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私のなかの「小さな私」

何度も何度もユウヤを手放し続けた結果、執着が少しずつ薄れ、空っぽになった私。そしてこの辺りからは、私のなかの、傷ついた「小さな私」にアプローチするプロセスへと移っていきます。

■とても怒っていた「私の内なる子ども」

何度目かのカウンセリングの日。

「なんだか心にぽっかり穴が開いたみたいで、何もやる気がおきません」。

そう言って途方に暮れる私に、カウンセラーのⅯさんはこう言いました。

「これまで心の大半を占めていた彼への執着が薄れたので、その部分がいま、空っぽになっているんだと思います。でも大丈夫です。そこにはまた新しいものが入ってきますから」。

この辺りから、私のカウンセリングは、私が置いてけぼりにしていた私自身、心理学用語でいう「インナーチャイルド」を扱うフェーズに入っていきました。

「インナーチャイルド」とは、
幼少期のトラウマや記憶の象徴、
内なる子ども
などと呼ばれるものです。

この「インナーチャイルド」は誰の心のなかにもいて、
この子が傷ついたままでいると、
大人になってからも様々な場面で影響を及ぼすといわれています。

Ⅿさんは、カウンセリングのなかで、私の「インナーチャイルド」にアプローチすべく、イメージワークを行ってくれました。

「目をつぶって、6畳くらいの部屋に、
子どもの天宮さんがいるのをイメージしてみてください」。

そう言われて私がイメージしたのは、
とてもとても暗い部屋でした。

そこにいた女の子の年齢は、4歳か5歳くらい。
部屋の隅っこで、身動きひとつせず、体育座りをしています。

Ⅿさんの誘導でその部屋に入った私は、
少しずつその子に近づいて、
こう話しかけてみました。

「何か悲しいことがあったの?」
「何かに怒っているの?」

でも、その子はうつむいたまま、何も答えません。

あまりに悲しそうなその姿に、近づいて頭を撫でてあげたい気持ちになりましたが、

……できませんでした。

その子に、全身で拒絶されているような感覚だったのです。

その子は、
怒って、悲しんで、絶望しているように見えました。

私はそのことを、Ⅿさんに伝えます。

するとⅯさんは、こう言いました。

「それでは、無理に近づくのはやめましょう。
その子が許してくれる距離で、
ただじっと、そばにいてあげてください」。

私はⅯさんのいうとおり、その子から少し離れた場所に座り
ただじっと、その子のことを見つめていました。


この子は、私です。
私の中にずっといた、私自身です。

Ⅿさんは、

「その子を見て、天宮さんはいまどんな気持ちですか?」

と聞いてくれました。

「ずっとほったらかしにしていてごめんね。
見てあげなくてごめんね」

って思います。

そう答えた瞬間、

なんだかぽろぽろと涙が出てきました。

その子が泣いているのか、
大人になっている私が泣いているのかわからない、
不思議な感覚です。

しばらく泣いていたら、
目の前にいるその子が
少しだけ顔を上げたような気がしました。

そして

「気づいてくれてありがとう」

と、小さな声で言ったような気がしたのです。

私はおそるおそるその子に近づき
そっとその子の頭を撫でました。

しばらくそうしていると、
その子の心が、ほんの少しだけ
ほぐれたような気がしました。


ワークが終わったあと、Ⅿさんはこう言いました。

「今日から少しずつでいいので、その子と会話をしてみてください。
何が食べたいのか、何を飲みたいのか
何がしたいのか……。なんでもいいです。
とにかく、その子の声を聴いてあげてください」。


そして、この日から私は、
私のなかにいる「内なる子」
との会話を始めることになります。

しかし、これは決して簡単なことではありませんでした。









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