
(やぶけマン?!と言ってしまった。小学生か)
きのこ(たぶん)
名前わからず
朽木内部
でかめのアリ
ひさしぶりに見るとかっこよくてほれぼれする