コミュニティ（活動）は「目先の」利益追求の場ではない。とはいえ、ゆくゆく何かしらの利益や経済活動をもたらさないことには続かない
僕はこれまで、コミュニティ活動について自らもさまざまなコミュニティを立ち上げて運営している立場からもさまざまな発信をし、自分のスタンスも明確にしてきました。今回の発信もその一つ。直近の、コミュニティに関する記事は以下です（キャベツの話とかもしていますけれども）。ご参考までに。
1.コミュニティは「目先の」利益追求のための場ではない
僕はコミュニティは、「目先の」利益追求のための場ではないと考えています。あ、僕はいま「目先の」と言いました。そこがポイントです。ここ、テストに出ます（何の?）
営利目的フルスロットルの場には参加者も近寄りがたいでしょうし、フラットな対話や共創も生まれにくい。
商売っ気ムンムンなのはどうかと思うけれども、ビジネスや経済活動との接続を否定したり煙たがりすぎるのもどうかと思うのです。
とりわけ忙しい経営者やビジネスパーソンが立ち上げて運営しているコミュニティであればこそ、さすがにまったく顧客獲得につながらなかったり、経済活動がおこらない（起こったとしても地域の飲食店が儲かる程度）状態が続くと、継続するモチベ―ションも続かない……というより悪気なく関わる優先度が下がってしまいます。
2.とはいえ経済合理性がなければ、コミュニティは続けられない
運営者だけはありません。心ある参加者の継続参加のモチベーションも下げてしまうでしょう。
平日日中時間帯など、業務時間を使って行われるコミュニティ活動（僕が最近運営しているのは基本そのタイプ）であればなおのこと、会社の時間やお金を使ってコミュニティに参加している人の中には、会社の人たち（上長や経営陣など）に説明がつかなくなって遠のく人もいます。
コミュニティ活動そのものが（社内で）市民権を得られなくなってしまう。
そうならないためにも、たとえそのコミュニティそのものは非営利活動であったとしても、ビジネスパーソンに継続的に関わって欲しいのであれば、何らかの経済合理性を持たせる必要が遅かれ早かれあると考えます。
企業は経済活動をしてなんぼです。そして経営者もビジネスパーソンも、ビジネスを本義とする人たちです。
誰かの善意およびボランティア精神への依存や押し付けだけでは、コミュニティ運営も参加も続かない。そこは、コミュニティに何かを期待するあらゆる人たちが認識しかつリスペクトすべきでしょう。
そもそも日本の人口どんどん減っている訳で、善意のボランティアに全振りできる聖人君子がどれだけいるでしょうか。本来の事業活動にもどこかで利をもたらしていかなければ成りたたないですって。
（というより経済回すことも、社会や地域を潤す聖人君子的行為です）
一見ボランティアに見えるその活動も、企業顧客からの安定収入があるから成り立っているし、続けられるのです。
僕自身も複数のコミュニティを運営していますが、続いているものは参画企業の何社かが（結果として）当社の顧客になっていたり、あるいは既に顧問契約のある顧客に参加してもらい、参画企業とのお引き合わせや共創につなげています。
これからコミュニティ活動を立ち上げようとしている方、コミュニティ活動の立ち上げを誰かに依存したい方、コミュニティ活動に参加したい方は、そのような背景（が存在しうること）を十分に理解されると、企画・運営者と気持ちよく共創できると思います。
3.『「コミュニティは儲かる? 儲からない?」は愚問!』に込めた意味
「コミュニティは儲かる? 儲からない?」は愚問!
僕は2年前、コミュニティ関連の著書のカバー（帯）でそのようなメッセージを発しました。
この書籍は、僕の同志である黒須義一さんほかの共著であり、このメッセージも黒須さんからお願いされて快諾してしたためたものです。
この書籍の帯のメッセージをご覧になった方は、僕の今日のメッセージが矛盾していると思われるかもしれません。
「コミュニティに利益追求や経済合理性を求めるなんて、過去に言っていることと違うじゃないか!沢渡はいい加減なヤツだ!」
このように（苦笑）。
確かに目先の儲けや利益だけに躍起になり、コミュニティ活動の立ち上げや参画に対して「いくら儲かるの?」「儲からないから、やめなさい」というのは僕は違うと思います。
しかしながら企業が関わる以上、すぐにではなくてもゆくゆく何らかの事業創造や課題解決に繋がったり、顧客やファン創出につながらなければ、積極的な参画を求めるのは厳しいでしょう。
（企画者や参加者が経営者であっても、社員やメンバーにやがて説明がつかなくなる）
僕が、『「コミュニティは儲かる? 儲からない?」は愚問!』に込めた意味はそこです。
コミュニティに「すぐ」の成果や利益を求めない。ただし、中長期的な成果や利益につなげていきましょう。それが、コミュニティそのものの存在価値を高め、持続性を保つエンジンになります。
いまでなくても必ず成果を出す。その気持ちが、コミュニティに参画する人たちの本気度も高めます。
