おばあちゃんのおひざもと 第37話 アリの這うように

「アリさんの這うように、ここの粘土質の固〜い土を一鍬、一鍬耕していった。少〜しずつ、少〜しずつね。そうやって、こんな貧弱な荒地をようやく畑に変えていった。この家の周りの土地は畑には向いてない土なんだよ。だけど、昔は食料は自分たちで作らなくちゃならなかった。そうしないと生きていけなかったらかね。戦争中はそういう時代だったから、どこの家でも農作業をやっていた。やったことない野良仕事を覚えて、手に豆いっぱい作って皮が向けて痛かったあ。鍬をふって土を起こすと、石っころがゴロゴロ出てきたり、木の根っこにぶつかったり。木の根っこが出てきたらもう大変。大きい根っこだとそこは使えないから、少し離れた場所に移ってまた一から耕し直さなくちゃならない。一向に進まないんだから。とにかく、土作りから始めないといけないわけ。畑にして種や苗を植えるまでに時間のかかったこと、かかったこと。家事だってしなくちゃならないから、一日中ずっと畑仕事するわけにもいかない。だから、本当にちょっとずつ、ちょっとずつ鍬を入れていったの。里芋やお大根なんかは農家の人に分けてもらった苗を小さな場所から植えて行って、その間にも少しずつ畑を大きくしていって、今の形になるまで相当の年月がかかったんだよ。」


*この本は第1話から46話まで、順番に各章の最初の頭文字一音をつなげていくと、あるメッセージ明らかになります。さて、どんなメッセージでしょうか。

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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

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