ファルコロン

ファルコロンと申します ここへ辿り着いていただき ありがとうございます 子供のころからの実体験をもとにして 小説を投稿しています 良かったら見ていってください

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最近の記事

クーピーでいえば白(チカチカ)

【チカチカ】  毎日、通学路にある同級生の家へ行き、時間をつぶした。  その親は共働きで、朝早くから夜遅くまでいなかったし、同じように学校に行きたくない奴らが何人か出入りしていたため、旺次郎が行っても受け入れてくれた。いわゆる不良たちの「たまり場」だった。  ゲーム、漫画、昼寝…何をしていても誰も何も言わない。食べ物、飲み物も勝手に持ってきて、勝手に食べる。  旺次郎は、なるべく大人数分を買って「これ、家にあったから」と、渡すようにした。 「すげぇ!」「サンキュー」「俺、こ

    • クーピーでいえば白(大理石)

      大理石  自社で建てたマンションの1階と2階にそのオフィスはある。  事務机やコピー機などのオフィス機器が並んでおらず、黒い壁に木目の板を施した部屋は、シンプルなデスクと椅子が理路整然と配置されている。どうしても出てしまう紙のファイルなどは、見えないように壁面収納で隠されているようだ。一見すると殺風景で無機質な印象だが、センス良く配置された観葉植物などがアクセントになり、シンプルだが程よい温かみ、という演出も施されている。  窓際にはソファが置かれ、セルフスタイルのコーヒー

      • クーピーでいえば白(ほたる)

        (ここまでのお話…)  電車の中で大騒ぎをする中年女性たち。若い女性が席を譲らないことが原因だが、どうやら、その奥深くには様々な人間模様があるらしい。中心人物の岩原マキヨと俵喜美江は高校からの同級生。年を重ねた今でも親友で、同じ男性を夫として迎えたという因縁の仲。  それぞれの生い立ちは、彼女たちの未来にどんな影響を与えてきたのか。  母親と二人で暮らしていた喜美江は、日々を生きていくのがやっとの生活。好きな服も、新しい靴も欲しいと言えない。言ってはいけないと思っていたし

        • クーピーでいえば白(漆2)

          【漆2】  しばらく後、喜美江の母親と、森田家、学校長、担任教師、そして市の職員と児童福祉士…学校の校長室での話し合いとなった。  そこに二人…児童がまぎれている。喜美江と雄三だ。 「え…っと、君たちはどうして?」  市の職員が子供たちに聞いた。   多分、女の子は当事者だがもう一人は様子が違う。  兄弟か?だとしても、こんな場にいるのはおかしいだろう? 「森田雄三です。キミちゃ…大館喜美江さんを助けました。」  雄三は、深々と頭を下げた。  ああ…そうなんだ…。けど、なん

          クーピーでいえば白(漆1)

          【漆1】 「なんで?俺も行きたかった!」  雄三が叫ぶ。 「なんで母ちゃん一人で行ったんだよ。俺、明日行く。」 「雄…お前が行けばややこしくなるだけだ」  漢が、日本酒のお猪口を口へ運びながら宥めた 「喜美江も一緒なんだしよ…」 「だから、俺も行きたかったのに!ばあちゃんとキミちゃんと遊びたかった」  雄三は、口を尖らせて、地団駄を踏む。 「いい加減にしろよ、お前、来年中学生だぞ」  と、次男、卓二が参戦した。夕飯は近くのすし屋から出前を取り、男だらけの食卓。リビングに隣接

          クーピーでいえば白(漆1)

          クーピーでいえば白(こげ茶色2)

          【こげ茶色2】  朱莉は、喜美江と一緒に、自宅から少し離れた自分の実家へ向かった。次の日は休日だから泊まるつもりだと夫に伝えた。長男、次男、四男にも…。  ただ、雄三には言わなかった。自分も行くといって聞かないと思ったからだ。言っておけば良かったかな…。兄弟たちから聞いたりしたら怒るだろうな…。でも、喜美江からは少し離してあげた方が良い。今は何も考えずに、心を守ってあげなければ…。  母親は、元美容師だ。店は都内にあったが、夫の両親の介護のため店をたたみ、今の場所へ引っ越し

          クーピーでいえば白(こげ茶色2)

          クーピーでいえば白(こげ茶色1)

          【こげ茶色1】 「お小遣い上げようか?」  そう言われた。母親は一生懸命働いている。それでも生活は苦しかった。新しい靴が欲しい、初めて会った大学生に話した。見た目もカッコよくて、話も面白かった。 「じゃあ、俺が買ってあげるよ、でも条件があるんだ、できるかな?」  そういいながら彼は喜美江の手を掴むと、何気なしに自分の股間へと持っていった。 「え~?やだよ」  喜美江は拒んだ。なんだかよくわからないけど、イヤだった。 「なんで嫌がるの?俺は、うれしいのに」  口を尖らせて言う

          クーピーでいえば白(こげ茶色1)

          クーピーでいえば白(翡翠色)

          【翡翠色(ひすいいろ)】 「俵、直正、俵、直正でございます。沿道の皆様、こんにちは」  グレーのワゴンには、顔写真と「俵なおまさ」の文字がデカデカと掲げられ、拡声器から良く通る女性の声が、歩行者たちの耳に届いた。  統一地方選挙、投票日は次の日曜日、選挙活動の集大成に入っていた。  白い手袋をつけ、ワゴンの窓からにこやかに手を振るのは、政治家、俵直正だ。実生活では喜美江の夫で、マキヨの元夫でもある。 「柔らかい印象で」  そう言われて撮影した、選挙ポスターを眺める。  身長

