とろけるくらいに柔らかな規則
マナモがハンドクリームを好きになれないでいるのは クリームをぬった手が 本を読む妨げになってしまうんじゃないかと感じるからです それでも 冬 痛い かゆい となれば しかたがない ハンドクリームに頼ることになるのです
手のひらにクリームをぬることはありません 手の甲に落としたクリームを 手の甲と手の甲をすり合わせ ぬっていくのです 小さかったころ 電車に乗っていたとき 前の席に座っていたご婦人が そのようにしてぬっていて 大人はああやってぬるものなのかと それからマナモも そうやってぬるようになったのです
手のひらや指先にクリームがついていないのですから 本を読むことはできるでしょう けれど マナモは それをよしとしないのです 何かのはずみで 手の甲が 紙にふれることがあるかもしれません それを心配しながら 本を読むのもどうだろう そういったマナモらしい自分への そして 大好きな本への配慮からのことなのです
マナモが いま たくさんの本を前にして つまらさそうにしているのは だから そういったわけがあるのです