漫画『きょうの猫村さん』に勇気づけられ、落ち込み、もう一度勇気をもらいたくなった話
わたしは29歳の夏、ブラック企業で心身ともにしおしおになりました。もう11年前の話です。めまい、ぼーっとしてしまう、お湯を飲んでも吐くようになり心療内科を受診しました。
心療内科にはコンパクトな本棚があり、わたしはそこで『きょうの猫村さん』という漫画と出逢います。
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心療内科に通いはじめたころは、月に2回(1週間おきに)通院していました。でも通うこと自体がしんどくて、ときにはタクシーを呼んで予約時間ギリギリに着くことも。
抑うつ状態と診断され、心療内科に通いはじめてから半年ほどは行くだけでめちゃくちゃえらかったです。そのくらい無気力で、眠気との戦いでした。
わたしを担当してくれる先生はとても評判がよかったのですが、それはじっくり患者の話を聴いてくれるからでした。そのおかげで予約時間通りに呼ばれることはなく、2時間半待ちと受付に表示されていることも当たり前でした。
あまりにも待ち時間が長く、ふと目に留まったのが待合室の本棚━━。
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心療内科の待合室には、漫画や絵本、それから小説なんかもありました。誰でも自由に読むことができ、そのなかの本を読んで待つ患者さんはちらほらいたと記憶しています。
ある日、本当になんとなく手に取った漫画が、『きょうの猫村さん』の1巻でした。
実は、「猫村さん」という登場キャラクターだけは知っていました。22歳のときに映画館でバイトをしていたのですが、バイト先の先輩に「猫村さんみたい笑」とからかわれたことがあったのです。
なぜかというと、バイト先でわたしが毎回、エプロンの紐を縦結びで仕事していたから。
「猫村さん」は、エプロンをつけていて縦結び。
これだけの情報を、29歳まで温存していました。
はじめて読む、『きょうの猫村さん』。このとき、(あぁ、主人公は猫なのか)と理解します。
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読み進めていくと、なるほど。「猫村さん」は家政婦として働く猫でした。だからエプロンをしているのだと納得しました。
こればかりは実際に読んでみて内容を確認してほしいのですが猫村さんは日本語を話せます。それで家政婦紹介所の門を叩き、お屋敷へ奉公へ出向くという、なんともファンタジーな物語です。
初奉公の前夜、猫村さんは緊張で眠れなかったりするんですよ。それで真夜中に落ち着かないわって言って、段ボールで爪とぎを始めたりするんです。猫なので。
結局、朝ほんのちょっとだけ眠れただけ。目の下にクマを作るんです、猫なのに。しかも手先もボロボロ。爪とぎをしすぎて寝不足、フラフラになりながら初奉公に出向くシーンがとても印象的でした。
猫村さんは、お屋敷で家政婦として尽くすことに全力です。猫だから火とか水とか苦手なのに、家事をできるようになりたい強い思いで克服した過去があるんですよ。
そういう猫村さんの背景を知ったときに、わたしが猫村さんと違って何もできない出来損ないだと思い込んでしまったんですよね。
猫村さんはこんなに努力家で、失敗してもめげずにチャレンジして働き者で、なんてえらいんだろうって思いました。29歳だったわたしは、猫村さんと自分を比べ、あれ?わたしめちゃくちゃダメな人間じゃん。ってすごい落ち込んでしまったのです。
そしたら何だか猫村さんにジェラシー、出川哲郎風に言えばジェラッちゃって。急に『きょうの猫村さん』が読めなくなっちゃったんですよ。悔しくなっちゃって。
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「猫村さん」はこんなにも頑張っているのに、わたしはなぜ頑張れないんだって。自問自答していました。劣等感みたいなものを感じてしまい、猫村さんを応援できなくなったという次第です。当時は、です。
そんなことを思い出したら、いま、『きょうの猫村さん』を読み直したいなという気持ちになってきました。途中まで買い揃えた漫画は、ホコリをかぶっています。ちょっと、距離取りすぎたかな?
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昨年、カウンセラーの資格をいくつか取得し、いろいろな知識・考え方を吸収しました。いまの自分だったら読めそうな気がするのです!なぜなら、一人ひとりに物事を進めるペースがあることを知っているし、あの人が頑張ってるから自分も頑張らなきゃっていう強制力はどこにもないこともわかっているから。
いまの自分なら、「猫村さん」と自分は対等だって言える自信があります。
わたしは強くなりました。こんな自分が大好きです。人間だから、完璧に強いわけではありません。それでも11年前のわたしよりは、ずいぶん頼もしくなったかなと思っています。
現在のわたしは猫村さんを尊敬しているし、いつも頑張っていて本当にすごい、えらい!って伝えたいです。
いまでもわたしはエプロンをつけるとき、縦結びになっちゃうことがあります。猫村さんと自分は、案外似ているのかなとも思えるようになりました。だからわたしだって、猫村さんのようにどんなことも乗り越えていける。そう信じています。
わたしは強く生きていきたいのです。だから猫村さん、こっそり応援してね。
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