「すぐに」の成果を求めない。しかし、じっくりと何らかの成果や答えを出す。それは、僕が最近主張しているネガティブ・ケイパビリティの本質でもあります。詳しくは、新刊『「すぐに」をやめる～ネガティブ・ケイパビリティの思考習慣』をご覧ください。
ちなみにこの本は、「すぐやる」行為を否定する書籍ではありません（まあ、読んでいただければわかります）。
4.コミュニティ活動がもたらす2つの顧客
僕は、コミュニティ活動がもたらす顧客には2つのタイプが存在すると考えています。
ここで言う顧客とは「企画・運営者や参加者に、何らかの経済的な利益（売上なり）をもたらしてくれる存在」です。
1つはコミュニティ内部の顧客です。
たとえば、A社とB社の発起でコミュニティを立ち上げ、C社、D社、E社、F社の人たちが参加しているとしましょう。
コミュニティ活動を通じ、仮にC社がA社の顧客になったとしましょう。あるいはD社がE社の顧客になったとしましょう。いずれも、コミュニティ内部で顧客化が発生した状態といえます。
コミュニティ内部で経済活動が発生する。コミュニティ内部で顧客化が行われたと考えることが出来ます。
もう1つが、コミュニティ外部の顧客です。
コミュニティに参画していない、Y社やZ社がコミュニティ活動の様子を見てA社やB社、またはC社、D社などの顧客になったとします。
「是非、コミュニティで発信されているノウハウを当社にもご教授願いたい」
「当社もコミュニティを立ち上げたいので、アドバイザーとして参画して欲しい」
このように。いわば、コミュニティ活動の外部の人たちが顧客化することもあります。
地域コミュニティでは、地域外の企業や団体が外部顧客やスポンサーになり得るかもしれません。
コミュニティ活動に営利を求め過ぎると、前者、すなわちコミュニティ内部の人たちを必死に顧客化しようとしてそして滑りがちです。コミュニティ外部の人たちが、やがてファンになり顧客になるかもしれない。
そのような着眼点も持ち、長い目でコミュニティ運営をされてはいかがでしょうか。
（ただし、そのためにはコミュニティ活動の様子やノウハウの発信なども地道に続けていきたいものです。参加者（社）に発信を促す行動も含め。広報大事! ここもテストに出るよ（だから何の?）!）
もちろん関わる全ての企業を片っ端から顧客化しようなんて絶対思わない方がいいです。それだとガツガツが過ぎますし、良いコミュニティ運営が遠ざかる。
とはいえ、数年やっていてさすがに一社も顧客化できないとさすがにやる気が失せますよね。にんげんだもの（苦笑）
5.ぶっちゃけ何かしらの利がないとやってられなくなりますって
ぶっちゃけ、コミュニティを立ち上げるのも、イベント企画したり人集めするのもめちゃくちゃ労力かかります。
忙しい経営者やビジネスパーソンであればこそ、何かしらの実利や経営的な大義名分がどこかで得られなければ心折れて続かなくなります。
（僕自身は特に、集客って行為が昔から本当に苦手かつ嫌いでマジでやりたくないです。当社も営業しないスタイルで事業運営してきています。本業ですらやらない集客を、ボランティアで嫌な思いまでしてやりたくない（苦笑））
世の中には「コミュニティをやってください（続けてください）」「イベント企画してください」と他人に求める参加者もたくさんいます。
コミュニティへのかかわり方は人それぞれですし、それ自体は何ら問題はありません。
ただ、残念ながらそのようなテイカー（giveをせずtakeする人）ほど、声をかけても理由つけて参加しなかったり、「またの機会があれば声かけてください」と悪気なく言い放ったりするのはさすがにいただけない。
はっきり言います。
「あなたの存在を記憶して、毎回声かけるのも大変なんですけど（苦笑）」
「「またの機会」を創るのも、めちゃくちゃ大変なんだよね（苦笑）」
いずれも、相手にマネジメントコストとコミュニケーションコストを悪気なくかけまくる行為です。「あんた、何様？」な態度に、運営スタッフが不快になることも多々。
そういう人に限って「急な仕事が入りました!」とか言って平気でドタキャン繰り返したりするし。こういう真性テイカーって、嘘みたいに急用が入りまくるんだよね。いや、コミュニティも大事な仕事じゃないんですかと、65535回くらい問い詰めたい（苦笑）
（「大事なコミュニティ活動があるので」って、会社や顧客に言えよ! なんなら、その人たちも連れてこい!）
その意味でも、コミュニティの企画者や運営者や参加者同士、お互いをリスペクトしていつかどこかで相手に利をもたらす。それは、コミュニティ運営を成り立たせる上できわめて重要であると僕は考えます。
6.おわりに
「聖人君子ボランティア」的なコミュニティリーダーって、この手の不都合なリアルは言わないと思います。
僕は凡人なので、この手のリアルも赤裸々に語ります（語りました）。
なぜなら、ココロが折れてしまうコミュニティリーダーや運営者を減らしたいから。なにより、聖人君子ボランティアしかコミュニティが回せなくなってしまう風潮が生まれたら、それこそサステナブルでないと思いますし。
以下、関連する書籍やコンテンツです。よろしければポチってください。
このブログ執筆や発信も、ボランティア精神だけではやっていられませんので（苦笑）