紙博in Kyoto vol.5に行ってきました
平安神宮の近くのみやこめっせで、8月10日(土)〜12日(月・祝)の間に開催された紙博in Kyoto vol.5に行ってきました。
この記事ではそこで見つけた心をギュッと掴まれたかみものや、感想をまとめています。
↓手紙社さん主催の紙博についてはこちらから↓
はじめに
展示会等のイベントに、お客さんとしてみっちり回るのはかなり久しぶり(もしかしたら自分がイベントに出始めてからは初めてかも!)のことでした。さまざまな切り口から紙に対してアプローチしている出店者さんのアイデアの豊かさはもちろん、展示の方法や接客の仕方に関しても、勉強になることばっかりでした。
今回は、私と名古屋からお越しのもうひと方の2人で会場を巡りましたが、2〜3時間のつもりがお昼から閉場時間まで4〜5時間楽しんでしまい、最後会場を出る時に足はガクブルでした。
そんなことになるまで楽しめた紙博で、思っていたことの一部をご紹介します。
出店者さんの規模
私が普段出ているようなイベントの出店者さんは、個人の方がかなりの割合を占めているように見受けられます。一方で紙博を回ってみた感じ、個人の作家さんもたくさんいらっしゃいますが、メーカーさんや印刷業者さん、紙業さんなど中小企業さんがたくさんいらっしゃいました。本業は別であって、自社商品を展開する一環で紙博に出店されているのかなという感じです。
また、出店目線での紙博の良さの1つは、そのブースの広さにあるような気がしました。正方形ブースを目一杯使って商品を陳列できるのは想像しただけでワクワクします。が、これを一人でやるのは不可能ではないけど結構シビアだということも同時に頭をよぎります。その点、企業さんにとっては個人の方に比べると負担にはなりませんし、そのメリットが大きく活かせそうと感じます。そもそも最初は中小企業さま向けのイベントだったのかな、などとも思います。
ディスプレイの仕方は反省点いっぱいあった
ブースが大きいと、ディスプレイにかける時間はかかりますし、全体を統一させるのにも大変な工夫が必要な気がします。紙博のどのブースを見ても綺麗で、どれを買うかじっくり迷えるような空間になっていたように思います。
どのブースにも共通していた真似したいポイントは、「その商品にあった陳列をしていた」でした。当たり前のことかもしれませんが、自分のを振り返るとあんまりできていなかったな、と反省しました。
例えば、ハンコは区分けされた箱の中に入れて、箱を斜めに傾けて手に取りやすいように展示していました。
パッケージされた便箋や封筒は1つの箱に入れたり、立てかけたりしていろんな種類が選べるようになっていました。
細長いものはペン立てのような容器に入れて並べていました。
種類がたくさんあって、好きなものを選んで欲しいものは、テーブルをゆったり使ったり、吊ったりして、たくさんの人が選べるようにしていました。(アイスクリーム屋さんみたいに)
また、マクラもひとそれぞれでした。
マクラというのは、ディスプレイの高さを出すためのものを言います(他の人も同じことを言っているかは知りません)。多くの方が机の前30センチほどはテーブルに置く形で、それより後ろは20センチほどマクラを使って高さを出して陳列していました。ZINEなどをメインに取り扱っている方はボードに立てかける形で、本の表紙が見やすいようにされていました。
マクラの素材も面白かったです。
クロスをかけてテーブルクロスとの統一感を出す方もいれば、
カラーボックス的なものを使う方、
なんらかの家具(?)や板、すのこを組んで高さを出す方、
グッズの世界観に合わせて可愛い家具を使う方など、たくさんの方がいらっしゃいました。
ブースごとに特徴があってうずうずしました。
ディスプレイの最後にもう1つ。商品と一緒に置いてあるポップの大事さも身にしみてわかりました。ちょっとした商品のポイント、誰・何向けなのか、商品の雰囲気を表した商品名看板、お値段などなど。バランスや情報間の強弱、配置がとても勉強になりました。
出店する立場として、もちろんちゃんと用意はするんだけど、紙博の出店者さんをみると反省する部分が多かったです。
コミュニケーションの取り方も勉強になった
色々と気になるかみものを見ていると、出店者さんが話しかけてくれます。
どうやって使うのか、グッズの面白ポイント、制作時のこだわりポイントなどなど、市販品を買っているときには聞けないような話をしてくださいます。
そのような話を聞くと、自然と「へ〜!(感嘆)」と声が出ます。自分が出店していて思うことですが、この「へ〜!(感嘆)」はとても嬉しいです。「この反応、結構嬉しかったんよな」と思いながら作家さんとお話を続けます。作った本人だから話せる苦労感や、ものに対する愛着が話の中から滲み出てきて、「イベントに出店したり、足を運んだりすることの意義ってこういうところにあるよな…」と感じました。
一方で、グッズを見ているのを静かに見守ってくれる方や、忙しくて接客できない方もいらっしゃいます。それはそれでこちらのペースでグッズを見れて幸せ時間です。