          クーピーでいえば白(翡翠色)

          クーピーでいえば白(生成り色2)

          【生成り色2】  ラブラドールレトリバーのオモチとトックは兄弟だ。毛色は2匹とも白っぽいベージュ、オモチは女の子、トックは男の子。少し顔つきが違うが、動きは一緒だ。すみれの家族としてやってきてから、10年が経った。 「オモチとトック?」  女の子が言った。中学生、洋子の子供の晴菜(はるな)だ。2匹を抱きしめながら「かわいい~」とはしゃいだ。 「似てるけど、顔が少し違うね。オモチは目が垂れてて、トックは…やんちゃそう」  もう一人の女の子、高校生の莉子(りこ)は、じっと2匹を

          クーピーでいえば白(生成り色2)

          クーピーでいえば白(生成り色1)

          【生成り色(きなりいろ)1】  岩原マキヨは、スマートフォンの画面を見て悩んでいた。 メッセージを送ろうと思っている相手は、三田寺洋子だ。アイコンは韓国の歌手が映っている、うちわ。  推し、がいるって言っていたっけ…。  それを見ただけなのに、マキヨの心が和んだ。ラインの名前を見てほっとしながら、あんなひどいことをしてしまったのだ、おいそれと連絡するなんて、図々しいだろうか…。  ダンスサークルのグループは退会した。と言うより、そちらは消えた。喜美江が仕切っていたからだ。

          クーピーでいえば白(生成り色1)

          クーピーでいえば白(アプリコット2)

          【アプリコット2】  町工場をリノベーションしたカフェ「cotocoto(ことこと)」は、ちょうど、15時を回るところ…おやつタイムを過ごそうとする人で混み始めていた。あんずたちは運よく、窓際の明るい席に着くことができて、すみれは「ラッキーよ」と喜んだ。  建物の外観はトタンでできていて、錆びやはがれた部分もある、元の外観に少し加工しただけのようだ。  新しいが新築、という感じではなく、そこで長く過ごしていた歴史を感じさせる味のある建物感、を中の鉄柱などと同様、醸し出してい

          クーピーでいえば白(アプリコット2)

          クーピーでいえば白(アプリコット1)

          【アプリコット1】  専門学校の授業が、今日は早めに終わったけど、この後何も予定はない。  何か時間をかけて料理でもしようか、などと思いながら、蓮は駅のホームにいた。  電車がやってきたので、中の状況を観察する。これはもう、癖になっているようだ。  割と人が乗っている…。いつもよりも後ろの車両だからなのか…長椅子に六人、優先席に二人…  窓際で立っている…女性が一人…  キャップを深くかぶって、なんとなく、見たことが…。  彼女だ。  2両先の電車を観察中に気づいた。

          クーピーでいえば白(アプリコット1)

          クーピーでいえば白(オレンジ2)

          だが… 「あ、やばい、もう遅刻するから行くね!」  と、涼平は家を出る。中学受験をし、市外の中学へ通っているため、朝が早いのだ。行ってらっしゃい、気をつけて、智子が答える。と、バタバタと大助が降りてきた。 「サコっち、辰也起きねぇわ。俺ももう準備するからぁ」  わかった、ありがとう。智子が答える。と、祥太と亮太が朝ごはんを食べ始める。 「あ!なんだよ亮太、それ俺のジャン」 「イヤ、赤いからね。俺の色だ」 「ふざけんな、イチゴは赤いに決まってんじゃん!自分の色とか関係ねぇのに

          クーピーでいえば白(オレンジ2)

          クーピーでいえば白(オレンジ1)

          【オレンジ】1  蓮は、冷蔵庫から玉ねぎを取り出した。ネイビーの小ぶりな冷蔵庫は、兄弟たちからのプレゼントだ。 「これが良いね。小さめだけど性能も消費電力も良い。海外ブランドだけど、このメーカーは信頼できるよ」  そう言いながら、兄が選んでくれた。池沢辰也、一番上の兄貴、と、蓮は思っている人。  彼自身も、大手電機メーカーの工場で働いている。本社勤務ではないが、手先の器用さ、仕事に対する誠実さ、繊細な気配りなどができると周囲からの信頼もある。今は、現場主任として重要な位置に

          クーピーでいえば白(オレンジ1)

          クーピーでいえば白(モノトーン2)

          【モノトーン】2 蓮の家は、敬之助一行が知らない駅にあった。名前は知っているけど、降りたことはない。 「広くないからさ、適当に座って」  蓮は言いながら、途中のコンビニで調達したスナックの袋を開け、紙コップを用意する。  部屋は、1ルーム。ロフトが付いていて、小さなキッチン、風呂とトイレが別にあるシンプルなつくりだ。  都心から離れているから、それほど高い家賃ではないし、学生街なので、外観も洒落ていて、隣家との距離もあって余裕のある作りだ。  壁紙は渋い木目で、家具はアンテ

          クーピーでいえば白(モノトーン2)

          クーピーでいえば白(モノトーン1)

          【モノトーン】1  午後2時、都心から郊外へ向かう下り電車は、あいている座席の方が多い。  空は青く、丸みのある雲がぷかぷかと浮かび、気持ちよく晴れている土曜日の昼。各駅停車の車内の空気も穏やかに感じられる。電車は、ある駅に静かに滑り込んだ。  イヤホンをつけ、ホームの一番前で並んでいたら、後ろでガヤガヤと話している声がした。音楽が聞こえづらくなって不快だ。何をそんなに大声で話しているのだろう。  黒河内蓮(くろこうちれん)は、後ろの集団にイライラした。どうやら、年配の女

          クーピーでいえば白(モノトーン1)