唐突に、淡々と読み上げられた医療崩壊宣言
2021年8月2日夕方、菅義偉内閣総理大臣は淡々と原稿を読み上げた。
新型コロナウイルスに感染した人のうち、重症患者は入院、それ以外は自宅療養、とする、と発表した。
事実上の「医療崩壊宣言」である。
なぜ「医療崩壊」だと言えるのか?
その理由について、この記事では解説したい。
次の図を見てほしい。
中等症というのは、医者が持つ実際のイメージでは「人工呼吸器は要らない」「肺炎が広がっている」「多くの人にとって人生で一番苦しい」状態のことなのだ。
つまりこれからは、肺炎が広がっている、人生で一番苦しいくらいの状態で、自宅療養を強いられる、ということなのだ。
ちなみに僕の仕入れた情報では、40度の熱が出たくらいの状態では「軽症」らしい。
さらに、次の表を見てほしい。
中等症にはⅠとⅡがあり、さきほどの「医者が持つイメージ」の中等症はⅠに当たる。さらに悪化した場合、中等症Ⅱになり、酸素マスクや人工呼吸器が必要になり、集中治療室での治療が検討されるようになる。
この「中等症Ⅱ」に当たる患者も「自宅療養」なのだ。いったい自宅に酸素マスクや人工呼吸器を持ってこれるのか?自宅を集中治療室のようにできるのか?
おそらく、いや、絶対に不可能だろう。
つまり、菅義偉総理大臣は、「中等症Ⅰの患者は自宅で死ぬほど苦しめ」「中等症Ⅱの患者は自宅でさらに症状が悪化するのを待て」と言っているに等しいのだ。
さらに悪化して重症になれば、やっと入院することができる。
重症というのは、僕が調べた限りでは「意識がない」「生死の境をさまよう」ような状態のことらしい。ECMOとかいう「最後の切り札」が投入され、ECMOに精通した医師、看護師、臨床工学技士など10人以上がチームとして対応し、治療期間は数週間に及ぶとか。もちろん、命の保証はない。
つまり重症というのは、一般的なイメージでは「重体」「危篤」といったところだろう。
いかがだろう?「重症患者は入院、それ以外は自宅療養」を一般的なイメージで語ると大きな間違いを犯す。ひょっとしたらこの決定をした政治家たちは一般的なイメージで考えている可能性もある、と疑っているが、この期に及んでそれはもうどうでもいい。
もう一度書くが、菅義偉は「中等症Ⅰの患者は自宅で死ぬほど苦しめ」「中等症Ⅱの患者は自宅でさらに症状が悪化するのを待て」と言っている。
これを医療崩壊と言わずして何と表現するのか?戦時中に退却を「転進」と呼んでいたように、何か適当な言葉で表現しかねないが、実質は医療崩壊と断言して良いだろう。菅は「医療崩壊」と「棄民政策」を宣言したのだ。
さて、これでもう新型コロナウイルスに感染して発症するわけにはいかなくなった。街行く人は減ってはいないし、むしろ増えているようにみえる。できるだけ人混みを避け、絶対にマスクをし、うがい手洗いを徹底する、などするほかあるまい。運悪く発症してしまったら、それはもう神頼みしかあるまい。
なんとか次の衆議院議員選挙まで生き延びられれば、と思う。運良く生き延びることができたなら、それはもう、投票するしかない。次の選挙の一票は人命より重いかもしれない。