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村上春樹さんは、”読点”の魔法使い。

 昨日、『村上radio』を聴いていました。番組では、作家の小川哲さんが村上さんが原作の映画『ドライブ・マイ・カー 』の監督をつとめた、濱口竜介さんにインタビュー(対談)をされていました。

 そのなかで、濱口さんが「村上さんの小説家としての凄さって何ですか?」と小川さんに尋ねたシーンが印象的でした。

数値化できることで一番思っているのは、句点と読点。特に、読点の打ち方が日本一うまいですね。
(『村上RADIOプレスペシャル』8/22(日)放送回より引用)

  小川さんいわく、読点には役割が3つあるそうです。ひとつは、正確な意味を伝えるための読点。もうひとつは、読み手の呼吸に合わせて打つ読点。最後の1つは、読点を打つ視覚情報によって効果を与える読点だそうです。最後の読点は、糸井重里さんがよく使う手法なのだとか。

① 正確な意味を伝える。
② 読み手の呼吸に合わせる。
③ 読点を打つ視覚情報によって効果を与える。(糸井重里流)

 そして、小川さんが言うには、村上春樹さんは①と②の読点を上手く利用しているそうです。ふつうは、①の読点を打つと、②が失われてしまいます。正確な意味を伝えるがために、スムーズに読むことができなくなるからです。逆に、②の読点を打つと、①が失われます。リズミカルな文章なのに文の意味が伝わりにくくなってしまうのです。

 しかし、村上さんの場合、小説に出てくる全ての読点が①と②の両方の役割を担っています。これは、デビュー当時からだそうです。

 つまり、村上さんが打つ読点は、正確な意味を伝えるための点でもあり、読み手との呼吸を合わせる読点でもあること。だからこそ、リズムがよくて、文の内容が頭にすーっと入ってきやすいのだと思います。

 まさに職人技です。作家の小川さん自身も、読者に意味を誤読させずに、読み手の呼吸を合わせるような読点の打ち方がなぜできるのかは謎だとおっしゃっていました。まさに村上春樹さんは、"読点"の魔法使いなのです。

次に読むなら

以前、村上春樹さんは、オリジナルの文体を作ることに関して、自分から何かをマイナスしていくのが大切だと話しています。まさに、これは「引き算の美学」だと思います。僕は、この「引き算の美学」が大好きです。ぜひ、記事をご覧あれ!!

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雨宮 大和|エッセイ・短編小説
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