せいしんとたびじ
秋の夜長、ふと見上げた夜空に、木星が一際明るく輝いていた。
星辰とは、天に瞬く星々のこと。古の時代から、人々は星を道標とし、未知の旅路へと踏み出してきた。星を見つめると、広大な宇宙の中で自分の小ささを感じると同時に、不思議な安心感に包まれる。
万葉集には、こんな歌がある。
「天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出でし月かも」
これは、阿倍仲麻呂が異国の地で故郷を想い詠んだ歌。彼もまた、星辰を見上げながら遠い日本の空に心を馳せたのだろう。
秋の澄んだ空気は、星の輝きを一層鮮明にしてくれる。現代に見た木星の明るさと、阿倍仲麻呂が見た月と人の想いが重なり合う。
小学生の時は、星が好きだった。望遠鏡を手に、夜空を見上げては未知の世界に胸をときめかせていたあの頃。時が経ち、大人になった今でも、星空を見上げると同じような感動を覚える。
日々の喧騒から離れ、たまには星辰に心を委ねてみるのも良いものだ。夜風に吹かれながら、遥かな旅路に想いを馳せて。