そして、コミュニケーションの塩梅って難しいな…って思います。
たくさんのZINEを見ました
イラストレーターさんや作家さんが出すかみものの1つにZINEがありました。リソグラフで印刷されている方が多かったです(リソグラフあんまり分かってなかったので調べました)。
紙の質・色やインクの滲みで作品の良さをさらに引き上げてくれるのはリソグラフなのだと思いました。
今回の戦利品の1つに、スギモトマユさんの「イケオジの本」があります。こちらは世界各国で見かけたイケオジのイラストとその人にまつわる話が描かれたzineです。本を通じて異国情緒とオジさま、スギモトさんのユニークな視点、それからリソグラフが楽しめます。
ページの最後の印刷会社には「レトロ印刷」さんの文字が。レトロ印刷さんはリソグラフ印刷に特化した会社で、今回の紙博はもちろん、別のイベントのブース等でお見かけすることもあります。私はレトロ印刷さんのスリマッカ(シルクスクリーンキット)を買おうか迷っていた時期もありました。他の方のzineも、レトロ印刷さんにお願いしているケースをいくつか見たので、リソグラフをお願いするならレトロ印刷さんなんだなと頭のメモに書き留めました。
また、製本の仕方をみると、圧倒的に糸で綴じているものを多く見かけました。そして上糸と下糸の色が違う。ちょっとしたことなのに、これがめっちゃ可愛いのです。この製本は、家のミシンでできないのかな…などと頭をよぎります。帰ったらやってみようと思います。
真似したい!と思ったアイデア:本の帯がレシピ
一般的に、本の帯は購買意欲を高める(タイトルだけでは伝わらない本の魅力を発信する)ために使用するのが第一目的です。逆に言えば、それ以外の目的はほとんどないのではと思っています(あったら教えてください)。
それを実用的に活用されてる方がいらっしゃいました。
料理の写真を本にされている方だったかと思います。本自体の表紙は白字に小さなタイトルが書かれていてシンプル。帯には料理の写真が。最初見たときは帯だとわかりませんでした。帯はA3くらいの紙が折り畳まれた形になっていて、広げると料理の写真とそのレシピが裏表合わせて6つか8つほど載っていました。
それだけで帯の価値が上がると思ったし、何よりおしゃれでした。
本を彩り、かつ実用的な帯で、機会があったらやってみたいと思いました。
さいごに:心がギュッとなったもの
会場では、切手シールとハンコをたくさん見かけました。
私の場合、イラストを使って何か商品を作ろうとすると、「これ何に使うん?」みたいなものの制作はためらってしまう傾向にあります。とはいえ生活してて「本当に」必要なものなんて限られていて、逆にほとんどのものは必要ないまであり、私の扱っているものももちろんその一部なのですが、極論はさておき「これそんな使わんくない?」と自分が思うものを作ることには躊躇いがあります。
ですが、今回紙博に行って一番感じたのは、「必ずしも生活に必要ないけど、あると気分が上がるもの」「そのグッズを通して、考えることや記録することを含む生活全体が楽しくなるようなもの」の力でした。
こんなことをいうと怒られてしまうかもしれませんが、そもそも紙自体、「ペーパーレスの時代」と言われて不要なものにシフトしています。私たちが生まれる前から手紙はメールになっているし、5,6年くらい前から年賀状は書かなくなりました。その紙を使うということは、(書面での事務的なやり取りを除く)紙の質感や匂い、印刷技術、またそこに発生する手間(時間)を楽しむということと同じと思います。
切手シールは、切手風のシールで手紙を出すときに貼っても正直なんの役にも立ちません。ですが、こんなシールが貼られて手紙が送られてきたら、少しどころかかなり嬉しいと思います(個人の感想です)。
今はソフトでいくらでもハンコ風の表現は可能ですが、実際にインクをつけて押している時間や、インクの感じ、面白いデザインまでは再現するのは難しいと思います。
紙に限った話ではなく、ちょっとしたもので嬉しくなったり、人が喜ぶことを想像したり、時間を使ったりすることは多少のエネルギーを伴います。人はエネルギーが伴うことをなるだけ避けたいという節がありますが、その行動への後押しと、それを楽しませてくれる力が、会場にあるかみものにはあると感じました。そしてそのように楽しもうとしたり、楽しんだりすることが生活には必要と感じています。
このように、なんらかの形(今回は紙)を使って日々を楽しむことのお手伝いが、グッズひいては自分の役割の1つではないかと感じます。そのためには「どれだけ楽しんでもらうか」「このグッズを通してどれだけ工夫をしてもらうか」みたいな視点も必要なのだと今回の紙博を通じて一つ気づくことができました。また「これほんまにいる?」が自分の気持ちの中の大半を占めていたことにも気づきました。
いろいろと思いを張り巡らせる機会をくれた紙博でした。また行きたいです!
(色々と考えたつもりですが、私の場合こういう気持ちはすぐに変わってしまうものなので、行動が伴うかどうかはわかりません。ですが、ハンコや切手シールをいいなっておもえる感性は、いつまでも消えてほしくないなと思います。)