奇跡の巡り合わせ。
最近、角田光代さんの『さがしもの』という文庫本に収録されている『旅する本』という小説を読んだ。今日は、読書日記を書いてみたいと思う。
物語は、実家を出て一人暮らしを始めた主人公である”私”が、ある本を古本屋に売りに出すシーンから始まる。本を売ろうとしていた”私”に対して、古本屋の店主は「本当にいいの?」と、引き止めようとする。
悩んだ末、本を売ることに決めた”私”は、その後の人生のなかで、自分が手放したその本に何度も遭遇することになる。毎回、旅先の古本屋さんで。
読んだ本が誰かの手に渡って、また自分の元に返ってくる。それから、再びその本を手放しても、奇跡の出会いをはたす。まさに、本の不思議な巡り合わせ。
残念ながら、僕はそんな経験は一度もしたことがない。お金欲しさに本を売ってしまい、少し経ってから後悔して、同じ物を買い戻したことはあるけれど…
さて、この小説で伝えたいことは何なのか。この物語の魅力は何なのか。僕は、本がもつ魅力について語っているのだと思った。
主人公の”私”は、18歳の時に日本の古本屋でその本を売り、卒業旅行先のネパールのポカラで偶然見つける。しかし、荷物の重さに耐えられず、首都のカトマンズで再び売ることをなる。
ネパールで2度目の再会を果たした時、その本に関して”私”は次のような感想を抱いている。
それから、しばらく経って、仕事で立ち寄ったアイルランドの学生街にある古本屋で、3度目の再会をすることになる。その時の本に対する感想は、こんな感じだ。
作者が伝えたいのは、次のようなことなのだろう。本は読めば読むほど、違った読み方になる。スルメみたいに噛めば噛むほど味が出る。大人になると共に、本の読み方、感じ方も変わってくる。
そういえば。僕は、この読書日記を書くために、もう一度『旅する本』を読んでみることにした。すると、1回目に読んだ時はまともに読めていないことに気づく。
正直言うと、最初読んだ時は「同じ本が自分の元に返ってくるなんて、すごいなぁ」みたいな浅はかな考えしか持ち合わせていなかった。それでも、作品に不思議と惹かれるものがあり、読書日記を書いてみようと思ったのだ。
少し経ってから、読み返してみたいと思う。その時は、また別のことに気づくかもしれない。楽しみだ。