作家 沢渡あまねの事業サイクル~個と法人の共創モデル
今回は、作家と企業経営者(あまねキャリア株式会社、一般社団法人ダム際ワーキング協会)の2つの顔で活動している僕(沢渡あまね)の事業サイクルを言語化してみたい。この発信が、読者の皆さんの経営戦略策定、キャリア開発、あるいは脱属人化などのお役にたてれば嬉しい。
なお僕たちのミッションは「景色を変えて、組織を変える」であり、これは個人(作家)の顔、法人の顔ともに共通している。また、僕たちは組織開発や地域開発を生業としているがいわゆるコンサルではない。その点については後述する。
1.3つの活動とプロセス
僕(たち)はズバリ、以下の3つの活動とプロセスで作家活動と法人活動の両輪を回している。
(1)一次体験(研究開発)
一次体験や原体験を増やす。
・地域を体験する
・組織を体験する
・さまざまなワークスタイルやライフスタイルを体験する
・当事者体験をしている人の話を聞く
また、さまざまな行動パターンを自ら試し、うまくいった/いかないなどの体験を先取りする。いずれも、個人としての作家活動として、法人としての顧客への価値提供に不可欠なインプットであり体験資産(※)である。昨年は、スタートアップ企業へのエンジェル投資も始めた。
※体験資産については、以下の記事も参照されたい。
僕個人として、そのような一次体験や原体験をするための時間や余白を増やしていく。そのために、日々のオペレーション業務は効率化したり、リモートワーク(と言うよりデジタルワーク)を活用し移動時間や準備時間やコミュニケーションコストを削減したり、メンバー(仲間)に力を借りながらチームでさまざまなタスクに対応できるようにしていく。
一次体験および組織と人への研究開発は、僕および僕たちのすべての活動の生命線であり、僕たちの存在意義でもある。この活動は死守しなければならない。
ちなみに最近は、僕だけではなくなるべくチームの仲間と一緒に体験する時間や機会を増やすようにしている(もちろん業務扱いで)。
なぜなら、僕一人だけが新たな体験していても、自分自身に体験が属人化してしまい、のちの汎用化や事業化がしにくくなるからだ。
なるべく同じ景色を仲間と一緒に見る。その方が後(のち)の議論も事業化の検討もスムーズだし、なにより楽しい。
のちに他者(他社)を巻き込むにしても、その説明コストや労力(地味に大変)を体験した一人だけが負わなくて済む。すなわち、他者との共創を進める上でも、体験を誰か一人に属人化させないほうがよい。
マニュアル化することだけが脱属人化ではない。同じ景色を見る仲間を増やす所作も、脱属人化なのだ。
(2)作家活動(抽象化・体系化)
こうしてさまざまな体験や対話をインプットに、「そこから何が言えるか?」「共通する法則は何か?」などを言語化し、書籍や連載やインタビュー記事、あるいは講演や対談の形でアウトプットしていく。この部分は、僕の作家としての個人活動である。
(ただし、書籍執筆以外の連載や講演やメディア出演などの仕事は法人で受けている。事務手続きなど、個人で受けるとほんと煩雑で対応できないのもあり)
どんな体験も情報も、自分の中にとどめてしまっていては属人的なものでしかない。
理解者、共感者、ひいてはそこで得た知見や行動様式、思考パターンなどをともに実践して広めてくれる仲間を増やすためには、誰でも実践可能な形に料理する必要がある。すなわち抽象化、体系化が不可欠だ。僕にとって、作家活動とは体験や情報の抽象化と体系化のプロセスに他ならない。
加えて、(元来飽きっぽい性格なのもあり)ある程度そのテーマに時間をかけたら、僕はとっとと次のテーマの体験や研究開発にとりかかりたい。毎回、同じことを聞かれて答えるのもなかなかしんどい(苦笑)。
体験や知見を自分から手離れさせるためにも、過去の体験を汎用化し、僕以外の誰かがデリバリー(伝達、実践)できるようにしておきたいのもある。
僕が作家活動を軸にしているのは、そのための意味もある。言語化・体系化しておけば、その人の個性や特性をアドオンしつつも、体験やノウハウを世の中に広くデリバリーかつ再現することが出来る。
なお、僕自身はものを書く(手を動かす)作業そのものに作家としての価値やユニークネスを見出していない。むしろ、体験をすることに自分のリソースを使いたい。キーワードやキーフレーズは自分で書く(生み出す)ことにこだわってはいるが、文章を書く行為そのものは誰か(ライターさんやAIなど)に任せたいと思っているくらいだ。
書く作業は手段でしかない。自分自身はネタのインプット、すなわち (1)一次体験(研究開発)により集中したい。
ぶっちゃけ、自分(作家)は体験をがーっと話すだけ。作文はAIやライターさんにお任せ。そのような作家スタイルもアリだろう。
究極は、書かない作家でありたいと思っている。もちろん、自分で書きたいものは書くけれども。
※既に一部の書籍や、日々のオペレーショナルは発信はライターさんやアシスタントさんに任せているし、大学との共同研究で自動化の試みも始めている。このnoteもイベントなどの定期発信記事は、当社メンバーのハルカさんに書いてもらっている。
(3)事業展開(企業実装・社会実装)
