見出し画像

夜のお散歩

学童保育から帰ってきた娘に宿題を急いで済まさせる。
今日は地元の神社の秋祭りだ。
雨が上がって間もないうちに、日が暮れきって人が増えてこないうちに店を回ってしまいたい。
いつもよりもテンポよく宿題を済ませた娘は声をかけるまでもなく、靴を履き始める。
早めに仕事を終えた夫も靴を履き、玄関のドアを開けた。
家族三人そろって歩き出す。いや、夫が先に行き、後ろを私と娘が手をつないでついていく。
つなぐ手から娘のテンションが上がっているのがわかる。彼女の顔を見下ろすと、いつにも増してニコニコした顔をして見上げてきた。
「お散歩、楽しいねぇ」
語尾に音符が2つも3つもついていそうだ。やたらとはしゃいでいるわけでもないのに、心の底からウキウキしているのが伝わってくる。
日は暮れ始めていて、あたりは薄暗い。
おのずと私も笑顔になる。
「お散歩、楽しいの?」
「うん、夜のお散歩、久しぶりやもん」
娘は17時過ぎに学童保育から帰ってきたら、家を出ることがほぼない。習い事もしていないし、家族で外食することもないから。
数回、夕食後にねだられて家の周りを散歩したことがあるくらいだ。
スキップしそうな勢いで歩く娘に合わせて少し早足になる。
「そう。嬉しそうでよかった。これからお祭りやから楽しもうなあ」
秋祭りを開催している神社に着いて、お参りを済ませて屋台を回る。
私と夫は何を食べようか吟味しながら境内を一周する。娘は、たぶん娘は何をして遊ぼうか、どのオヤツを買ってもらおうか考えながら歩いていたんだと思う。
まず娘は『ぶどう飴』を買い、それを舐めながら歩く。ゲームを物色するかのようにキョロキョロしている。
結局、娘はくじ引きとボールすくい、ピンボールをして楽しみ、私と夫はビールのあてになりそうな鶏の唐揚げ、箸巻き、海老の唐揚げを買った。
それぞれ祭りを満喫した帰り道、娘は言った。
「夜のお散歩、楽しいねー。またお散歩しようね」

いいなと思ったら応援しよう!