【ひと夏の妹】#37/46 嘘と電話
風呂場に行こうとしたリンに俺は言った。
「けど、ひとつ条件がある。お母さんに電話しろ」
リンが露骨に顔をしかめた。
「友達の家に泊まるとか言って、安心させろ。じゃないと、家出か誘拐と思われて本当に警察に通報される。お前、俺が逮捕されたら嫌だろ?」
その聞き方が妙なツボに入ったのか、リンはくすっと笑った。
「タキくんが逮捕。なんか面白い」泣き出す寸前のような顔で笑うという奇妙な表情だった。「でも、わたしのせいってのはイヤだなー」
「だったら、頼むよ。うまくごまかしてくれ」