こうして体系化したノウハウやフレームワークを、ここからは法人の事業活動として顧客や社会に実装していく。
具体的には、顧客や社会と一緒に、僕たちが既に体験している(あるいは体験に着手している)新たな行動パターン、新たな組織のあり方、新たなワークスタイルやライフスタイルを実現する。ときに、顧客同士をお引き合わせして相互に動機付けしあう。
『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』『ダム際ワーキング協会』などコミュニティ型の、学びや事業創生を軸にした組織も運営している。
それをひたすらやっている。
長らく、その活動も僕個人で抱えてやっていたが、さすがに限界を迎えつつある。時間も体力も足りない。数もこなせない。なにより、それでは事業体として問題がある。
(駆け出しの頃、シニアな事業家の方に「あなたのやっていることは家業であり、事業ではないですね」と指摘されショックを受けたことがある。いや、厳密には当時は家業でいいと思っていたので大して何も感じなかった。が、今にして事業にしたいと思い方針変更した次第)
僕自身は作家活動、およびそのための体験獲得にリソースシフトしつつ、顧客や社会への価値提供は僕への依存度を下げチームで実行していく。
そのやり方と体制に変えていっている。
嬉しいことに過去に当社の顧客として一緒にお仕事した人が、僕たち(法人)の仲間になり始めてくれている。
既に一緒に活動をともにしているので、僕の書籍を読んでくれていたり、僕たちのビジョン・ミッションや考え方に共感してくださっていて、話が早い。ベースの考え方はともにしつつ、そこにメンバー1人ひとりの個性や特性(その部分は大いに属人化していて良い)を掛け合わせて顧客や社会に価値を提供する。
その際、作家沢渡あまねの知見やリソースを使いたければ、メンバーの皆さんにどんどん使い倒して欲しい。
そのスタイルで、ゆっくりじっくり組織運営していきたい。
(無理な急成長などは目指さない)
2.良い属人化と悪い属人化
書籍『職場の問題地図』でも触れたテーマ。
属人化に悩む経営者やビジネスパーソンは少なくない。僕も常に葛藤している。自分に属人化した体験や知識や能力は、その人独自のオリジナリティでありアイデンティティでもある。それを手放すのは、一定の勇気が要る。
さりとて、属人化させすぎてしまうとそれが事業リスクになり、何でもかんでも自分で抱えなければならずともすれば「過剰労働」「ひとりデスマーチ」の沼に陥る。
書籍でも綴った通り、僕は属人化には「良い属人化」と「悪い属人化」があると思っている。そして、自分なりに走りながら出した答えが今回示した3つの活動・プロセスなのである。
・一次体験や執筆活動は僕個人の能力や感性に属人化させてもいい
・ただし、それを世の中に広くあまねく展開する活動は、僕一人に属人化させてはいけない
以上が、僕たちそして作家兼経営者 沢渡あまねの「自分ごと」としての、現時点での属人化に対する答えである。
3.僕たちはコンサルでも学者でもない、では何者か?
僕も僕たちもコンサルタントやコンサルティングファームではない(最近、複数の顧問先の責任者の方から「あまねキャリアさんは、いわゆるコンサルではないですよね」と言っていただき至極光栄である)。とはいえ学者や研究機関でもない。
膨大な資料作成や調査もしないし豊富なデータを持っている訳でもない。論文を書いている訳でもない(その手を動かす時間があったら実体験や実験、あるいは作家活動をしたいので)。ただし、実践知(ファクト)は豊富である。
(分厚い提案資料や調査資料をお望みであれば、「どうぞコンサルティングファームやシンクタンクにあたってください」と言いきっている。それは僕たちの仕事ではないので)
では何者か? 正直その適切な答えは見つかっていない。
上記の3つのプロセスをひたすら回しながら、自分たちが当事者として新たなワークスタイルやライフスタイル、組織のあり方を実践・実験しつつ、事業活動として顧客や社会とともにトライ&ラーンおよび実現している人たち。および、同志(顧客企業同士)をつなげる人たち。
しいて言えば「組織と人の、実践型R&D集団」と言ったところか。
これからも作家ゆえの組織開発や地域開発を、個人と法人の両輪を回しながら実現していきたい。いわば、個と法人の共創スタイルか。
それこそが自分たちのユニークネスであり、存在価値だと思っている。
「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!」
僕の好きなマンガ•アニメ、スラムダンクの登場人物である宮城リョータ選手の名言である。
僕はこのフレーズが大好きだ。大手企業が(コスパが悪くて)やらない方法だからこそ、僕たちのような中小企業の生きる道。この記事に記した僕のアプローチは、そんなチビなりの差別化戦略でもあるのだ。
4.参考情報
僕たちの法人のサイトです。あまねキャリアは2025年1月付で執行役員も増えました!
以下の法人やコミュティのアンバサダー・代表・パートナー•会員もしています。
COROPSのエバンジェリストもしています。
僕(沢渡あまね)の最新刊です。
2025年1月の沢渡出演イベント情報です。