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お金目当てか、カラダ目当てか……
15歳年下の絵画教室講師、ユウヤと毎日LINEのやり取りを始めた私。1カ月ほどたった頃、とうとう初デートの日を迎えます。初めてプライベートで会った彼は、「何かがおかしい」と感じさせる人でした。
お金さえ渡さなければ大丈夫?
そんな想いで初デートの場へ
LINEのやり取りが始まって1カ月位した頃。初めてユウヤが「そろそろ二人で会いませんか?」と提案してきました。LINEのやり取りならファンタジーの世界で済みますが、会うとなるとリアル。現実です。
いまだにお金目当てでは?という想いが抜けない私は、なかなかそのお誘いに応じることができませんでした。
しかし、20代の頃の遊び人だった私がよみがえっていたこともあり、次第に「向こうがお金目当てなら、お金は渡さず、私も適当に遊べばいいか」と思うように。そしてとうとう、会うことを承諾。初めて2人で会うことになりました。
待ち合わせは、品川駅。私も普段よりちょっとおしゃれをし、少しだけドキドキしながら待ち合わせ場所に向かいました。
先に待っていたユウヤは、私が思っていた以上に、若く、何ならまだ子どものように見えます。しかし、その見た目に反し、彼は意外と紳士でした。
「天宮さん、イタリアンは好きですか? 僕、ここに来るまでに何軒か下見してきたんですけど、イタリアンのお店が雰囲気良かったので、良かったら行きましょう」。
とユウヤ。店の下見までしてくれているとは!驚くと同時に、ちょっと嬉しくなっている私がいました。
☆
そして、ユウヤのエスコートのもと、駅近のイタリアンへ。私が食べたいものを聞き、ウエイターに注文するところなども、わりとよくできた紳士です。
好きな絵の話、お互いの普段の生活の話をしながらお酒を飲み、パスタを食べ、そろそろデザート、という頃、事は起きました。
なんと、テーブルの下で、ユウヤが私の手を握ってきたのです。
あまりの展開に、私は茫然自失。
そんな私を後目に、ユウヤはこう言いました。
「今日はずっと一緒にいたいです」。
・・・・
・・・・
・・・・
私は思わず、声にならない声を心の中で上げていました。15歳年下男子に今日はずっと一緒にいたいと言われる日が来るなんて……。
動揺しながらも、ここでまた、遊び人の私が顔を出します。
「いいんじゃない?一回くらいそうなったって。向こうだって遊びだろうし」。
でも、1回で応じて軽んじられるのも嫌だし。向こうが追いかけてくる間は主導権を握っていたい。そんな姑息な考えのもと、私はユウヤの手をふりほどき、こう言いました。
「ごめん。今日は帰るね」。
余りにしつこいお誘いと
携帯にかかって来る鬼電
こうして店を出て駅に向かって歩き出したのですが、ユウヤは一向に引く気配がありませんでした。
「ほんとにダメでですか?一緒にいたいんです。僕のこと嫌いですか?」
ひたすら食い下がって来るユウヤ。その必死な姿は、いささか異常にも見えました。
「嫌いじゃないけど、今日は疲れてるから帰る。また今度ね」
私はそう言って、半ば強引にユウヤを振り切る形で、ユウヤとは違う電車のホームに降りました。
そして、驚いたのは電車に乗った後です。
何度も何度もかかってくる電話。もちろんユウヤからです。
私が電話に出ないとわかると、今度は矢継ぎ早にLINEを送ってきました。
「これから家に行ってもいいですか?」
「住所を教えてください」
仮にカラダ目当てだったとしても、そのときのユウヤの食い下がりようは、少し常軌を逸していました。
このときのような「何かおかしい」という違和感。私はこれを、その後何度も彼に対して感じることになります。
それは小さなものから、大きなものまで様々でしたが、
なかでも最初に一晩を過ごしたときの衝撃は、私の人生をひっくり返すほどに、強烈なものだったのです……。