【長編小説】ダウングレード #20
その日は朝からツイていた。オートレースで三戦連勝してこの三週間の負けを取り返した。オートレース場にイベントで来ていたのは、デビュー当時から聴き続けている演歌歌手の小島さゆりだった。若いアイドルやお笑い芸人もいいが、歌のうまい演歌歌手の生歌はやはり最高だ。おまけに小島さゆりは歌いながら視線を合わせてきた。サビの部分で感情を込めながら。今日は最強だ。宝くじでも買うべきかもしれない。
胸ポケットに入れているスマホが震えた。登録していない番号からだが、機嫌よくタップして耳に当てる