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小説【ひと夏の妹】

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初出:カクヨム 2017年4月23日  評価☆268 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883018283
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記事一覧

【ひと夏の妹】☆4 物語は続いていく(完)

「……俺の負けだよ。リン。完敗だ。約束通り、なんでも言うこと聞いてやるからな」  心から…

天津真崎
1年前
4

【ひと夏の妹】☆3 冬の花火

 冬のイルミネーションに飾られた巨大な街路樹が立つ駅前広場。  その真下のベンチに、リン…

天津真崎
1年前
3

【ひと夏の妹】☆2 決意。

 目を開くと、バスの車窓に映った俺が、俺自身を、呆れ果てた顔で見ていた。 『なんでいつも…

天津真崎
1年前
4

【ひと夏の妹】☆1 声

 ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  バスが揺れる。  夜の街がにじんで流れる。 『おま…

天津真崎
1年前
4

【ひと夏の妹】#46/46 エピローグ2

 母が亡くなったあと、少し経って落ち着いたころ、俺は大学時代を過ごした『海辺の街』に戻っ…

天津真崎
1年前
4

【ひと夏の妹】#45/46 エピローグ1

 その後、二回だけリンを見かけた。  一度目はリンと買い物をした繁華街の雑踏の中だった。…

天津真崎
1年前
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【ひと夏の妹】#44/46 ひと夏の妹の物語

 ドアを出ると、駐車場の隅に白い軽が止まっていて、中にタバコを吸う母親の姿が見えた。  俺たちに気づき、車から降りてくる。  俺の隣ではしゃいでいたリンが、見えない壁にぶつかったように立ち止まり、たじろいだ。 「……お母さん……?」 「リン。このバカ。あんたなにやってんの」母親は、怖い顔をしながらもリンの無事な姿を見てホッとした様子だった。「帰るわよ」 「……なんでお母さんが……?」  リンが真意を問うように俺を見た。  俺はリンを見なかった。 「リン」と、母親の口調が硬く冷

【ひと夏の妹】#43/46 最後の朝

 朝になるまで俺は一睡もしなかった。  リンも、寝ないように必死で頑張っていたが、気づけ…

天津真崎
1年前
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【ひと夏の妹】#42/46 夢一夜

 アパートのドアの前に立つ。  表札には俺の名前。  今日、リンは、どういう気持ちでこれを…

天津真崎
1年前
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【ひと夏の妹】#41/46 対決

「あなたの自己満足でしょ、それ。でも、娘はそれに振り回されたのよ」  自己満足。その通り…

天津真崎
1年前
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【ひと夏の妹】#40/46 妹じゃなかった

 距離から考えて、もうそろそろ到着するころ合いだ。  リンの母親を出迎えるため、俺は身支…

天津真崎
1年前
2

【ひと夏の妹】#39/46 ふたりのおもいで

 静かな夜だった。他の住人の気配もない。  静かすぎて、リンの心音や息遣いがはっきりと聞…

天津真崎
1年前
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【ひと夏の妹】#38/46 矜持

 密着して、互いの鼓動や体の熱さをはっきりと感じながらも、キスはしなかった。  そんなこ…

天津真崎
1年前
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【ひと夏の妹】#37/46 嘘と電話

 風呂場に行こうとしたリンに俺は言った。 「けど、ひとつ条件がある。お母さんに電話しろ」  リンが露骨に顔をしかめた。 「友達の家に泊まるとか言って、安心させろ。じゃないと、家出か誘拐と思われて本当に警察に通報される。お前、俺が逮捕されたら嫌だろ?」  その聞き方が妙なツボに入ったのか、リンはくすっと笑った。 「タキくんが逮捕。なんか面白い」泣き出す寸前のような顔で笑うという奇妙な表情だった。「でも、わたしのせいってのはイヤだなー」 「だったら、頼むよ。うまくごまかしてくれ」